第四話 「才能次第。そして心配」
気分よく書くことができたので今日も投稿します。
近いうちに検査入院することになると思うので書き溜めをしておきたいですね。
「エクストラスキル……初めて見たな」
「エクストラスキルってなんですか?」
「特定の人にしか存在しないスキル……と聞いたことがあるような」
よく分からないから今度は『鑑定』してみようかな。
―――『鑑定』。
『鑑定』は対象の魔物がどんな能力や弱点を持っているか、対象物がなんであるかを調べることができる。
また、対象を人間の魔術やスキルに設定した場合、『鑑定』レベル以下の魔術やスキルの能力を表示することができるという便利な魔術である。
逆に鑑定結果が不明の魔物だった場合は自分たちよりも格上であるという発想もできるのだ。
クリスの『鑑定』レベルは7。クリスはこれ以外にも複数の無属性の魔術のレベルを7以上にしている。これが無属性のスペシャリストと呼ばれる所以である。
エクストラスキル『努力の天才』の鑑定結果は、クリスの思っていた通り不明だった。
つまり、クリスの『鑑定』レベルでは知り得ないもの、あるいは完全に秘匿されているものであると考えられる。
「うーん。やっぱりこのエクストラスキルがどんなものか分からないや」
「でもいいことには違いないですよね! 『努力の天才』ですもんね!」
「そうだね。きっといいスキルだと思うよ。そのおかげで『物理耐性』レベル1をゲットできたんだろうと思うよ」
「本当ですか! だったらいいなあ!」
とりあえず前向きに考えてみようっと。じゃないと始まらないもんね!
「今日はとりあえず『加速』の発動と停止を意識する練習を繰り返そうか」
「はい!」
午後から始めたこの練習は夕方まで続けられた。
(エクストラスキル『努力の天才』……それに『物理耐性』獲得……もしかして、ね)
翌日の昼過ぎ。昨日と同じように広場に二人は集まった。
「さて、昨日は停止の練習を行った。正直センスがなかったらこの練習だけで一週間経つと思ってたんだよね」
「そんなにですか?」
「そうだよ? そもそも一昨日が初めて魔術使ったんでしょ? そこから昨日は停止に慣れるまで練習できたんだからね。すごい進歩だよ」
「だとしたら嬉しいです。今日は昨日の続きですか?」
「いや、それは今日の練習をしながら確認していこう。今日やりたいことは『加速』に加減をつけられるようになること」
加減……?
それって意味あるのかな?
「加減つけられた方がいいんですか? 常に全力を出せた方がいいのではないでしょうか?」
「それはどうかな? 例えば明らかに弱い敵に対して全力を出す必要はあるかな?」
「うーん……ないと思います!」
「そうだね。では全力を常に出しているとどうなるかな?」
「いずれスタミナがなくなって疲れます!」
「正解。じゃあ最後、魔物がいる場所で常に戦闘の危険性がある中で常に全力を出すべきかな?」
……なるほどなあ。そんな風に考えなきゃいけないなんて大変だなあ。
「必要最低限の力で敵を倒すのと同様に『加速』に加減をつけられるようにってことですか?」
「その通り。ということで練習しようね。キミの場合『加速』が生命線だから、『加速』が使えなくなるくらい魔力が減ったら困るからね」
「分かりました実践に近づきつつあるってことですね。頑張ります」
クリスの指導二日目が始まった。
「うーん難しいですね……」
「その気持ちはよく分かるよ。ボクも『回復』の魔術とかの加減をつけるのに苦労したもんだよ」
夕暮れ時、もう今日の練習を終わろうとしている。どうやらニーナは魔力を使い果たし疲れたのか、べたりと仰向けに倒れている。
「それにしても……まさか全力しか出せないと思わなかったよ」
苦笑いを浮かべるクリス。
「しょうがないじゃないですかー。まだ魔術を使い始めて四日ですよ? もっと褒めてもいいと思います」
「結構褒めてるつもりだよ? 加減はまだしも停止の技術を一日で覚えたのはすごいよ」
「そうですか~? えへへ~」
天真爛漫なその笑顔。スキルにあったように心を和やかにしてくれる。
それと同時にクリスはこう思うのだ。
(ニーナちゃんを好きになった後言動に振り回される男たちが出てくるだろうなあ……)
クリスは未来にニーナと出会う男たちに対して達観するのだった。
「今日の練習はこれでおしまい。また明日の午後頑張ろうね!」
「はい!」
クリスとの練習を始めて三日目の朝、ニーナは母の家事の手伝いをしていた。これは毎朝の日課で朝食を作るだけでなく、掃除、洗濯までおこなっている。
「ニーナと家事をするといつも早く終わって助かるわあ」
「家事しているとお母さんと一緒にいられるから嬉しいんだ!」
「本当にもう、どこに出しても恥ずかしくないいい子に育ったわね……」
ニーナの母、サラ・ライトワールは感慨深い気持ちになった。
「これも冒険者修行の一環だからね! 冒険者になったら身の回りのことを一人でできるようにならないと……
それに、お母さんは私が冒険者デビューをしたらしばらく一人になっちゃうから頑張らないとだよ?」
「……そうよね。ニーナは出て行っちゃうのよね」
「そうだよ……でも、たまには帰ってくるからさ」
「ニーナ、私は思うのよ。その【たまに】がなくなる可能性があるかもって」
「お母さん……」
「お父さんはあんな風に言ってるけど、私の本当の気持ちは、できれば一緒に過ごしたい。ニーナが冒険をせずに、安全に幸せな毎日を過ごしたいのよ」
「お母さんはそう思っているのは知っているよ。だけど、私は活躍したいだけじゃないんだよね」
「ニーナ……?」
「私はね、強くなりたいんだ。家族を、みんなを守れるように。だから頑張るんだ」
サラは考える。ニーナの考えることはとても誠実な願いだ。それをできれば叶えてあげたい。子供の夢を尊重することは親のやるべきことだから。
ただ、冒険者という死亡率の高い職業に進ませるべきなのだろうか、という唯一にして最大のリスクがある。そして何より……
「それでも、ニーナの使える魔術が『加速』だけであっても冒険者になりたい?」
「うん! だって、お父さんの剣で冒険者として活躍することは、私の夢だから!」
「……こういう頑固なところもお父さんに似たのかもしれないわね」
「ふふっ。だって私はお父さんとお母さんの娘だから」
「そうねえ。……頑張るのよ。ニーナ」
「……!! うん!」
親としての責務は娘を守ること。でもそれ以上に、娘の笑顔を守りたい。
ニーナ、頑張るのよ。
昼食を食べた昼過ぎ、今日もニーナとクリスはいつもの広場へと来ていた。
「さっ、今日も頑張ろうか」
「はい。今日こそ『加速』の加減ができるようになりたいです!」
「そうだね。ボクの想像通りのニーナちゃんのセンスなら、最終日辺りに弱い魔物と戦闘でキルくらいにはしておきたいんだよね」
「……気が早くありませんか? 大丈夫ですか?」
「あはは、むしろそうしないとボクが教えたいことは全部教えられないからね」
そう、教えてもらえる練習期間は一週間のみ。今日を過ぎればちょうど半分となるのだ。一秒たりとも休んでいられない。
さらに現役冒険者の、しかも上位にいるクリスに直接教えてもらえる機会なんて中々ないのだ。
(今日は昨日以上に体内の魔力の流れを意識してみよう)
ニーナは『加速』の停止が可能になったことで体に流れている魔力を意識できるようになった。
だが、その意識を流すか止めるかという0か100かでしか調節できないのが現在の難点である。
「そうだねえ。加減という言い方を少しやめようか」
「どういうことですか?」
「これもイメージだ。まずは少しずつ速く走れるように『加速』していくっていうのはどう?」
「んーと、助走みたいなイメージですかね?」
「そうだね、速く走る前は必ず遅い段階があるからね。それをイメージしてみよう」
「はい! やってみます」
ニーナはいつも通り広場の端に立つ。
イメージ、イメージ……自分の魔力を意識して、少しずつ。まずは少しずつ速くなれるようになってみよう。
ニーナは歩き始める。まだ『加速』は使わない。
ニーナはジョギングをし始めた。
ここからかな……? 『加速』―――
ニーナが蒼いオーラを纏い始めた。だが、昨日のように燃え滾るようなオーラではない。朧気に今にも消えそうな、そんなオーラだった。
(これだ! ここから少しずつ……!)
ニーナは駆けていく。ゆっくり、ゆっくり速度を上げていく。
練習三日目、ニーナは『加速』を使用時、出力の上げ方をどのようにすればいいかを理解した。
誤字脱字あったら報告よろしくお願いします。
高評価、ブックマーク、拡散していただけると励みになります。よろしくお願いします!