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魔術世界の剣姫  作者: 白石束
「旅立ち編」
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第一話 「魔術適正」

最初にどんな物語かを簡単に理解していただきたいので3話同時投稿します。

 

「あなたの魔術適正は『加速』のみです」



「……それ以外はないのですか?適性診断師様」


「残念ながらありません。魔力量は平均以上ありますが、『加速』だけでは……」


 私の魔術適正を見てくれた判断師の方は、悲壮感を漂わせながら答えた。


「そうでしたか……教えていただきありがとうございます」


「大変かと思いますが、良き人生を歩んでください」


 これが私の数奇な人生のスタートだった。



 私の名前はニーナ・ライトワール。15歳となった今、私は成人の儀を終え、魔術適正の診断を受けることとなった。


 この世界、フラークスには魔術というものが存在する。魔術は基本的に火、水、風、地の四属性に分かれていて、中には闇のレア属性、さらに光を照らす、音を出すなどの広く扱われている無系統という属性の計6属性となっている。


 魔術が第一、剣や槍といった物理攻撃は魔術の二の次どころか存在価値がないとまで言われているほどだ。


 その理由は至って簡単。物理攻撃に比べ魔術の方が威力は高く、万能であるからだ。剣を持っている敵に近接戦に持ち込まれる前に、魔術師は魔術を使用し倒すことが可能。


 それだけでなく、もし近接戦に持ち込まれていても魔防壁を最初に張り、剣撃を一度や二度受けてもこの魔防壁は割られることもないためカウンターが通るのである。


 そのためこのフラークスにおいては魔術がどれほど威力を高く撃てるか、あるいは魔力量がどれほどあるかで強さが決まるとされている。



 私は重い足取りで家と併設されたお父さんの鍛冶場へ帰ってきた。


「はあ……ただいま」


「おかえり……どうしたんだいニーナ? 魔術適正診断で変なことを言われたのか?」


「いやあ……あはは。それがね」


 私は自身の魔術適正が『加速』しかないことを話した。


「そうか……魔術適正が少なかったんだな。それは悲しいな」


「うん。せっかく冒険者としてお父さんの作った特別な剣を使って活躍したかったんだけどね……」


 火事場内の壁に飾られている銀と青であしらわれた剣を見た。


 これは魔鋼鉄と呼ばれる魔力を通すことのできるという特別な鉄を加工して作って、お父さんが作った剣の中で最高傑作と言っていた特注品。


 それをまったく活かすことができない。私はそれを思うとやるせない気持ちでいっぱいになるのだ。


「いーやまだだね。ニーナは『加速』しか得られなかったんじゃないよ。少なくとも『加速』の魔術を得ることができたんだ」


「発想の転換ってやつだね」


「ああ。まずは『加速』の魔術がどんなものであるかを理解するんだ。ものは使いようで、どんなものでも使い道はある。今日や明日、『加速』の呪文を試してみないか?」


「うん……そうするよ」


「それに『加速』の魔術なんて俺は少なくとも初めて知ったな。誰も持ってないということは希少価値、ニーナだけの戦闘スタイルを編み出せるかもしれないぞ」


 希少価値。自分だけの強み。それを『加速』の魔術で見出せるだろうか。



 特訓ではなく、まず『加速』とは何かを知ることから私は始まった。




 次の日の朝、私はお父さんを連れて町のはずれにある広場へとやってきた。


 私の住んでるこの町、アーテイルはそこそこ大きく、冒険者ギルドや修練所など大きな街に存在するような施設もある。


 そのために色んな人が基礎練習するための場所として広場がいくつも作られているんだ。『ファイアーボール』、『ウインドカッター』といった魔術の基本技の威力を試す射撃場さえもある。


 これは様々な町から冒険者が万全の状態で旅立てるようにと国が政策として進めていった結果とお父さんから聞いたことがある。


 魔物がたくさんいるし冒険者を増やさなきゃいけない仕方ないのかなあ……?



「よし! じゃあ始めるか!」


「うん! でも私は何から始めればいいのかな?」


「ニーナの『加速』はおそらく無系統の属性なはずだ。無系統には光で周りを照らしたり、パーティーを組んでいる味方と心の中で会話することができる魔術も存在するらしい。遠くで会話できるのは戦術において大きいからな」


「ふむふむ」


「無系統の話を聞いて俺が思ったのは、まず自分自身に魔術を付与させる。次に自分以外の一人、あるいは複数人に付与させることができることができるのではないかと思ったぞ」


 たしかに、それぞれの魔術がどのように機能するかは他の魔術からでもイメージできるからね。それにしても色んな魔術があるんだなあ。


「そうだね。じゃあまず自分でどのくらいできるか試してみよっかな」


「じゃあまずは『加速』を頭の中でイメージして実際に動いてみるんだ」


「分かった。やってみるね」


 『加速』というと速く動くことをイメージすればいいんだよね。とりあえず動いてみようかな?


 そう思い私は広場の端から端まで走ってみる。いつもより速く走れる自分を。速く。速く。


 そう考えても私の足は一向に速くならなかった。




 閑話休題。


 少し前に国は冒険者をたくさん増やすために万全な状態で旅立てるようにしていると話した。国がこの制度を推進しているのに理由がある。


 これは国として仕方ない現状なのである。毎年数多くと15歳となる若者は冒険者としてデビューする。これには訳がある。


 デビューする冒険者と死亡する冒険者の比率が毎年ほぼ1対1になっているのだ。


 これはデビューした冒険者のほとんどが死亡しているのではなく、中には熟練の冒険者も死亡するケースもある。


 そのため、毎年たくさんの冒険者のデビューが急務なのだ。大きな街に冒険者に関する施設はもちろん、中規模のニーナたちが住んでいるフラークスにも冒険者施設は全て揃っている。


 村程度の小規模の人の集まりの場所に冒険者育成施設はさすがにないが、それでも武器や回復薬といった冒険者にとって必須のアイテムは揃っているのだ。


 土壌は整っている。あと必要とされているのは強い冒険者だけなのだ―――




 私は思う。魔術を使える人ってすごいんだなって。


 私が唯一使えるこの『加速』のみでさえ、使える前兆が見えないのだ。


「うーん。なにがいけないんだろうお父さん」


「ニーナはどうやって魔法を使おうとしている?」


「うーんと、『加速』というからなんかこう速く!速く!って」


「……ニーナよ。俺はそんな脳筋に育てた覚えはないぞ」


「あ、あははー……でも『加速』って言われたらとりあえず速く! じゃない?」


「まあそうだが……そうではなくイメージを変えてみるんだ。そもそも【魔術を使う】って考えずにただひたすら動いたんじゃないか?」


 考えてみるとそうなのかもしれない (※そうです) 。私はそもそも魔術をイメージして走ってなかったや。


 ……そもそも魔術ってどうやってイメージするんだろう。私今まで魔術の前兆とかも出てこなかったっしなあ。


「じゃあ次は別のイメージを考えてみるよ」


 『加速』ってなんなんだろうね。速い以外にどんな感じだろう。鋭くなってくる感じ? それとかギュって貯めた後バーンって走る感じかな。とりあえず試してみよっと。


 いつもの自分よりも違う感じに、速く、それに、鋭く。


 足に変化を与えて、なんていうか、こう。いつもと違う感じで溜めて走ってみよう。



 足に力をこめたその瞬間、足の踏んでいる地面が急激に光った。



 そして、まるでジャンプするかのようにニーナは片足のみで5メートル程跳んだ。まるで走り幅跳びの跳躍のように。



 そして盛大に転んだ。



 まともに受け身をとれる態勢ではなかった。彼女が転ぶのは当然である。


「いててて……」


「おーいニーナ! 大丈夫か⁉」


 お父さんが駆け寄ってきた。どうやらかなりの距離を飛んだらしい。後ろを振り返るとのかなり離れていた。数歩駆けただけなのにすごい。これが魔術の力……


 でも、私の魔術と違ったような……


 そう思いつつ立ち上がる。いや、立ち上がろうとした。



 立てなかったのだ。たった数回走っただけなのに。たった一歩、魔術の影響を受けただけなのに。


 これが魔術の与える影響力。そのほんの一端なのだ。


 ものを燃やす、凍らせる、かまいたちを起こす、大地を揺らす。これら魔術がもたらす力はとても絶大である。


 それもそのはず、初級魔法の一つに炎属性の『ファイアーボール』というものが存在する。


 これは炎の球そのものをぶつけるため、魔法適正のない一般人が一発でも被弾したら間違いなく即死級となる。


 そのような影響力のある魔術の力そのものを自らの体に取り入れるとなると、ニーナに負担が出るのは必然である。 


 彼女の苦難は始まったばかりである。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 流石に冒険者死に過ぎでは? 当然普通に引退する人も居ると思うのですが、それを考慮すると新人と死亡者の割合が同じだと毎年凄まじい勢いで冒険者が減っていくと思います。
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