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むかつくあいつは・・・・・  作者:
第1章 出会い
7/100

7 先生方・・

翌朝は,ちゃんと迎えに来てくれたフローとタップと一緒に,私は朝食に行った。

 朝食は,パンケーキみたいな物に,ジャムやクリームがたっぷり付いて出てきたから,うれしくなっちゃった。果物や野菜も自分が好きなだけとれるようになっている。やったね。


 私がいつものように朝からもりもり食べていると,タップがうらやましそうに言ったわ。

「いいな。そんなに食べれて。」

 思わず,え?と思ってしまった。不思議。食べたけりゃ食べればいいのにね。

「タップも食べればいいじゃないの?」

そう言ったら,

「だって。太るわ。」

とタップが答えたので・・・え?太るって・・・ちょっとびっくりしちゃった。太ってなんかいないよね。

「それだけじゃないわよね。」

とフローが続けていった。

「意地汚く,沢山食べる子だなって好きな子に思われたくないのよね。」


 ぱくぱく食べながら,私はへえ~と思った。私意地汚い?ふん。

 どうでもいいじゃないの。誰が見ていようが。私は私。食べようが食べまいがそんなので,私という人間に変わりはないんだから。

 そうよ。まあ。あなたたちが食べようがどうしようが・・・正直どうでもいいか。

・・・もちろん私は声には出さなかった。せっかく芽生えそうな友情に最初から亀裂を入れたくないもんね。


 食べ終わって,いったん部屋に帰り,必要な物をバックに詰める。この学園は制服はないので,部屋着から私服に着替えるんだけど。ティガーノさんから持たされた物にはワンピースが多かったんだ。組み合わせをいちいち考えなくてもいいので楽だわ。

 初夏にふさわしい,半袖の空色のワンピースを選んで着込むと,もう外出出来る格好になった。紺のソックスとこの世界では当たり前だという白い編み上げ靴を履くと・・完成だ。

 うん。服が新しいと気分もいいかも。


 部屋を出ると,ちょうど両方の部屋からも出てくるところだった。二人とも私と同じような編み上げ靴を履いているから,ちょっと安心した。

 タップは私と同じようにワンピース姿。フローは短めのスパッツに上はチェニックのような上着を着ていた。どちらも鮮やかな色合いだ。う~ん。私なら決して着ないだろうなあ。そんな勇気ないもん。


 3人で連れだって歩いて行く。

 寮から出ると,左右は花壇だった。こんな花私知らないなあ。私の知らない花々が沢山咲いている。色とりどりの綺麗な花。

 不意に家の花壇を思い出して・・ため息をついた。

『考えるな。今はここでなすべきことをする。』

 自分に言い聞かせるんだけど・・やっぱりため息が出てしまう。分からないように胸の中で・・・ため息ふう・・


 歩いていると,あちこちの寮から,沢山の生徒達がぞろぞろと出てきて,校舎に向かって色とりどりの流れを作っていた。

兎耳,猫耳,熊耳・・・あれは?時たま獣人の様相がはっきりしている生徒も混じっているわ。服に切れ目があってそこからしっぽも見えるね。しっぽがある生徒,ない生徒・・・この違いって何だろう。


 私はとりとめもないことを考えながら二人と一緒に歩いていた。時々二人は友だちだろうな,挨拶してる。その時は,私のことも紹介するのを忘れない。凄いな・・この二人,友だちが多いわ。


 この学校は靴のまま入るようで,そのまま廊下に進んでいく。

 どこに行くんだろう?私はきょろきょろ辺りを見回しながら二人と一緒に歩く。


 二人に連れられていったのは,職員室だった。なるほど。確かに転入生なら最初はここだわ。

「ここに連れて行ってくれと,クレバー先生に言われてるの。」

「また後で,教室で会いましょうね。」

二人は,職員室に私を連れてくるよう頼まれていたそうだ。



「じゃあ,また教室でね。」

 廊下で教室に向かう二人の後ろ姿を見ながら,少し心細い思いに襲われていると,不意に後ろから声を掛けられた。


「ユウミさん,夕べはよく眠れたかしら?」

 クレバー先生。私はほっとして応えた。

「クレバー先生。おはようございます。朝食の時はお会いしませんでしたね。」

クレバー先生はにこにこしながら私を職員室の中に招き入れ,

「今朝はいつもより早く来たからよ。」

と言った。


「こっちにいらっしゃい。あなたの担任の先生と,副任の先生を紹介するわ。」

「クレバー先生じゃないんですか?」

 クレバー先生が担任だとばかり思い込んでいたので,ちょっと驚いてしまう。

「残念ながら違うのよ。でも,教室では,フローとタップというあなたのお隣の部屋の子がいるから大丈夫よ。二人ともとってもいい子なの。」


 クレバー先生は,私を熊耳の男性のところに連れて行ってくれた。

「ベアーズ先生,お話にありました,竹尾 ユウミさんをお連れしました。」

ってその先生に紹介した後,私に向き直って,

「ユウミさん,こちらがあなたの担任の先生よ。言語学一般を教えていらっしゃるのよ。」


 ベアーズと呼ばれた熊耳の大きな体の男性は低い声で,

「ユウミさん。これからよろしくね。

 いやあ。会えるのを楽しみにしてたんですよ。

 昨日,受付で,イベリア語も,グリース語,ティガー語も自在に操っていたと聞きましたからね。いやあ。今後も楽しみですわ。」

と言ったので・・・私は内心冷や汗をかいた。

 もう,その3カ国語が話せるか,書けるかも分からないのに。ちょっとティガーノさんの顔を思い浮かべて,心の中で苦情を言っちゃう。


「いいえ。それは・・・その・・・。」

 しどろもどろになっていると,

「ベアーズ先生、ユウミさんが恥ずかしがっていますわ。」

と,クレバー先生が脇から言ってくれた。ああよかった。でも,担任だから・・・うわあ。

「ははは。まあいいでしょう。ボルフ先生,こっちですよ。」

誰かを呼んでいる。ボルフ?誰?


「はい。ベアーズ先生。」


 見ると・・え?・・狼・・・耳だけではない。狼の顔をした獣人が,体操着を着て立ちあがってきた。体格がいい。でも体育着の上からでも,鍛えていそうだと分かっちゃう。

 同じようなのね。体育着ってどこでも・・と思いながら狼顔から目を離そうと努力したんだけど。

 その狼顔の先生はベアーズより少し高めの声で返事をして,私達の方へやってきた。


「ユウミさん。この方は,副任のボルフ先生ですよ。見ておわかりのように,体育を教えています。」

「よろしくおねがいします。」

ユウミはきびきびと挨拶をした。


「じゃあ後は,よろしくお願いしますわね。ユウミさん,また後でね。」

クレバー先生はそう言って離れていったんだ。


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