愛することは罪ですか?
久しぶりの投稿です。
最近伸び伸びの投稿ですいません。
家に帰り部屋でごろごろしていても、頭の中は柳さんのあの表情で占められていた。 本当にあの学校にいる人達は、一癖も二癖もある人ばかりだな。
僕もそんな人たちの一人として数えられているんだと思うと、なんとも違和感がある。 僕は彼女たちほど辛い目にあった記憶がない。 確かに人並みに辛いこともあったし、周囲の人を巻き込んでしまった負い目も感じてはいるが、本来の自分を押し込めてしまうほどのものではない。
そんな人たちの心に触れるのは、普遍的な生活を過ごしてきた人にはまず出来ないだろう。 だからといって、僕にできるのかと言われると無理じゃないかなと答えるだろう。 下手に触れようとすれば、激しく拒絶してくるだろうと容易に予想がつく。
分かりやすい反応をする人が小森さんで、いまいちわかりにくい例が柳さんだ。 だが、今まで分かりにくい反応をしてきた柳さんが今日、明確に拒絶反応を示した。 柳さんの心にわずかながらも触れたからだろう。
しかし、まだ彼女は僕に心を開いてはいない。 彼女の話を聞くには、もっと長い時間が必要だと思う。 だから、今は後回しにしよう。
今、僕が接しないといけない人間は……
小森さんだ。 僕の好みとかそういうので決めたのではなく、彼女をこの先放っておいてしまうとよくない気がする、要は僕の直感だ。
ただ、どうすればいいのだろう? 僕が何を話したとしても、彼女の心には響かないだろうという確信だけが持ててしまう。 それでも放っておくわけにはいかないのだ。
なんだかイライラしてきた、なんでこんなに僕は頭を悩ませているんだろう。
僕はなんとなく、隣の部屋にいる優羽に話を聞いて欲しくて、気づいたときにはノックして扉を開けていた。
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
僕は何も言わず、そのまま流れるような動作で後ろから優羽に抱きついた。
「えっ、なに? 急にそんな……お兄ちゃん?」
「……疲れちゃったよ、優羽」
僕のつぶやきになんとなく理解したのか、優羽はされるがままになっていた。
「何かあったの?」
抱きつかれたままの体勢で、優羽は聞く。
「友達になりたい人がいるんだ。 でも、その人は心を閉ざしちゃっててさ。 色々やってみたんだけど、どうしても駄目だった」
「そう……なんだ」
優羽が何を考えているか、僕にはよく分かっていない。 でも優羽は、他の人にない安心感を常に与えてくれた。 この家で唯一安らげる場所が優羽の近くだったから、僕は優羽に頼りきりになっているかもしれない。
「大丈夫だよ」
優羽は、僕を安心させようとしているのか、なんの根拠もない言葉をかける。 分かっているんだ、それでも少しぐらい他人に甘えることがあってもいいじゃないか。 誰に聞かせるわけでもなく、言い訳がましい言い訳を述べてしまう。
「本当に?」
「うん、時間はかかるかもしれないけど、根気強く接していけば心を開かない人はいないって私は思うな」
なるほど、そういう考えもあるか。 僕はあくまで僕の主観でしかその人を見ることはできない。 だから、本当は彼女たちが何を考えているのか、本人たちが言わない限り分かることはない。 即物的に目的を果たそうとしてはダメだ、とにかく地道にやっていこう。
「ありがとう優羽、やっぱり優羽はすごいね」
「凄くなんかないよ、私は思ったことを言っただけだから」
「それでも正確な指摘をしてくれた、僕には決して出せなかったものを。 だから優羽はすごいんだよ」
「お兄ちゃん、そんな褒めてもなにも出てこないよ」
「いいよ、僕はもう十分に優羽からもらってるから」
「? そうなの」
「うん」
しばらく、僕は妹に抱きついたままの時間を過ごした。 心なしかいい匂いがする、なんか変な気分になってきた、これはマズい。
「お兄ちゃん、どうかした?」
「へ? な、なんで?」
このタイミングで言われてしまったせいか、すごい変な声が出てしまった。
「なんか変な動きしてるから」
「そ、そんなことないよ! ありがとう優羽、僕そろそろ行くね!」
「う、うん……?」
僕は慌てて優羽の部屋を飛び出すように出て行き、自分の部屋のベッドに飛び込んでいった。
あ、あぶなかった〜 妹相手に発情してしまっていた…… いくら弱っていたからってさすがにそれは駄目だろう。 とはいえ、ひどいごまかし方だったな。 いや、あれは全くごまかせていなかった気もする。 あ〜どうしよう、明日優羽になんで顔見せればいいんだ。
軽くパニックになっていた僕はふぅ、とゆっくり深呼吸して気分を落ち着かせる。 これで精神的なものは落ちつかせられたが、身体は正直なものでそれを落ち着かせているうちに僕は深い眠りへと落ちていった。
ちなみに、朝になったら僕も優羽も別れ際のぎこちなさは無くなっていて、いつも通りの状態に戻っていた。