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ちるはなふるゆき  作者: 捨石凞
第1章 心のないマリオネット
22/35

誰がために

遅くなって申し訳ありません。

続き投稿します。

 ドアの前で家の人が出てくるのを待つが、いくら経ってもなんの反応もなかった。仕方なく、僕はもう一度インターホンを押す。少し待ってようやく反応が表れる。

「……はい」

 ややくぐもった声が聞こえてきた。小森さん本人だろうか? 家族構成を把握してない僕には、これだけでは本人だと特定できない。

「突然すいません。僕は美咲さんと同じクラスの者なんですが、美咲さんはいらっしゃいますか?」

 なんともぎこちない敬語を使って話す。少し間が空いたのち、反応が返ってきた。

「何しに来たの?」

 どうやら本人だったようだ。

「お見舞いだよ、学校来てないみたいだから」

「どうして私が学校に来ないのか、分からないの?」

「……分かってる、つもりだよ」

「分かってないわ。でなければ、ここに来ようなんて思わないもの」

 この前のことを言っているのかな? だが、ここで引き下がるわけにはいかない。

「このまま、ずっと来ないつもりなの?」

「あなたには関係ない」

「関係あるさ、今回君が来なくなったのは僕のせいなんだから。それに、僕に言いたいことがあるんじゃないの?」

「そんなものないわ」

「そうなの? 昨日セツたちがここを訪ねた時に僕がいるかどうか聞いたみたいじゃないか。それって僕に何か話したいことがあるからじゃないの?」

「昨日来た人たちが話したのね。だったら一言だけ言わせてもらうわ。これ以上私に関わらないで」

「……」

 ここまで、かな。前は焦った結果拗れてしまった、今回も焦ったら同じことになるだろう。長期戦になりそうだが、それでも失敗するわけにはいかない。

「分かった、とりあえず今日のところは帰るよ。また、明日も来るから」

「来るなって言ってるでしょ」

「それじゃ」

 僕は強引に会話を断ち切って、彼女の家から離れた。

 

 ……あの様子では、いつ心を開いてくれるか分からないな。まずは拒絶されてる状態から、話を聞いてくれるところまで持っていかないとな。僕ははぁ、とため息をついて今後の展開に不安を感じながら家路についた。



「それで、どうだったの恭也」

 登校して早々、セツが僕に状況の報告を迫ってきた。

「駄目だったよ、門前払いされた」

「そう、恭也でも駄目か……」

「むしろ僕の方が、入れてくれる可能性がなかったと思うよ」

「それでも彼女はちょっとだけあなたと話していたんでしょ? そうじゃなきゃ、こんな風にこじれることもなかったんだから」

「そうなんだけどね。とにかく彼女が心を開いてくれるまで何度でも行くしかないかなって」

「そう、長くなりそうだね」

「僕も、彼女のことは放っておけないから」

 僕の言葉に、セツは少し迷う様子を見せた末にこう聞いてきた。

「それは同じクラスの人間として? それとも別の理由?」

 僕は少しの間考えて、

「僕はただ、せっかく出会ったクラスメートを失いたくないだけだよ」

「……そう」

 僕の答えに曖昧に頷くセツ。どうやらこの答えは彼女にとって満足のいくものではなかったようだ。でも、今の僕はそう答えるしかない。まだ彼女とは何一つ始まっていないのだから……


 放課後になり、今日も小森さんの家に来ていた。

 ピンポンと鳴らすが反応がない、出ないつもりなのだろうか。もう一度ピンポンと鳴らすが、やはり反応がない。出かけているのかもと考えたが、学校を休んでどこかに行くという考えが彼女にあるとも思えない。三度、ピンポンと鳴らす。さすがに迷惑だからこれ以上は帰ろうと背を向けたとき、ガチャとドアが開く音がした。ただし、チェーンロックが掛けられていたため、ほんの少しだけだが。

「うるさい、近所迷惑になるでしょ」

「今日も声だけしか聞けないと思ってたのに、会う気になってくれたの」

「私だって会うつもりなんてなかったわ。でも、あなたはどうせ今後も来るつもりでしょう?」

「そのつもりだよ」

「はぁ……」

 彼女は面倒くさそうにため息を吐く。

「どうしたら家にまで押しかけて来なくなるの?」

「君が学校に来るまでさ」

「あんまりしつこいと警察呼ぶけど」

「今の僕は、学校に来ないクラスメートを心配して見舞いに来ている同級生でしかないよ。だから呼ばれても警察の人が困るだけだよ」

「そうやって私を困らせて楽しんでるの?」

「困らせてるんじゃない、僕は君と友人になりたいだけなんだよ」

「それが迷惑だって何度も言ってるじゃない。どうして分かってくれないの?」

「本当にそうだったら、どうして学校にずっと来ていたの? 僕はどうしても君の言動と行動が噛み合ってないように感じるんだ」

「それは……」

 これまで拒絶の態度をとっていた彼女が少しだけ言いよどむ。ここに、彼女の心を開く鍵があるはすだ。

 だが焦ってはいけない、慎重に慎重を重ねていくつもりでないとまたしくじってしまうから。

「答えられないなら無理に答えなくてもいい。もし、君が僕に言えないことだったらもうここには来ない、でもこれだけは言っておきたい」

 僕はすこしためて、今日言いたかったことを言う。


「君が僕たちのクラスメートである限り、君は一人なんかじゃないから」


「今日はそれだけ言っておきたかったんだ。でも、僕が来るのがそんなに嫌ならもうここには来ないよ。それは約束する」

「……」

 小森さんは何の反応も返さない。姿がよく見えないから、どんな顔をしているのかも確認できない。

「それじゃあ、小森さん。次会うときは、学校で会えると嬉しいかな」

 僕は彼女の返事も待たずに、この場を去ることにした。


 今の僕にできることはもうこれ以上ないな。

 これで良かったのだろうか。

 彼女は学校に来てくれるだろうか。

 全ては彼女次第……か。

「無責任だな……僕ってやつは」

 僕はかぶりを振って家に帰る。

 僕にとって考えられる最高の未来が来るのを期待して。



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