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~1~日常

始めて書いてるので分かりませんが終わるまで続けていけたらと思います。

「ナダル先生どうかされましたか?」


そう声をかけてきたのは同僚の女性教員のナイーダ先生である。


「何かあったように見えますか?」


逆に何もなく普通通りだと自分では思っていたのだけれど、どうやら退屈に見えていたそうだ。


この学校は貴族の子息や子女が通う全寮制の学校でコルセニア王国中から次世代を担うための教育を施すために造られた施設だった。


その中で護身術と剣術などの肉弾戦闘を教える授業を教えるのが俺の仕事なのである。


それでも貴族にもなれば周りの護衛が戦闘を行うし魔法という限られた物を使える特別な人が結婚することが多いので魔法に長けた者が、ほとんどで近接戦闘などは大して重視されていなくて生徒達も真剣に剣や武術に打ち込むなんてことは稀だった。


そんな生徒に教えるのが俺の仕事なんだから疲れてしまっているのだろうと思う。


「俺、必要ですかね?」


ナイーダ先生は、王国の治世を教える先生であり生徒達も真剣に、政治(まつりごと)に密接に関係している授業を聞いている姿を見ることができたのである。


「そうですけどナダル先生の授業は基礎体力など必要なので大事だと思いますよ」


齢は50を越えただろう先生は優しく俺に笑いかけた。

この先生が教師として半人前以下の俺を支えてくれなければ、とっくに学校から出ていったであろうと感謝している。


何で元々、冒険者だった俺が、こんなことをしているかと言うと偶然に次ぐ偶然が重なった結果なのだが平民である者を教師などと認める生徒など、ほとんど居ないと感じる毎日であったんだ。


「俺は貴族なんて者でもないし」


「そんなことを言うものじゃありませんよ!貴方は学校の長が決めた教師なのですから」


俺のような立場の人間が居ないわけではないが戦いに明け暮れていたほうが、よっぽどマシだったわけだ。


「はい、ここまで!」


その合図と共に授業を終えると俺は冒険者が集まる酒場へと向かいながら今の生活に悩んでいることを忘れるために安い酒をあおるのである。


誰が一番強いのかなどと話していたり今日潜ったダンジョンの話などと騒ぎながら頭に血を昇らせて熱く語り合う姿が所々に見える。


「女がしゃしゃり出てくるんじゃねえっ」


「はんっアンタらが弱いだけだろうが」


その一角で激しく罵り合う集団がいて、どうやら今日パーティを組んだ女性にからんでいるようだ。


その女性は小麦色の肌に小さな傷を無数につけ筋肉質な体つきをしている。


「やれやれアンタらは、どっちがイチモツがでっかいか比べてるようなチンケなガキだな」


その言葉に俺は口に含んだ酒を噴き出してしまう。


「面白いことを」


思わず口から言葉が出てくると殴り合いが始まり周りの客がギャラリーになると各自のテーブルを手際よく、どかしたり自分の料理や酒を持ちながら安全なところへと避難させて、その喧嘩を興奮しながら見ていた。


「ただじゃおかねえからな」


「はいはいアタイに喧嘩を売って後悔するんじゃないよ」


その喧嘩の様子を見ていると技術の差が見える。


今まで命の取り合いを、どれだけしてきたかが伺える動きをしているが彼女に対して妙な違和感を覚える。


(あぁ)


そうして殴り殴られながらも周りの客は熱狂し白熱した殴り合いは徐々に女性が押しながら相手の男が崩れ落ちて決着がつく。


そして称賛の声を女性に送られて、いつも通りの冒険者が集まる酒場へと戻るのである。


こんな光景が好きなのだろうと思いながらカウンターに座りながら口へと酒を再び運ぶ。


「よっと、あのやろう口きっちまったじゃねぇか」


先程の女性がカウンターに座りながら口から滲む血を拭き取っている。


「一杯奢ろうか?」


「あ?良いのか?」


「あぁ、面白いモノ見させてもらったしな」


「良いねぇアンタ、店長同じもんで良いや一杯くれよ」


出てきた酒を口に注ぎながら一気に飲み干すと、どうやら傷口にさわったようだ。


「いってぇな、あの野郎、割に良い拳しやがって」


「あまり調子が出ていなかったみたいだけど」


「うっせぇ、ところでどっかで会ったことあったか?」


「俺も元は冒険者だったからな」


「へぇ、そんな風には見えないけど」


命がけの世界で生きてきた割に傷は少なかったと自分の体を見ても思うことがある。


こんな世界ならば丸太のような腕の冒険者などザラであろうし、そうでない者は得てして魔法を生業にしているものである。


「魔法術師にも見えないが」


そんな言葉を言われ苦笑してしまう。


「あまり大したことがなくてね」


「悪りぃ、変なこと聞いちまったか」


「そんなことないさ今は他の仕事をしているしな」


学校に居ても臨時教師みたいなものだから時間に拘束もされていないし自由なものだが約束として冒険者としての依頼を受けられない。


それは教師が突然死んでしまうと困るという理由の他に、もう一つの理由があったのである。


隣の冒険者である女性と、たわいもない話をしていると入り口から大きな音と共に子供の声がしたのだ。


「ナダルは居るか!?」


その少女は、この安酒場には似つかわしくないような上等な生地で出来た服を着ており隣にはメイドと思わしき女性が佇んでいる。


「ぶっ」


これで今日は口に入れた酒を吹いたのは2度目であるが今回は盛大に噴き出してしまった。


「ひっ姫さん何しに来てんだ?」


「おぉ、ナダル、貴様!余の授業をよもや忘れていたとは言わせぬぞ」


「あ、あぁ・・」


(まずいぞ今日は水日だったか?)


冒険者を辞めた理由の1つが突然飛び込んできたので驚きのあまり遠い空を見上げてしまった。


「ほぅ、隣の女は貴様のコレか?」


小指を立てて不適な笑みをしている少女に誰が、こんなこと教えやがったと思いながらも言い訳を考えていた。


「まて、さっき知り合ったばかりで名前も知らん」


「ほほぅ、貴様は女を口説くことを優先して余との約束を忘れていたと?そーいうわけだな?」


「忘れていたことは謝る、が、慣れない生活で考えごとをしていただけだ」


激怒する少女に必死で謝りながら出会った日のことを少しだけ思い出していた。


少女の名はエリン・コリス<コルセニア王国>の<第15王女殿下>である。

隣のメイドは下級貴族の娘、レナ・アルバート、エリンの世話係で赤ん坊の頃から彼女の世話をしており実の姉のように慕っている女性である。


エリンは国王の第10妃の娘で現在も過酷な家督争いをしてるのだけれど幼く優秀な彼女を妬む他の妃に暗殺を頼まれた野党に殺されかけたときであった。


「アンタにゃ恨みはないがなお嬢ちゃん、こちらも商売なんでな」


「余は、いつでも覚悟は出来ておる!だがメイドは関係なかろう殺さないでくれ」


「姫様っいけません」


レナの前で大の字になって立ちふさがると盗賊の頭領らしき人物に頬を平手で打ち付けられ、その場に吹き飛ばされる。


「どうせ死ぬんだ一緒が良いだろう」


「へへへ、イイコトしてから、あの世へ行きな」


野盗の下卑な声がすると衣服をナイフで、じっくりと切られながら震えるレナに手がかかろうとしている。

ベルトを外し下ろし始めると必死で抵抗するエリンは力がない自分の無力さゆえにメイドであるエリンを助けられないと後悔をしながら、その光景を涙を流しながら「すまない」と何度も心の中で謝りながら、すぐに逝くことを自覚する。


『パァァァァアアアアアン』と今まで聞いたことがないような甲高い音がするとレナを手にかけようとしていた男が、ありえぬ方向に吹き飛ばされた。


「何が起こりやがったぁ」


次々に、その場から消えていく仲間達を見ながら夜の始めに轟音だけが響き渡るのを涙で目を潤わせながら少女は地に体を押さえつけられながら見上げていたが何が起こっているのかが理解できなかった。


「よっと、あとはアンタ一人だけだけど、どうする?」


目の前に現れたのは腰に剣を携えた一人の青年の姿だった。


「金で雇われてんだ、これで裏切ったら俺らは殺されるんだぞ」


一見しただけで貴族の幼い少女の頭を抑えていた盗賊のリーダーらしき男が、少女の髪を掴みあげて首筋にナイフを充てると目の前の青年に対峙するのである。


「弱ったな・・・金はないし何とか、その子を放してやれないか?」


「ふっふざけてんのかテメェは」


首筋に軽くナイフの先端が当たると一筋の血が少女の良い生地で出来たであろう白い服に染みていく。


「姫様ぁぁぁぁ」


這うように盗賊の頭領らしき人物の足元にしがみつく、もう一人の少女に目をやった瞬間が勝負のときを決めた。


「てめぇ・・・な・に・・」


その場へと倒れる男の腕からナイフを取ると姫様と呼ばれる少女を抱える。


「良く頑張ったな」


「お前は」


「いやぁ道に迷って通りすがったところアンタらが居てさ、こんなご時世だけど見てみぬふりはなぁ」


「そうか」


俺の手をはらいのけると自らの力で立ちながらメイドらしき少女に近づいていく。


「すまんなレナ」


「そんなっ姫様」


その言葉を言った瞬間に足元がガタガタと震えながら膝をつきながら涙を流してメイドの少女に抱きつく。


(やれやれ)


止めを刺そうと俺が腰から剣を抜きつきたてようとすると少女は手で止める。


「おいおいアンタらを殺そうとしたんだぞ」


「だが、こやつらが、こんなことをするのも国にも責任があるのだ」


「生きてたら次また同じことをするぞ」


「そのときは容赦せん」


「甘いことで」


放っておいたとしても雇い主のことを口にする可能性も考えて口封じで殺されるだろうことは予想がつくし生かしておけば、その雇い主が危険にさらされることは容易に想像がついた。


「まぁ、良いか」


こいつらは生き延びたとしても追手に殺されるか、この森に棲む魔獣や獣に殺されるだけである。


「世話になったな」


年は10に満たないが気丈な少女に俺に対して礼を言った。


「偶然だ偶然」


「それでも望みのものはあるか?私にできる礼ならする」


「んなこと言ってもなぁ」


そんな終わりのない会話をしながら少女を背負うと王都への方向に歩きだす。


「なにをっ」


「そんなとこに居ても危ないだろうが、それにな」


肩掛けカバンからローブを取り出すと肌がはだけた少女にかけてやる。


「そんな恰好じゃ俺の目の毒だからな」


ようやく自らの格好に気付いたのかマントの前を【ぎゅっ】と握る。


「あ・・・ありがとうございます」


「安物だから虫よけに燻した煙の臭いだけは我慢してくれ」


「はい」


背中に背負ってしばらくすると幾ら気丈にしていても子供だ可愛らしい寝息を立てながら寝てしまった。

王都の門へと近づくと物凄い殺気が立ち、ひと悶着があったりはしたがメイドのレナが事情を説明して彼女を屋敷へと送り届け、その場を後にしようとすると彼女の母親らしき女性から一つの手紙を受け取り冒険者の安宿に帰るのだった。


この事件を知る俺を消すことも考えられたが今のところ何もないところを見ると、もう、そのことを気にかけずとも良いのだろうと思う。


そして、すったもんだの末に俺は学校で生徒たちに剣を教え<水の日>には姫様の家庭教師をしている。


「じゃ、今日は課外授業だな」


「父上に知られれば打ち首ものじゃぞ」


「じゃーそうならないようにしてくれよ」


「ふんっ」


安い酒場での夜は、こうして暮れていくのであった。

何故、エリンとメイドであるレナが暗く人気の無い魔物が多く闊歩するであろう夜の森に居たかということについては俺も詳しくは未だに教えてもらってはいない。




ありがとうございました。

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