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ちるはなふるゆき  作者: 捨石凞
プロローグ 散ってしまった花たち
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ミッション、ゴスロリ少女と仲良くしよう

 第一印象としてまず驚いたのは、教室の景観である。

 何というか本当に教室なんだろうかと疑いたくなる程、教室っぽくないのだ。 幼稚園にありそうな遊具が置いてあったり、後ろの方にはパソコン(デスク型が一台、ノートが三台)があり、その他にも教室には普通置いてないような物が点在しているためになんともカオスな空間と化していた。

 そしてもう一つ驚いたことは、クラスの人間である。

 制服などは特にないようで、私服も可とあったのでまあある程度個性的だろうなと思っていたのだが、その僕の予想を斜め上いくくらいこれもカオスだった。

 ゴスロリ風の衣装を着ている者、髪型がモヒカン、両腕に包帯を巻いている、ボロボロの服を着ている、園児服を着ているなど、まあよくよくこんなごっちゃりとしたものになったなとつい感心してしまうくらいまとまりがない。

 そんな感じで圧倒されていた僕に笹森先生が、「茅野君?」と呼ばれてようやく我に帰った。

「ええと、ここに転入して来ました、茅野恭也です。少し精神的に危ない部分がありますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。これからよろしくお願いします」

 うむ、我ながら素晴らしい事故紹介だ、おっと間違えた自己紹介だ。

 それなのに目の前の奴らは、パチパチパチと義務程度の拍手しかしなかった。 なんて奴らだ、グレてやろうか。

「それじゃあ席だけれど、空いてる所いくつかあるから適当に座って」

 え、ええー、なんすか、そりゃ。いくらなんでも適当すぎませんか先生?

 とは言え、最初に先生が言っていたようにほとんど学校に来ていない人がいるため、常に空席が生じているせいもあるのだろう。

 僕は左のほうにある一番後ろの席に座った。

 なんとなくで選んだのだが、隣の人のことを全く考えないで決めてしまったので、それがゴスロリの格好をした女子であることなどもちろん忘れていた。

 いきなりピンチでござる、とにかく声をかけなければ。とりあえず、無難に挨拶をするところから始めてみた。

「えーと、よろしくね」

 ニコッ、と僕は人当たりの良さそうな笑顔を見せる。

「………」

 がーん、無視。やはり普段そんな顔しないから気味悪く感じたのだろうか。 と思ったが、よく見ておかないと分からない程度に頷きを返していた。

 うーん、やりずらそう。

 まだ授業も始まっていない段階なのに、早くもこの学校に馴染めるかどうか不安になってしまった。



 授業といっても、説明があったようにこのクラスはみんながみんな同じ授業を受けるわけではなく、同じ年齢の子たちがグループとなって細々とした学習を行っている所もあれば、上級生が下級生の勉強を教えている所もあった。そして肝心の僕はといえば……

「………」

 何故か隣のゴスロリ少女の勉強を教えることになってしまった。それを決めたのは他でもない担任である笹森先生である。

 先生からの情報によると、この子の名前は小森美咲という。歳は僕より一つ下であるため、僕の後輩にあたるらしい(学校にいた年数的には彼女の方が一応先輩だけど)。

 詳しい事情などはプライベートに関わることなのでこれ以上は言えないと言われたが、学校での様子については基本一人で過ごしており、誰とも仲良くしようとしないらしい。

 だけどまだ学校に来ているため、うまく馴染める可能性はある……らしいのだが。

 今現在、彼女はクラスの人間とはだれも口をきかない状態であるため、隣に座った僕にもしかしたらということで任せた次第である。

 だが、誰とも仲良くしない時点で既にアウトだと僕は思うのだが……

 そもそも僕は人にものを教えられるほど頭はよろしくはないし、人とコミュニケーションをとることだって苦手なのだ。

 なんでこんな役を僕に押しつけるんだと不満たらたらだったが、とにかく会話をしないとと思い、彼女に声をかけることにした。

「えーと、小森さん」

「………」

「一応僕のことはさっき自己紹介したから知ってるよね。だけど僕は君のことはよく知らないんだ。だから、君も自己紹介してくれると嬉しいんだけど……」

「……どうして?」

 おお、喋った。

 いやいや、それだけで感動するなんてどれだけハードルが低いんだよ、ここから会話を繋げていこう。

「うーん、一応こうして同じクラスになったことだし、クラスメイトと仲良くなりたいなーって」

「……別に私は仲良くなりたいとは思ってないわ」

 うわー、二言目でもう拒絶された、正直泣きたいっす……

「あなたも本心からそう思ってるわけではないでしょう?」

「いやー、そんな事はないんだけどなー」

「そう、でも私はそんな気はないから。勉強も教えてもらう必要はないわ」

「どうして? そのために学校来てるんじゃ…」

「………」

 どうやらこれ以上話す気はないようだ。

 しかし参ったな、これは想像してた以上にキツい。

 まさか、最初に話しかけたクラスメイトにここまで冷たくあしらわれるなんて。

 僕の学校生活は、早くも危機に直面していた……



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