なんか・・やたらに・・
途中で日が暮れて,馬車は一つの町に入ったよ。この街の旅館と提携してるんだってさ。きっと怪しい旅館だよね。
・・・大当たり・・・
ぼろい上に高い。もちろん石ころをつかませたんだけどさ・・・良心が痛むんだけど・・・そう言ったら,スシュに鼻で笑われた。なんてヤツ・・・
「こういう旅館はな,いろいろ違法なことをしてるんだぜ。そうだな。おまえはまず,誘拐に気をつけろ。」
「そうだな。女の子だしな。スシュ,側に張り付いていよ。」
「「ええ?」」
お互いイヤだよ・・・でも,ブラウの真剣さに押されて
「「はい」」
って答えるしかないよね。
夕食は外で・・・これも何だか怪しい雰囲気のお店を紹介されたんだけど・・・高い上にまずい。あんまり清潔でなさそうだね。でも,この町には屋台みたいなものがない・・・食堂も数があるわけじゃなさそうだ。仕方ない・・・ここでも,誘拐が恐いということで,必ず3人でくっついて行動。やれやれ・・・
旅館に戻って部屋に入る。部屋は3人で一つだけど,トイレが部屋の外なんだ。仲の良い振りして手をつないでトイレだよ。なんかやだね。
個室でほっとしてから出ようとしたら・・え?反対側の戸が開いた・・うそ・・・ひげもくじゃらの大男!!!
「きゃ・・」
口を汚い布でふさがれる・・・まずい。もしやこれは誘拐?
・・・
「ばかやろ!!もしかしなくても誘拐だ。!!!」
トイレのドアを蹴破ってスシュが入ってきた。大男は小さいスシュを見て鼻で笑って蹴ろうとしたよ。スシュはもちろんその足を取ってぐるっと回した。
「ぎゃっ」
ボキって音・・・あらら・・・
私はトイレの床に落っこちた。
「いたたたた・・・」
慌てて立ち上がってスシュの方へ。スシュは,大男の腕を取ってあらぬ方向に曲げていた・・・うわ・・見たくない。ぼきっ・・・うわ・・・反対側に曲がってる・・・
騒ぎを聞きつけて,旅館の人がやってきた。
「誘拐犯だ。さっさとこの街の警備員を呼んでこい。」
スシュが偉そうにいったら,顔を引きつらせてる・・
「お・・俺は何もしていねえ。こいつらが急に俺を襲ってきたんだ。」
大男。この期に及んで!!!
・・・ぶちっ
「ぎゃあああああ!!!!」
この世の者とは思えないような悲鳴・・・
「嘘はいけないわ。」
「ちちち・・・」
大男。何が言いたいのだ?悶絶しながら何か言おうとしてるけど・・・それを見た旅館の人が私達を捕まえようとするからつい・・
ぶちっ
「ぎゃああああああ」
そこにブラウがやってきて,惨状を一目見るなりため息をついて・・・記憶操作をし始めた。
・・・大男と旅館の人が争ったように・・・
・・他の,のぞきに来た泊まり客の記憶も操作する・・・
「記憶操作って,ちょっと怖いよねえ・・・」
そう言ったら,スシュはぶつぶつぶつぶつ・・・・こわいのはおまえだ・・・・
何言ってんのさ?
「俺・・・おまえをこれから絶対怒らせねえ・・・」
身震いしてるんだけど・・・私何か悪いことした?
骨を折ってるのは,さすがにまずいだろうって・・ある程度ごまかして(どうやったんだ?) 私達は知らん顔して部屋に戻った。
「ぶちって・・ぶちって・・・」
イシュ五月蠅い。
「国境のヤツと同じ症状だと・・・うむ・・・まずいかな・・・」
ブラウがぶつぶつ言っていた。よろしく・・・
その後,また騒がしくなった。どうやら町の警備の人達が来たみたいだけど・・・もう寝ちゃったから,どうなったのかはよく分からない。
朝起きたら,やたらなよなよした旅館の人がご飯の支度をしていたんだけど・・・なんか不気味かも・・・
「おまえのせいだろ!!!」
?
ご飯を食べて出発だね。馬車の所に行くと,乗る人がさらに増えていたわ。あの狭いところにこんなに乗ったら大変・・・すし詰め・・・押しつぶされてしまうわ・・よく見たら小さい子も5~6人いるじゃないの。むかむかしてきた。
「ユ・・・ミユ,押さえろ。」
はっ。ブラウの声で我に返ったんだけど・・・
「でも・・・このまま全員乗ると,押し潰される人も出てくると思うんだけど。」
「確かに・・・」
乗りたい人は,見たところ馬車の定員だろう数の倍はいる・・・昔見た,どこかの国のバスとか電車みたいにはみ出る人とか,屋根の上に乗せられろ人とかいそうで怖いな・・
『・・そうだ。乗ったら,この馬車を倍の長さにしちゃえば良いんだ?』
『いやいや・・・そうしたらさらに乗せようとするに違いないぞ。』
・・・・・
『2台出させようぜ。』
『それ正解だね。』
『ブラウ?操作できるか?』
・・・・・・
しばしの後,2台の馬車はゆるゆると走り出した。2台目の御者はブラウが変身した姿だよ。なんだ。始めからこうすれば良かった。2台目には家族連れを3組だけ乗せたよ。小さい子がいる家族連れ。ご家族様とご婦人専用と言って,他の人は乗せなかったんだ。向こうは男の人ばっかり。少し窮屈程度だから良いでしょ。
疲れた顔をしている家族連れは,2組は首都にいる親戚を頼っていく人達だったよ。もう一組は,なんと城で行われる登用試験を受けに行くお父さんの応援に,家族皆でやってきた一家だった。
『これは渡りに船だね。』
『おまえ時々訳の分からんことを言うよな。』
・・失礼。
ゆっくり進む馬車の中で,登用試験についていろいろ聞くことが出来た。5年に1度のこの試験は,明後日から行われるんだそうだよ。受験者のために旅館も用意されているらしい。そこにうまく紛れ込んで城に行けないか・・・
「受かったらどうなるんですか?」
私が聞くと,
「その日から採用されて,城に部屋をもらえるんです。」
と奥さんがにこにこしながら言う。
「落ちても,町に帰れば,役に就くことが保障されているんです。」
奥さん。うれしそうだね。落ちた方がうれしいって顔に書いてある。城で暮らすより,町で暮らす方が好きなんだね。
「すごいんですねえ。」
・・・・
「いくつから試験は受けられるんですか?」
スシュが真剣に聞いている。
「20才から25才ですよ。坊ちゃん。坊ちゃんにはまだ早いですよね。」
旦那さんの方が答えてくれる。他の家族も目を丸くして話を聞いているね。こっちのご家族は2組とも,仕事に行き詰まって親戚を頼っていくらしいんだけど・・・首都に入れるのかなあ?
「心配してくれてありがとうね。お嬢ちゃん。大丈夫なんですよ。城の出入りの商人の家を頼っていくんですから。」
って一組の家族が言う。もう一組は,行き当たりばったり計画みたい。大丈夫なのかなあ?
でも,試験に行く家族。家族も宿泊で来る・・・これも良いことを聞いたね。
『俺,後で変身してこの旦那についていこうと思う。』
『いいんじゃない。ブラウはどう思う?』
『良い考えだと思うぞ。ただ,何の試験かが問題だな。』
『この旦那さん,体を鍛えてるってわけじゃなさそうだしねえ。頭脳労働かも・・・スシュ,大丈夫?』
『・・・・・・』




