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穣は懐かしさに思わず微笑しながら、ブランコの埃を手で払い腰かけた。大きな身体には小さく感じ、ぎこちなく漕いだ。ネクタイを締めた上下スーツ姿の大男が人気のない公園でブランコに揺られる様は異様だったが、穣は気にせず漕いだ。子供の頃はこうして海の風を迎えに行っていたのだと改めて気付いた。すると、どんどん風を感じたくなり、さらに揺らしてみせた。
思いがけず久しぶりの遊具を満喫した穣は徐々に小さくなる揺れのなかで、隣のブランコを見つめた。いつも隣に居た愛里は今どこで何をしているのだろう。目を閉じてもう少し懐旧に浸ることにした。