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ちるはなふるゆき  作者: 捨石凞
プロローグ 散ってしまった花たち
3/35

天使に出会えたよ(男)

 僕はこれから先うまくやっていけてるか不安になっていたとき、「なあなあ」と彼女の反対側から声をかけられた。

「彼女はこのクラスじゃ特に他人と関わりを持とうとしない人だから、冷たくあしらわれても仕方ないよ。だから、そんな落ち込む必要はないんだぜ」

「え……あ、うん?」

「おっと、いきなり話しかけてびっくりしたか? でも基本うちの学校の奴らはそこまで冷たくする奴はいないから安心しろよ、な?」

 なんということでしょう。

 一人目のゴスロリ少女とは180度違う対応をするこの少年。少々馴れ馴れしいところはあるが、今の僕にはとてもありがたかった。

 まさに……神!、は言いすぎか。

「うん……ありがとう」

 あまりにも嬉しかったせいで少々涙声になってしまっている、気をつけなければ……

「それで……えと、君は?」

 自分のことを紹介してないことに気づいたのか、目の前の少年はそうだったとおどけるように自己紹介した。

「俺は稲葉順太、気軽にイナジュンって呼んでくれよ」

「イ……イナジュンね。 うん、分かった」

「ハハ、そんな固くならなくたっていいんだぜ、取って食ったりしないからさ」

「え?」

「順太、君のそういう態度が彼を一番困らせていると思うんだが」

 順太、いやイナジュンのさらに隣に座っていた男子の発言のようだ。

「すまないな。こいつは初対面の人間でも平気で馴れ馴れしくするところがあるんだ。いつも僕が注意をしているんだが、人の話などまったく聞かんやつで……」

「いや、そんなこと! 僕にとっては嬉しいくらいだったから全然気にしてないよ」

「おい、カケル。恭也だって構わないって言ってるんだから、別にいいじゃねぇか。お前だっていつもネチネチと人の悪口ばっかり言いやがって」

「僕は悪口を言っているつもりはない。 正論を言っているだけさ」

「なんだと」

「いや……あの二人とも」

 僕が、いきなり始まった二人のいさかいを止めようとあたふたしていたら、後ろから女の子に声をかけられた。

 もちろん、あのゴスロリ少女ではない。

「あー、いいのよ。あの二人いつもあんな感じで痴話ゲンカしてるから。放っときゃすぐに終わるから気にしなくていいよ」

「あ、あぁ、そうなんだ」

「あと私はこの二人の世話係を任されてるだけで、そこまで仲が良いわけじゃないから」

 この女の子が、僕に二人との関係を語っているとイナジュンが反応した。

「あー、なんだよその言い方。それじゃまるで俺がお前にいつも世話されてるみたいじゃねぇか」

「みたいじゃなくて実際に世話かけてるじゃないの、このアホンダラ」

 ボカっ、と結構痛そうな音がイナジュンの側頭部から響いた。実際、イナジュンは大分痛そうな顔をしている。

「痛っ、まったく暴力女め……」

「あぁん?」

「ナンデモナイデス、お嬢様」

「フン」

 イナジュン弱ぇと思っていたら、今度はカケルと呼ばれた男子が反抗していた。

「僕はこいつに振り回されてるだけで、特に迷惑なんか……」

「その振り回されてるときに、一緒になって面倒起こしてるじゃない!」

「う……それは」

「……えーと」

 このやり取りを見てなんとなく、この三人の力関係が見えてしまった。

 まあ、分かりやすいことこの上ないのだが……

「あ、ごめんね放っちゃって。私は高森瀬津、セツでいいよ」

「はい、セツさん」

「さん付けはいいよ、なんかむず痒くなるから」

「あ……えーと、セツ」

「うん、バッチグー」

「僕もまだ紹介してなかったね。 僕は高坂駆、セツと同じように僕もカケルって呼んでいいからね」

「ありがとう、カケル」

 イナジュンとは違い、この二人は普通な感じがする。だけど、この学校に来ているからにはそれなりにキツイことがあったのだろう。その辺りの話はまた仲良くなったときに聞いてみよう。

「それで、ええとみんなは……」

「うん、何?」

 僕がちょっと躊躇った言い方をしていたら、カケルが助け舟を出してくれた。

「たぶん年齢のことを聞きたいんだろう。一応みんな二年だけど、茅野君は?」

「あ、僕もそうだよ」

「そうか、ならみんな同じ学年だし、そんな肩肘とか張らなくて大丈夫だよ」

「うん、ありがとう」

 カケルに指摘されてちょっとドキッとしてしまう、まだ固さが取れてなかったかな……

「それでなんだけど、君のことはなんて呼べばいいかな?」

 セツから呼び名について聞かれた。普通に恭也でいいよと言おうとしたら……

「恭也でいいじゃん。呼びやすいし、な?」

 イナジュンに先に言われてしまった、この男は……

「全くあんたは……私もそう呼んでいいかな?」

「もちろんいいよ。そんな気楽な感じで呼んでくれると嬉しいな」

「はっはっは、なに辛気臭いこと言ってんだ。俺たちの仲じゃないか」

 バンバン、と僕の背中を叩くイナジュン。

 本当に馴れ馴れしい奴だなと思ったが、さっきのやり取りを見て気を使っているのかもと思うと、それはそれでありがたい。

「あんたは本当に馴れ馴れしいね。はっきり言ってウザいよ?」

「う、うるせぇな。別にいいだろうが」

 ……どうやらこんな僕でもこの学校では友達を作ることが出来そうだ。




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