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むかつくあいつは・・・・・  作者:
第1章 出会い
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6 新しい友だち

 廊下では誰にも会わずに,食堂の前に来た私たちは,ドアの前に立ったんだ。

「行きますよ。」

ウサミさんの声で気を引き締めた私は,

「はい。」

と答えたんだけど,つい,部活の返事をしたので,その声はやけに廊下に響き渡たっちゃった。


・・・・・


「おお,元気な声ですねえ。」

後ろから誰かの声がしたので,振り向いたら,そこには獣人の様相があまりない人が立っていたんだ。

「あなたが,新しく入るユウミさんですね。」

優しげな声のその人は,30代位のめがねを掛けた人だった。

「クレバー先生。こんばんは。」

ウサミさんが挨拶をした。

『クレバー先生というのか。先生と言うことは,この学園の先生なのかな?』

「はじめまして。竹尾 ユウミです。」

「初めまして。私はクレバー・アフェよ。学園では魔術一般を教えているわ。

私はここの寮の監督もしているの。

初めてみんなに会うのよね。さあ一緒に入りましょう。」

やはり。この学園の先生だったのか。寮の監督もしていると言うことは,寮に住んでいると言うことかな。


 ドアを開けるとみんな一斉に口を閉じたようだった。

「「「「「こんばんは,クレバー先生」」」」」

一斉に挨拶をする声がした。

「こんばんは。」

クレバー先生は答えながら,私を前に押し出した。試合前の挨拶・・・

「こちらのお嬢さんが,今夜から皆さんの仲間になる竹尾 ユウミさんですよ。

失礼,竹尾さん?ユウミさん?」

「竹尾 ユウミです。竹尾が姓でユウミが個人の名前です。ユウミと呼んでください。」

私の一言でみんなが一斉に返してきた。

「「「「「よろしくお願いします。」」」」」


「こっちよ。」

 一人の子が立ち上がって私を呼びに来てくれた。席が決まっているのかなあ。

 席に着きながら,私は,辺りをさりげなく見回すことを忘れない。

・・・獣人らしい獣人はほとんどいないみたい。猫耳,熊の耳,狐?・・・大きなしっぽ・・・小さなしっぽ・・・長いしっぽ・・・ジルのしっぽはふさふさしていたな。カッツェのはきじとらだった。不意にしっぽが気になり始めちゃった。クレバー先生のしっぽは?あれ?ない?


「よろしくお願いします。」

 そんなことを考えているとはおくびにも出さず,ちゃんと同じテーブルの子達に挨拶をしたら,みんなもにこにこ挨拶を返してくれたから,安心しちゃう。


「しー」

誰かが言うと・・ざわめきが波のように引いていく。


「ヴーハイトに感謝を」

「「「「ヴーハイトに感謝を」」」」

その言葉が合図だったみたい。いただきますってことかな?でもヴーハイトって・・もいちゃんのこと?


 みんな一斉に食べ始めたから,私も目の前の食べ物をつつき始める。あまり見たこともないような食べ物・・・夕べまでのティガーノ宅で食べていたものは見慣れた物が多かったんだけど・・・もしかしたら,私のために合わせていてくれたのかもしれないね。


おそるおそる食べ始めたんだけど・・まあまあ美味しく感じられる。となれば,私の旺盛な食欲はとどまることを知らないんだ。ぱくぱく食べ進める私に周りの子達は驚いてるみたいに見える。

「心細いかもしれないけれど,仲良くしましょうね。私はフロイン リッヒカイト」

兎耳の子が言うと,

「私はタップ ファーカイトって言うの。よろしくね。」

と熊耳の子が言う。

「私たち,あなたの部屋のお隣なのよ。」

向かって右がフロイン リッヒカイト,左が タップ ファーカイトの部屋だそうだ。


「私たち,クラスも同じなのよ。」

にこにこ笑いながらフロインが言った。

「私のことは,フローとか,フロインでもいいわ。」

「それはうれしいわ。フローでいいかしら。これから分からないところをいろいろ教えてくださいね。」

タップも言った。

「2ヶ月遅れの新入生ですもの。みんな興味津々なのよ。私のことはタップでいいわ。こちらこそ,いろいろ教えてくださいね。」


 ごちそうさまの挨拶をすると,3人で一緒に 部屋に向かったんだけど,部屋の前で,

「明日の朝は一緒に朝食に行きましょう。」

「学園にも一緒に行きましょうね。」

「ありがとう。お休みなさい」

と約束してから部屋に入ったんだ。


部屋に入ったとたん,どっと疲れが出ちゃった。私はのろのろと浴室のドアを開けたんだ。そしたらさ,浴室は明るくて良い香りで満たされていたんだ。あれ?香り?ここの人たちは香りが分からない位でも大丈夫なのになぜ?

・・・もしかしたら?

 1カ月ほどのこの世界のレクチャーの後,いよいよ明日から学園にと言う夕べ,ティガーノさんが私に言った言葉を思い出した。

「今日は,五感が我々と同じになるように魔術を掛けましたよ。そうしないと,不都合が生じるでしょうからね。

 うん。言葉も大丈夫。

 身体能力については,この1ヶ月,我々に合わせて高めるためのお茶を毎日飲んでいただいたので,これも大丈夫。元々,人にしては高い身体能力を持っていたんでしょうな,ユウミさんは。そのおかげか,この1ヶ月で見事に定着しましたから,もう飲まなくても大丈夫ですよ。

・・・でも,このまま飲み続けると,向かうところ敵なしの体にはなれますから,持って行って飲み続けるのもいいでしょう。」


 そのお茶もちゃんと荷物の中に入っている。さらに1ヶ月飲み続けるとどうなるのか興味深いところだ。

それで香りがよく分かるのか。

他にも,なんだか耳が良くなったような気がする。そんなことを考えながら私はゆっくり入浴を楽しんだ。


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