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第3話 終わりのない悪夢

「ガゼル様、ガゼル様!」


 デゼルの声――?


 可愛らしく懐かしい、鈴をふるような綺麗なデゼルの声が聞こえて、ガゼルは驚いて飛び起きました。

 泣きはらしたデゼルが傍にいて、目を覚ましたガゼルに抱きついてきました。

 どうして自分が生きているのか、どうしてデゼルがここにいるのか、ここはどこなのか、ガゼルにはまるで、わかりませんでした。


「デゼル、ここは――? 私はいったい――」

「ごめんなさい、私がマリベル様に教えてもらった『夜明けの守護』を使ったせいで」

「それはいいんだ、それより、公国は――」


 『夜明けの守護』には、デゼルが「夜明けの守護」と宣言すれば、デゼルのダメージをガゼルに引き受けさせることができるという、別の使い方もあったのですが、それも、ガゼルが生きていればのことです。

 すぐに死ぬことになると考えたガゼルは、デゼルにその方法を教えなかったのですが、このままではデゼルが死んでしまうと判断したマリベルが、デゼルにその方法を教えたようでした。


「公国は……」


 ささやくような震える声で、デゼルが泣きながら答えました。


「――滅びました」


 目の前が真っ暗になって、ガゼルには自分がどうしてまだ生きているのか、本当に、わからなくなりました。

 公国が滅びたのに、公子である彼だけが、何のために、生き残ってしまったのでしょう。

 こんな、馬鹿なことが。


「ガゼル」


 いつからいたのか、ネプチューンが冷たくガゼルに言いました。


「デゼルに手を出すなよ? 山賊どもの慰み者にされていたのを、オレが助けてやったんだ。デゼルがどうしてもと言うから、おまえの命も助けてやったが、デゼルはオレの(めかけ)にする。おまえがデゼルの傍にいるのは構わないが、手を出せば殺す。オプスキュリテ公国は滅んだ、一人で逃げたければそうしていいが、デゼルは置いていけよ」



  **――*――**



 ガゼルが意識を失っていた間に、公国は滅び、それを命じた皇帝と皇太子は、禁断の魔術に手を染めたネプチューンに討たれていました。

 ネプチューンがまだ十歳のデゼルに度々、夜伽(よとぎ)を申し渡して相手をさせるのに、ガゼルにはどうすることもできませんでした。

 傍にいても、二人はもう、ふれあうことすら許されなかったのです。ネプチューンの相手をさせられて、震えながら泣くデゼルを抱き締めることさえ。

 ガゼルの命を盾に取られているデゼルには、逃げることもできないのです。


 デゼルはガゼルに、どうか、私のことは忘れて幸せになって下さいと、ここから逃げて下さいと、涙ながらに言いました。


 いったい、何のために?

 公国を滅ぼされ、デゼルを奪われ、大切だったすべてを蹂躙されてなお、一人で逃げて幸せになる――?

 そんなこと、できるはずがありません。

 公民を守れなかった彼が、一人だけ幸せになるなんて、許されるはずがありません。



  **――*――**



 その夜もまた、デゼルはネプチューンの夜伽に呼ばれていました。


「デゼル、待って」


 振り向いたデゼルに、ガゼルは静かに微笑みかけて言いました。


「愛してる」


 目を見開いたデゼルが、何度も、何か言いかけた後、静かに涙を落としました。


「ガゼル様、私も」

「ずっと、傍にいてくれてありがとう。守ってあげられなくてごめんね」


 デゼルは泣きながら、首を横にふりました。

 何度も、心配そうにふり向くデゼルを見送った後。

 ガゼルは手首を切りました。

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