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第九話 お、お前女だったのかー!

「それでは、私は指揮所に戻りますので」

「はい、ありがとうございました」

「それとお父さん、余計なこと言わないでよ? いい?」

「わかってるよ……」


 力なく手を振る親父さんとプリプリと肩を怒らして出ていくハヅキさん。

 なんだかなぁと思ってしまう。


「ウリュウ様、ハヅキは男勝りですがね、優しい子なんですよ」

「は、はぁ」


 おぅ。

 いきなり余計なこといい始めたぞこの親父。


「ちょっと激しいところもありますが、変なふうに思わんでやってください」

「ソーデスネー」


 俺は適当に返事を返すと自室の鍵を受け取り階段を登っていった。



「でだ」

「あい」


 自室の扉を開けると、そこには一人の少女が立っていた。

 緑の長い髪に仕事なんてしたこと無いような綺麗な白い指先。

 強いて問題点を上げるとすれば、それが素っ裸だってことかな。


 大問題だよ!


「君は誰かな?」

「う?」


 こてりと首を傾げながら不思議そうにこちらを見つめてくる少女。


 『う?』じゃないし。

 なんで俺が泊まることになったばかりの部屋に裸の少女が居るのか。


「ったく、親父さん部屋間違えたのか?」


 そうとしか考えられない。

 まったく、不幸な事故だったよ。

 これが妙齢のお姉さまならラッキーだったろうが、出るとこも出ていないこんなちびっ子じゃただの事故だ。


「間違ってない」

「いや、なんで君がそんなこと言えるのさ……」

「ペットがご主人様のところにいるのは当たり前」

「ペット?」

「そう、ペット」


 ペットって、魔導デバイスみたいに俺の知らない言葉か?

 どんな意味なのか。


「私は小太郎。ご主人様のペットの飛竜」


 は? 小太郎? ペットの飛竜?

 飛竜をペットにしたことは騎士団の人たちなら知っている。

 だが、その名前はだれも知らないはずだ。

 少なくとも、目の前の少女が知っているなんてありえない。

 というか、どうやって飛竜が人の姿になったというのか。


「人化の魔法使った」


 俺の混乱を読み取ったかのように彼女は淡々と俺に告げる。


「あー、なるほどね。人化の魔法使ったなら人の姿しててもおかしくないか」


 いやまて。

 飛竜が飛翔以外の魔法使えるなんて聞いたこと無いぞ。

 魔法が使えるのは古代龍種だけのはず。

 それに人化の魔法?

 そんな魔法存在するのか?


「これ、証拠」

「んなっ!?」


 バサリと少女の背中から翼が生える。

 それはたしかに飛竜の翼だった。

 驚く俺をよそ目に少女は翼を消すと今度は腕を飛竜のものへと変化させる。

 足、そして尻尾と各パーツを消しては出してを繰り返していった。


「完全に人化解いたら部屋が壊れる」

「え、マジで……?」

「マジマジ」


 ノリ軽いな!

 ってそうじゃない。


「えーっと……」

「?」


 とりあえず、お約束はやっておくべきだろう。


「小太郎、お前、女だったのかー!!」

「……。ご主人様、バカ?」

「うごっ……」


 冷静なツッコミと冷たい眼差しに頭が冷える。

 思わず現実逃避してしまったが、え、本当に?

 飛竜って魔法使えるの?


 その後、こっそりと城壁の外に出て人化を完全に解いてもらったが、その姿はまさしく飛竜の小太郎だった。



「なる、ほど……」


 こっそりと宿屋に戻り、ベッドへと腰掛ける。

 小太郎は当たり前のように俺の隣へと腰掛け、軽く体重を預けてきた。


「大丈夫?」

「なんとか……」


 はは、どうすんだよこれ。


 宿屋の一室、そこにはとっくに成人を迎えた男の俺。

 そして全裸の美少女。

 完全に犯罪である。


「元気、だして」

「ありがと……」


 軽くぽんと肩を叩かれるが、元気になるのは別のところだけだぜ。

 ならんけど。


「あのさ、服とかないの?」

「ない」


 即答ですか、そうですか。

 そりゃそうだよな、野生の飛竜が服着てたら驚くわ。

 ペットの飛竜ならたまに服着させてる人もいたけど、そうだとしてもサイズや形がぜんぜん合わないだろうし。


「服って幾らくらいするのかな……」

「ご主人様、お金、ない?」

「うう……」


 こんな少女にいうのは恥ずかしい限りだが、事実俺は一文無しだ。

 今日の宿代にすら事欠く有様なのに、小太郎の服を買うお金なんてない。


「これ、売って」

「これは?」


 小太郎が差し出してきた、ランプの光を受けてきらめく緑色のそれ。

 それは飛竜の鱗だった。


「鱗?」

「鱗」


 いや、自信満々にいわれても。

 鱗なんて誰が買うんだよ。

 肉ならともかく、鱗なんて実用性ゼロじゃん。

 需要がないのに値段はつかない。

 といっても、飛竜じゃわからないか。


「はは、ありがと……」

「飛竜の鱗は、防具の素材になる。だから、高く売れる」

「え?」


 そうか、俺が生きていた時代だと飛竜の鱗程度では使い物にならなかったが、この時代ならなるのかもしれない。

 そういえばカンダツ村で手に入れた魔石も次元収納に入れたままだったけど、もしかして魔石も売れるのか?


「でもよかったのか?」

「鱗はいくらでも生え変わる。普段は剥がれた鱗は自分で食べるけど」


 飛竜にとっての鱗とは、人間にとっての唇の皮みたいなものらしい。

 特に意味はないが何となく食べるのだとか。


「質屋で買い取ってくれるといいんだけど」

「……、騎士団に持ち込んだほうがいい」

「あ、そうだな。身分証明書もないし」

「そういうことにしておく」

「え?」


 なんか不安なことをいわれた気がするが、騎士団みたいに戦闘を職務としているところであれば高く買い取ってもらえるかもしれない。

 明日にでも持ち込んでみるとしよう。

 一枚十円くらいになってくれればいいんだけど。


 その後、夕食は自分で部屋まで運び二人で食べた。

 飛竜の餌は魔力だけでいいはずだが、少女を目の前に自分だけ食事というわけにも行かないしな。

 女将さんには訝し(いぶかし)まれたがなんとか誤魔化した。


「寒い」

「あいよ……」


 ベッドで一緒に寝るのも緊急避難だ。

 まだ夜は冷える。

 うう、煩悩よ消え去れ、六根清浄、六根清浄。

 俺の苦悩の他所に、小太郎の寝息とともに夜は更けていった。



「千円、ですか」


 翌朝、騎士団に飛竜の鱗を持ち込んだところ想像以上の高値がついた。


「は、はい、よくこんなレア素材手に入りましたね。しかもこんなに高品質……」


 鱗を眺めながらミトさんがつぶやく。

 もっとも、品質が高くても飛竜の鱗の値段は騎士団では一律で決まっているので色がついたりはしないのが少し残念だ。


「あー、まぁ、そうですね?」


 鱗一枚千円也。

 そんなのを意味もなく飛竜は自分で食べてしまうのか。

 いやまぁ、俺も唇の皮が売れるっていわれてもって感じだけどさ。


「それも二十枚も……。一体どこで、いえ、ウリュウ様は飛竜を使役されていたんでしたね」

「あはは」


 使役している飛竜から剥ぎ取ったと思われたようだ。

 ある意味あっているけど、ある意味違う。


「あの、余計なお世話だとは思いますが……」

「はい?」


 ミトさんがずいっと顔を寄せてくる。

 息が耳に当たり、少しドキドキしてしまうな。

 それにふわりといい香りもして……、いかんいかん。

 今は真面目な話だ。


「誰も信じないとは思いますが、飛竜を使役しているのは秘密にしておいたほうがいいです」

「秘密ですか」


 飛竜の素材は高額なので、余計なトラブルに巻き込まれる恐れがある。

 そういうことらしい。


 人化しているし、いわなければバレることもないだろう。

 それにミトさんがいうとおり、誰も信じないだろうし。


「ご忠告感謝いたします」

「それと、鱗の売却も極力騎士団を通したほうがいいと思います」

「なるほど」


 売却先から噂が回ることもあるしな。

 あ、小太郎がいっていたのはこういうことだったのか?

 ……、あいつ本当に飛竜なのだろうか。

 頭良すぎない?

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