88 カッツェ
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
次の日,ほとんどの者達がそれぞれの町に帰っていった。家族持ちの人達は,いったん家族の元に戻ってからの出発だ。家族の皆さんは洗脳されてないと良いけどね。
「大丈夫じゃ。持たせた飲み物のなかに,悪を浄化させる成分を混ぜてある。」
「こういう仕事はウサミさんだよね。」
「そういうこと。」
あたし達はもう誰はばかることなく食堂で話をしている。食堂には,私達とブラウと戻ってきたウサミさんしかいない。
ウィン達は,王の執務室を整理して,使えるようにしているところだ。彼らにも,念のため,守りをこめたグッズをウサミさんが持たせている・・・警備の者達は15人ほどだった。15人を指揮していろんな事を伝達しているグローサーにも守りはしっかり付けてある。元からいる警備の者も会わせて50人ほどになった警備隊は,ちゃんとグローサーに従っているね?王子の腹心の部下だからねえ・・・うんうん・・・
まだ,それぞれの町までの移動期間は私達の出番はない。だから,町にパトロールに出るという5~6人ほどの一隊に私達はくっついていくことになっている。カッツェを探すためだ。ほんとに連絡も寄越さないで全く・・・
城を出て,隊を組んで進んでいく。私達は一番最後に二人で並んで歩いている。
辺りをきょろきょろ・・・王城が奪還されたことは,夕べのうちにふれがでている。心なしか町の人の表情も明るい?どうかな?
町の人の声をそっと拾う・・・
「王が城に戻ったそうだぜ。」
「やっぱり王はいなかったのか。」
「宰相はどうしたんだ?」
「行方不明なんじゃないか?」
「誰が支配者でもあんまかわんねえ・・・」
「そんなことはないぞ・・・」
おや。あそこを歩いているのは・・・一緒に馬車に乗ってきた親子連れ。文官の試験の途中で家に帰るんだ。逆に言えば,登用されて帰るんだから,少しは嬉しそうでも良いのにな。浮かない顔だね。
「どうしても地方に帰るの?」
「ここが便利で良いのに。」
「仕方あるまい。登用されて,自分の町をきちんとしろとの仰せだ。」
「はあ・・・」
自分の町が嫌いなのかな?
・・・・・
「おい。あいつ。」
え?
スシュが言う方向に,見慣れた赤い猫・・・
女の子の腕の中だ。
『カッツェ?』
『ユウミ・・』
『おまえ何してるんだ?』
『・・・・・』
カッツェはぴょんと女の子の腕から抜け出した。
「あ。レイ。どこに行くの?」
にゃ~~
レイって呼ばれてるのか・・・何ヶ月ぶりかで見るカッツェは毛づやもよく,元気そうだった。
『どうしたの?』
にゃ~~~
おかしい。にゃ~としか言わないなんて。
私は,手を伸ばした。ぴょんと跳んで私の肩に乗る。女の子はびっくりして私を見ている。
「ごめんね。この猫。僕のモノなんだ。君が今まで見ていてくれたの?」
女の子は,目に一杯涙を溜めて私を見る・・・え・・・まずい?
スシュは?あれ。隊長になんか言ってる・・・
誰か助けて~~~って気分。
「その子森に倒れてたんです。」
「え?森?」
「血まみれで・・・あたし一生懸命世話したんです。」
「・・・血まみれって・・?」
「ご飯あげて・・・薬塗って・・・」
「あ・・あの・・・森ってどこに?」
「なんですぐにレイがそっちに行っちゃうの?あたしがイヤなの?」
「あ・・」
「酷いわ。あんなにかわいがってあげたのに!!!」
・・・・
この子一人で完結してるから・・・何を言っても通じないんだ。
スシュが前に出てきてくれた。
「ねえ君。」
女の子はきっと私達をにらみつけ,
「この子はあたしが命を助けたんだからあたしのモノよ。」
っていってのけたんだけど・・・
何があったの?




