指切り
放課後、僕は部室でカメラのカタログを眺めていた
しばらくして
「おーす。大沢ーやっとるのかぁ?」
写真部顧問の沙月緑先生がやって来た。
「おつかれ様です沙月先生。お茶淹れますね。」
「おぉ悪いね。いやぁこの部もお前だけになってしまったな」
「そーですね…」
「去年までそれなりに賑やかだったのに皆卒業して…そこでだ!大沢!そろそろ部活らしい事をしようじゃないか!」
「部活らしい事って?何か撮りに行くんですか!?」
僕は少しテンションが上がった
「まぁ撮りに行くってのは間違いではないがな?もうすぐ夏休みだろ?まぁ夏休みの課題って意味も込めて、コンクールに出そうと思います!!」
「コンクールですか…僕は卒業された先輩方みたいに上手くないですし…」
「そーか?私はお前の写真結構好きだぞ?まぁとにかくこれは決定事項!
夏休み終わるまでに最高だと思う1枚を私に提出する事!以上!」
「は、はい!」
写真部では沙月先生の言うことは絶対なのだ。
そして、コンクールに出すための写真のテーマなどあり説明された
「じゃあ私は今から飲みに行くから!気をつけて帰れよー。ちなみに賞でも獲れれば新たに部員が入ってくるかもな!」
そう言って先生は早々に部室を後にした
「テーマは人物+風景か…」
風景のみならよく撮るのだが人は撮ったことがない
夏休み終わるまでなんてまだ先の事だし、また考えよう
そうして、帰宅した。
風呂も入り夕飯も済ませ、ソファでゴロゴロテレビを見ていると
「あぁ琢己、土曜日お母さんみーちゃんとデートしてくるから!その日宅配便来るから留守番しといて?」
「良いけど、どこ行くの?」
「みーちゃんが美味しいスイーツのお店見つけたから一緒に行こうって!娘と行くみたいで楽しみー」
「ふーん、お土産よろしく。」
母さんはよっぽど娘が欲しかったに違いない。
部屋に戻りカメラのメンテナンスをしていると一通のメールが送られて来た
北条さんからだ
いきなりのメールに焦る
[こんばんは。昼間は偶然出会って驚きました!あの、急かしてるみたいであれなんですけど土曜日とかどうですか?]
土曜日かーまぁ特に何も無いし
[こんばんは。僕も驚きました。じゃあ土曜日に。]
なんか内容が淡白かな
もっと何か言った方が良いのかな
誤って送信ボタンを押してしまい
[やったー!じゃあ時間とかは大沢君に合わせます!(^^)また教えて下さい!]
ま、まぁ良いかとりあえず寝よ。
夜中目が覚め思いだす。土曜日留守番しなければいけなかった事に。
明日謝ろう全力で…
翌日、田中に頼んで北条さんを呼んで貰うことに。
田中はすんなり了承してくれた
「茜たんを呼び出す日が来るとは…生きていてアイドルのライブ観に行く次に嬉しいですぞ!友よ!」
そして、北条さんがいるクラスの前まで行き
教室に入ろうとする女子に
「すまぬ、そこの姫君よ。北条茜たんを呼んではくれぬか」
田中なんだか男らしいぞ!
その女子はめちゃくちゃ怪しそうな目で僕達を見た
「茜〜。なんか教室の外でキモいのが呼んでるよ」
田中は凛々しく立っているそれはそれは弁慶のように
北条さんが不安そうに寄ってくる
「北条茜殿。拙者は貴方のような姫君に…………」
「あっ大沢君!」
「すいません、急に呼んで」
「そう、その瞳。可憐で美しい…………」
「ここじゃあれなんで向こうで」
「うん、良いよ!行こう!」
少し教室から離れた
「その馬の毛艶のようにキラキラした長い髪拙者は貴女の全てを愛している!!!…………………あれ?2人は?」
お前誰だよ!
教室の前でキモいんだよ!
わけわかんねー事言ってんじゃねーよ!
田中は女子から袋叩きにあった
「北条さん、謝りたいことがあって。」
「え?なに?」
「土曜日なんだけど、その日僕家で留守番しないといけない事をすっかり忘れてて…」
ちょっと寂しそうな顔をした北条さん
「そっか…それは仕方ないよね!」
「ごめん!また違った日とか…」
「そーだね……そうだ、大沢君が良かったらなんだけど私も一緒にお留守番を手伝うとか!」
「え!?ウチに来るってこと?」
「じょ冗談だよ〜」
舌をちょっと出して笑った。
そんな顔されたら断れないじゃないか……!
「北条さんがそれで良いのなら…」
「ホント!?イイの??邪魔にならない?ウザいよね!いきなりこんな事言って…」
「むしろウチなんかで良いんですか?本当なにも面白い物なんて1つも無いし…」
「全然!嬉しい!」
「なら良かったです!あの適当に来てもらって良いんで。朝から僕1人だから。住所は後でメールしておきます。」
「ありがとう!迷惑だったら言ってね!図々しいのは分かってるから」
少し苦笑いをして見上げてきた
「大丈夫です!」
「じゃあ約束!指切りしよ!」
「え?」
腕を掴まれ小指で小指をつなぐ
「手おっきー!」
ゆーびきーりげーんまん嘘ついたら針千本のーます指切った!
ニーっと笑った北条さんはとても可愛いかった。
「またメールするね!じゃーね!」
僕は手を振った
「ブ、ブタミ…ゲホっゴホっ!」
「うわっ!田中!?」
田中はボロボロでその場に倒れこんだ
「ご褒美だったでござ……る」