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ちるはなふるゆき  作者: 捨石凞
プロローグ 散ってしまった花たち
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先生、職務怠慢は良くないと思います!

 セツがイナジュンとガミガミ言い合っていたと思ったら、セツと目があった。

「ごめんね、また放り出しちゃって。今更こいつの性格に関して何言っても仕方ないって分かってるのにね。さてと」

 セツが話を中断したことにイナジュンはまだ納得のいってない顔をしていたが、これ以上話を広げるつもりもないようだ。

「恭也はここの学校についてはどのくらいまで聞いてる?」

「えーと、一応授業は出ても出なくてもいいことと、テスト形式のものは必ず受けろってこと……ぐらいかな」

 僕の話を聞いて、イナジュンがえっ、と驚いた顔をする。

「うっわ、それしか教えてねぇのか。相変わらず、ササモっちゃんはいい加減だな」

「あはは……確かにそうね」

 セツも心なしか呆れた顔をしている。先生、生徒に呆れられるってどれだけ適当なんだろうか……

「うん、ならこの学院について僕から一通り説明したほうがいいかな?」

 カケル君が、いやカケルが学校について詳しく教えてくれるというのでもちろんと答えた。

 カケル達の話によれば、まず授業に関しては教師が生徒に教えていくスタイルではなく、自主的に勉強させるという意味で基本的に教師が生徒に教えるということはしないようだ。代わりとして監視役の先生がたまに来るらしいが、あまりにも勉強とかけ離れていることをしている人に注意するくらいで、何か質問したりしない限りは様子を見るだけのようだ。

 これでテストはどうするのかというと、テスト範囲に関しては事前に通達があるようで、テスト期間までに他の生徒達と協力したり、職員室に行って先生に聞くなどして対策していくようだ。

 正直そんなズボラな制度で大丈夫なのかと思うところだが、不思議と散々な点数を取った人はこれまで一人も出ていないらしい。まあこの学園に来ている人は、決して頭が悪くてここに来てしまったわけではない人がほとんどなので、元々学力に関してだけで言えば何の問題もなかったのだろう。問題があるのは生活面や人間関係、それか家庭環境に事情があるなどのところだろう。

 それと人数の少なさも、このシステムをうまく成り立たせているのだろう。 一般的に学校の一クラスは40人程度であるが、このクラスはその半分もいない。 だからこそ一人ひとりの様子を事細かに知ることができるのだろう。まあ、それが息苦しく感じる人もいるとは思うが、僕個人に関してはこのシステムはいいと思っている。

 僕自身友達がいなかったわけではないが、そんなに多くもなかったため、こんな一時間足らずの内に気さくに話すことのできる友人が出来たことは素直に嬉しい。これも、この少人数システムによる恩恵だと思う。

 昼食に関しては一応一階に食堂があるらしいが、弁当を持ってきても構わないとのことだ。

 毎日の授業の終わりには朝と同じようにホームルームみたいのを行い、それでサヨナラらしい。

 これが1日のサイクルなのだが、この辺のこと先生はほとんど言ってなかったな。イナジュン達が愚痴りたくのも分かる。

 でもおかげで、学校のことがようやく理解できてきた気がする。カケルにありがとうと伝えて、僕も勉強しようかなと思っていた。しかし、

「えーと、みんな勉強しないの?」

 非難するような口調にならないように気をつけながら訊くと……

「しないな!」

「テストが近くなったら、かな?」

 イナジュンとセツはなんともアレな答えを返してくれた。いや、マジかよ……

 すると、カケルは二人のフォローをするように答えてくれた。

「僕は毎日欠かさずしてるんだが、今日は恭也君と話すことを優先した方がいいかなと思って」

「あ……僕を気づかってくれてたのか。余計なこと言っちゃったね」

「いいんだ。それに、こいつらに関しては毎日こんな調子だから困ってるんだけど」

「あー、やっぱりそうなんだ」

 僕がカケルの言葉に納得していると、すかさず二人が反論してきた。

「何言ってんだカケル! 俺だっていつもさぼってるわけじゃねぇよ! というか恭也、やっぱりってなんだよ!」

「そうよ、まるで人をナマケモノみたいに言ってくれちゃって」

「だが、事実だろ?」

「「……」」

二人ともカケルの言葉に何も言えずにいた。じゃあ、事実だな。


 そんな感じで、その後もいい感じで話が弾んでいった。もちろん、勉強そっちのけで。




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