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5、解呪

手持ちを放出中


収納の中にある物をリストで確認した。

その中に解呪の専門書があった。

収納から出してみた。

表紙には何も書かれていない。

でも白く解呪という文字が見える。

今日、警察で誰も開くことができなかった本だ。

私は簡単に開くことができた。

解呪には簡単な呪いを対象にした解呪用の回復魔法で解呪する方法と対象の呪いを分析してからその呪いに適した解呪を行う方法が記載されていた。

分析してから適した方法を見つけ出し解呪を行う方法は強力な呪いに適しているらしい。

簡単な解呪用回復魔法は強い呪いには回数を重ねなくてはいけない。

また、解呪が中途半端になってしまう危険性がある。

封印というのは大体が強力な呪いに分類される。

この事から封印解除には後者の方法をとるのが望ましい。


本を読み、練習を重ねた。

初めの方は簡単に理解できた。

魔力というものも捉えることができた。

その流れが読み取れた。

同時に気配の察知がより広範囲により緻密になるのを感じる。

思った通り、廊下には監視者がいるようだ。

ノボルさんではない。


解呪の魔法について理解した。

知識としてだが。

実際に解呪を試してみたいがどうしたらいいか困って本を見ていたら、各種魔法の練習用の機器があることが分かった。

その機器は収納に入っている。


収納に入っていたその機器は魔法が適正に行われているか測定できるものだった。

さらに人体模型と思ったのはロボットで回復魔法や解除の練習用だった。

これらを使いながら解呪の魔法の練習をすることができた。

呪いの分析後、その情報を元に適した解呪を行うという繋がりが難しいなあ。

しかし、23時ごろには問題なく解呪の魔法が使えるようになった。


後は明日だな。



    *    *    *    *



タカシが所長室を出た後、それまで一言も発していなかった残された人物たちが会話を始めていた。



「所長。本当に彼に解呪を任せていいのでしょうか?彼は自分の力も把握していないようですが」

「大丈夫だろ」

「しかし、あの二人の封印の解除は今までに何人もが失敗しています。危険ではありませんか。彼はこれから大事な戦力になる可能性があるのに」

「まだそれはわからないよ。我々の味方になってくれるのか。敵対しなければ大丈夫だと思うが」

「私は大丈夫だと思います。彼の本質は『善』ですから。人を助ける事を大事にしていると思えます。あの事件の行動を見てもそうでしょ」

「そうだな、しかしあの距離を一瞬で移動、加速か身体強化か監視カメラの映像では区別ができないな。空間転移ではなさそうだが。さっきの教えた異能からもわざと外したよ」

「おいおいわかるでしょう。それより解呪です。今まで彼女らに解呪を行った者が反射と反動でダメージを受けるのはご存知ですよね」

「ああ、知っている。だが彼の回復魔法は有効だった。そして封印も弱くなった。彼も何も影響を受けていない。この事から考えると大丈夫だろう」

「そうですね。そう考えるのが妥当ですね。本当に彼は何者なのでしょう」



    *    *    *    *



翌日、起床後すぐに朝風呂を楽しむ。

布団もいいものでよく眠れた。

昨日は解呪の練習で疲れたけどいい眼覚めだった。

その後、レストランで朝食。

朝食バイキングを選択した。

味も高級ホテル並みだよね。

このような生活ができるならここで過ごすのに問題はないな。


部屋に戻るとすぐにノボルさんが訪ねてきた。

同行しているのは昨日所長室にいた年齢不詳の女性だ。


「私は地下の研究施設の責任者でミユキといいます。よろしく。今から貴方を研究室に案内します」

「タカシです。よろしくお願いします」


エレベータは直通の特別のものがあった。

これがあるのは19階と18階だけだそうだ。

他のフロアからは地下1階におり、セキュリティを通り、そこで研究施設へのエレベータに乗るのだそうだ。


私の研究室は地下6階にあった。

研究室には小さな事務所が受付になっている。

ここに私の5人の女性秘書が順番にいるらしい。

必要な書類処理やスケジュール調整は手伝ってくれるらしい。

必ず一人はいつもいる。

24時間体制になっているという。

今日は5人ともおり、挨拶と自己紹介をしてくれた。

執務室のような部屋と応接室、実験室が4つ。

執務室の横にあるのはトイレと更衣室だ。

更衣室では仮眠もできるそうだ。

実験室には様々な機器が置いてあった。

化学実験室、物理実験室、生物実験室、地学実験室という感じだ。

さらに作業室が2つ。

1つは小型飛行機の組み立てができそうだ。

でもここで組み立ててもどうやって外に持っていく。

私は収納があるけど。

収納の中身の確認は作業室が便利かな。

分析室と工作室もあった。


そして訓練室?


「魔法の訓練でも武術等の訓練でもできますよ。頑丈な部屋ですから」


よく分からん?

これからの仕事の関係あるのかな?

荒事があるのか?


後は助手用の部屋が三部屋?

そのうち二部屋は執務室を小さくしたような個室。

もう一部屋はパテーションで区切られた机が6つあった。

助手のための休憩室と更衣室もあった。


「近いうちに数人の助手を付ける予定です。案件処理には適する異能を持ったものを同行させてください」


この地下6階の研究室は3つ。

私とリュウキ所長とミユキ責任者の研究室だ。



    *    *    *    *



執務室で解呪に関して本を読み調べた。

さらに治癒魔法に関しても学んだ。

治癒魔法は体内の構造を専門家並みに理解していると効率がよくなるようだ。

自分はその点、医者並みの知識を持っていた。

私は医者だったのか?


そのように過ごしていると昼食時間が近づいて来た。

昼食をどうするのかと秘書の一人が尋ねてきた。

レストランから弁当を取り寄せることができるらしい。

それならと日替わり弁当をお願いした。

因みにここの部屋で勤務している者への弁当は無料なのだそうだ。

だから秘書の皆さんも勤務中はここで食事をする。

今いる秘書は3人。

夕方からの勤務者と深夜からの勤務者は帰宅している。

明日から助手が決まるまでは昼時間帯の勤務は原則二人だそうだ。


午後は3時ごろまで改めて収納物の確認を行った。

詳細を調べると、とんでもないことが分かってきた。

これは所長たちに話さなくてはいけないよね。




夕方という話だったが3時ごろにミユキさんが迎えに来た。

昨日の少女・・・・女性の解呪を行うためだ。


「どこに行くのですか?」

「隣の神社だよ。彼女らは学校から帰った後はあそこで巫女をやっている」

「巫女さんですか」

「そうだよ」


建物を出ると冷たい風が吹きつけてきた。

寒いなと思った瞬間、周囲に温かい膜のようなものができた。


「結界か?」

「そのようですね。ミユキさんにもかけましょうか」

「ああ、お願いしよう」


ミユキさんにも自分と同じ結界と念じた。


「これはいいね。ありがとう」

「どういたしまして」


神社の鳥居をくぐった時に結界を通過したことが分かった。

私たちの結界も神社の結界も問題はなかった。

本殿の横から奥へ進む。

年の瀬も近く神社の関係者も慌ただしく働いている。


社務所の裏の建物に入って行く。

そこは30畳ぐらいの板の間になっていた。

そこに一昨日の少女・・・女性がいた。


「こんにちは。大丈夫でしたか」

「はい、おかげさまで」

「お二人が短大生だとは思いませんでしたよ」

「何だと思っていらっしゃいましたか」

「小学生・・・・なんて思っていませんでしたからね」

「いや、正直に言ってください。これから付き合いが長くなりそうですし」

「いや、お二人は立派ななレディーですよ」

「だいぶ苦しそうですね」

「はははははは・・・」


なかなかの威圧を放ってくる。


「改めまして。私がサユ、こちらがユミです。タカシ様よろしくお願いします」

「こちらこそ」


黒髪ロングのしょうがく・・・いや女性がサユさん、茶髪ショートがユミさんだった。

一昨日骨折したのはサユさんだ。

治癒魔法の本にあった診断を使うと骨折部分に問題はないようだ。

おかしな形で繋がっているということもない。


そうこうするうちにリュウキ所長や昨日所長室にいた人たちがやって来た。

その中のお一人はこの神社の宮司さんだね。


「ではタカシさん解呪をお願いするよ。解呪の様子はビデオで記録するがいいかな」

「はい、大丈夫だと思います」

「ではサユから」

「はい」


自分の右手でサユさんの右手を握る。

左手を頭の上にかざす。

そうやって封印の状況を把握する。

同時にサユさんの封印されている異能もわかった。

彼女の異能は5つもある。

彼女は特殊異能者だ。

封印は確かに綻びかけている。

しかし、一気に封印を壊すのかよくないと感じた。

ゆっくり絡まった糸をほぐすように、そして異能を私の力で包み込むように封印を解いていく。

10分ほどで作業は終わった。


「どうですか。体に変調はありませんか?」

「大丈夫です」

「よかった」


少し休憩をした。

その後ユミさんの封印も解いた。

彼女も5つの異能を持っていた。

そして状況はサユさんと同じだった。

同じことを行う時は油断して失敗しやすい。

充分に注意して封印を解く。

こちらも問題なく成功した。


これで今日のお仕事はお終いかな。


お読みいただきありがとうございました。

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