勧誘
「———くん、蓮くんってば、しっかり歩いて」
そう言われて紗黄天国から目が覚めた。
「は、はい。すみません、みとれ・・・じゃなくてぼーっとしてました」
「何みとれたとか言ってるんですか? きもいですよ。しっかり勧誘してください」
そういって花一華が俺の足を馬並みの力で蹴ってきた。
顔には出していないが、ちょー痛いし、ちょー怖い。
でも1番怖いのは紗黄姉に見惚れていたと言うことがバレることだが・・・大丈夫そうだ。
そりゃそうだ、俺はいま変なものに全身包まれて顔を外から見ることができないからだ。
紗黄姉がかわいい話……ではなく、今は何をしているかって、それでは少し時を遡ろう。
「ところで紗黄姉さん、どうやって勧誘するんですか? もうみんな入部希望の部活に行っちゃっていると思うんですけど?」
そう、この学校は入学当日に部活に入部するという、全国探しても見つからないような方法をとっているうえ、入部率は99パーセントとこれから勧誘する側にとってはとてもたちが悪い。
しかし紗黄姉は俺の質問を聞いてとてもニコニコしながら立ち上がった。
「実はその入部率は兼部も含まれてるわけ。だから実際部活に入ってない人は多くはないけどそれなりにいるから大丈夫だぜ!」
「なるほど、じゃあ肝心の勧誘方法は?」
「・・・適当に周ってその辺にいる人を片っ端から勧誘しよ〜」
——まさか紗黄姉の口からそんなバカっぽい考えが出てくるなんて……かわいい。
なんて思っていると横にいるおに……花一華が
「私はいいと思いますよ〜。この部室にこんな面白いものもありますし〜」
と珍しく俺の方を向いて喋っていると思ったら、その腕には謎の着ぐるみが抱えられていて・・・
という感じで今は猿と兎を合体させたような未知の生命体の着ぐるみをきて勧誘している。
こんなに汗を垂らしながら頑張っているのに成果は無し。
——もしかすると隣にいる鬼がい………
「今私に対して失礼なこと考えませんでした〜? ぶっ飛ばしますよ」
——こえ〜よ〜。テレパシーかなんかでも使えるのか。こいつのせいでどんどん女性恐怖症になる。というか、なぜこいつに嫌われているのか全くわからない。もしかして昔どこかで会ったことがあってその時何かしたとか……
などと考えていると、突然男に声をかけられた。
「あれ、蓮じゃん」
そいつは着ぐるみを着ている俺を一発で俺と当ててきた。
よくよく見るとその顔に見覚えがある。
「信温じゃねーか!どうしてお前がここに……」
果たして新入部員の獲得に成功するのか……
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