77 それから・・・
「おい。起きろ。」
「ほえ?」
目を開けたらスシュの綺麗な顔が目の前にあった。
「何よ。乙女の顔をのぞき込むなんて。」
スシュは私をぞろりと見て離れていきながら,
「その乙女だ。王が夕べおまえのことを女の子だと見破っていただろう?」
あたしは起き上がって伸びをしながら,
「え?あれって気が付いて言った言葉だったの?」
「ローティ達も焦っていた。あの王は一つ目巨人でいる間に,何らかの能力を得たのではないかという話だ。」
あたしは着替えを始めた。もうスシュの前で着替えても恥ずかしさを感じなくなっている。だって男の体だもんね。
「おまえ・・絶対他の男どもの前で上半身脱ぐなよ。」
目をそらしながらスシュが言う。
「え?何で?」
「おまえの胸は,普通の男の胸と何となく違っているんだ。柔らかそうな感じがする。」
・・・
は?
「そんなによく観察しないでよっ!!」
「違う!!!ちらっと見えた時、真っ白だったからだ!!!」
・・・
日焼けサロンにでも行こうか・・・
「色までは考えなかったなあ・・・でも,あの王は,胸を見た訳じゃないよ。」
「だからさ。分からねえうちに,女っぽさが出てるのかもしれねえだろう?」
思ってもいなかったなあ・・・確かに近頃油断していたかも・・・
「ありがとう。油断していたかもしれないね。」
がさがさ着替えながら御礼を一応言う。
「ああ。着替え終わったか?」
「うん。」
スシュはこっちを向いた。じろじろ観察している。
「ひげか?」
「え?ひげ?」
「おまえひげがねえ。」
・・・
「スシュだってないじゃない?
「俺は剃ってる。」
えええええ~~~~初めて聞いた。あたしはスシュの顔に近づいた。そう言えば,点々と・・・
「私もひげを生やせば良いのかな?」
・・・・・
連れだって部屋を出た。いつものようにさりげなくローティ達が待っている。
『おはよう。』
『おはよう。』
『私って女っぽい?』
『何だ?藪から棒に?』
すっかり砕けたボルフ先生が言う。
『夕べ王に女の子って言われたからさ・・・』
ああ・・・二人とも頷いた。
『あの王は人を見る目を持っていそうだな。』
『人を見る目?』
『王だからというだけではなく・・・ウィンのことも一目で分かっただろう?』
『子どもだもん。分かるんじゃないの?』
『いや。ウィンと王はほとんど赤ん坊と言って良いくらい昔に別れたはずだ。そのときの面影なんてあまりないはずだぞ。』
ローティの言葉に私達はなるほど・・と頷いた。
『あの力を使えば,種を植えられた者はもちろん,ドンケハイツ・・姿を隠しているドンケハイツそのもののことも見破れそうじゃ。』
私はウ~ンと考え込んだ・・・
『龍の力をもってしても・・・ドンケハイツってどんな者でどこにいて・・・何を企んでいるのか・・・』
『そうじゃな。はっきりとは分からぬが,』
ローティの言葉を拾ってスシュが続けた・・・
『王なら分かるんじゃないかと?』
ちょうどそこでウィンとヴェッターが出てきたので話は終わった・・
『考えてみる価値はありそうだね?』
『ああ。』
食堂では,ブラウの他に,王が立ち働いているのがよく見えた。王は危なっかしげに定食を運んでいる・・・ウィンとヴェッターが痛ましげにそれを見ているから,
「そんなに見るもんじゃないよ。」
小さい声で教えてやった。二人は慌てて居住まいを正し,おとなしく朝食を取り始めた。今朝は静かだね?
「今日はおまえの試合の日だろう?」
・・・
「あ・・・忘れてた。」
「のんきだな?」
「ははは・・・」
仕方なしに笑ってみせる私・・
「おまえの対戦相手があそこにいるぞ。こっちをずっと見てる。」
ウィンに言われて目を上げると・・・これまたでっかい男だね。グローサーより小さいけど大きい。どうしたら良いの?
「あれ。ヴェッターとこの前対戦した人じゃないの?」
思い出して聞いたら,
「ああ。あいつは左が弱いぞ。」
って教えてくれた。左ねえ・・・こんな事聞いても私はまともに打ち合う訳じゃないからねえ・・・ごめんよ。対戦した人達・・
次回は11日の予定です。
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