16、嫉妬
よろしくお願いします
「面倒だな」
「タカシさん、がんばってください」
「秘書を代理で出すというのは?」
「駄目に決まっていますよ」
「いや、新年会なんてちょっと顔を出せばいいと思っていた」
「下っ端はそれでいいですよ」
「あ、持病の癪が」
「治癒魔法を施しましょうか」
「あ、治りましたよ。大丈夫です。アカリさん。ご心配を掛けました」
1月6日の夕方には組織の新年会が行われた。
研究室を持つ室長や組織幹部や案件処理チームのリーダーは始まりから終わりまでいなくてはいけないらしい。
「タカシさんに関しては特別の紹介もありますから」
「そうなんですか」
「ミユキさんから連絡がありませんでしたか?」
「おとといも来たけど、酒を飲んで帰って行った。あ、噂をすれば」
「タカシ君、何かを忘れていたと思ったけど君を新年会で全体に紹介するからよろしくね。じゃあ、また会場で」
「あー、ミユキさんはやっぱり忘れていましたね」
「はははは、そうみたいだね」
新年会は地下4階の大広間で行われる。
すごく広い会場だね。
立食パーティーだ。
参加人数も多いね。
これで壇上に行くの?
所長の挨拶、来賓の挨拶の後、新人として紹介された。
「彼、タカシ君はまだこの組織に加入して一月も経っていないが業績は皆さんもよく知っていることと思います。特殊異能者として研究室長としてチームのリーダとして彼が活躍してくれることを期待しています。ではタカシ君一言」
「タカシです。わからないことも多くて戸惑っていますがよろしくお願いします」
拍手、そして注目。
中には嫉妬の目で見ているものもいるなあ。
あれは銀座での討伐に失敗したチームのリーダーだよね。
恨みでも買ったかな。
こちらは普通に仕事をしただけなのに。
あ、まずい。
あれは悪意に染まってきているよね。
気配察知と鑑定と分析によってあの元リーダーが邪悪な心にとらわれていくのがわかった。
さあ、どうする?
会場内の何人かが異変に気が付いたようだ。
元リーダーに何か憑りついているようにも感じるな。
読心のできる人が近くの警備に何か話している。
警備が元リーダーの方に向かっているが・・・。
「折れに恥をかかせやがって。死ね。水矢」
水操作で水の矢をこちらに放ってきた。
「分解」
反射や結界だと周辺に被害があると困るので水の矢を分解した。
「拘束」
元リーダーを拘束した。
ただの拘束ではないよ。
魔法を発動できなくする拘束だ。
警備が元リーダを連れて行こうとする。
その前にやらなくては・・・・。
「ちょっと待ってください」
「タカシ君、どうした?」
「ミユキさん、彼をちょっと祓った方がいいようですよ」
「あ、そうか。頼む」
「はい、退魔結界。浄化」
元リーダーの中から出てきた黒いものが光に包まれて消えていった。
成功のようだ。
元リーダーは気を失ったようだ。
警備が元リーダーを連れて行く。
4階に牢屋があるんだよね。
いいのか?警察じゃないのに。
牢屋と言ってもこういうふうに何かに憑りつかれたものを収容する場所だ。
治療施設も兼ねている。
元リーダーは今までにも多くの問題を起こしていたらしい。
力を誇示した暴力沙汰。
ストーカー行為。
この前のような命令無視。
「サユさんも被害者だったな」
「そうなんですか?」
「実際には異能を二つ持っていいるだけで能力は低いのに勘違いしていたようだ」
「そのようですね」
「チームは解散。リーダーの座はなくして逆恨み。メンバーの女子は取られてしまう。自分のいうことを聞かない新米はいる」
「はははは、でも私は命令通り案件を処理したのですよ」
「ああ、正解だよ。そしてちょっと思いを寄せた子はその新米にべったり。それで心の隙間に魔が宿ったようだ」
「でもあの悪魔は長く彼の中にいたようですよ。ただ前に彼を見た時は気が付かなかったのですが」
「そうなのか。鑑定解析力が上がったのか」
「そうみたいですね。この前は何か隠蔽しているように感じたのですがよくわかりませんでした」
「そうか。まあ。新年会の続きを楽しんでくれ」
「はい、ありがとうございます」
ミユキさんと分かれ、うちのメンバーの方へと移動した。
「鮮やかでしたね」
「ああ、大したことはしていないよ」
「でも能力を4つも公開してしまいましたね。わかる人にはプラス強い鑑定力も見せちゃいましたね」
「そうだね。大丈夫かな」
「いいんじゃないんのですか。みんな、タカシさんの強さを理解したと思いますよ」
「でも、遠巻きにされているような」
「大丈夫ですよ。タカシさんには私たち10人がいますから」
「そうだね。ありがとう」
「しかし、助かりました。彼のストーカー行為で大変だったので」
「サユさん。もう大丈夫だと思うよ」
「はい、ありがとうございます」
うちのメンバーと話をしているうちに徐々に他の人たちも近づいて来た。
色々な人たちが挨拶をしてくれた。
覚えられないぐらい知り合いが増えたよ。
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