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むかつくあいつは・・・・・  作者:
第1章 出会い
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5 学園に・・・

学園。そこはとても広い敷地に建っていた。脇には寮も建っているし。

 私は,沢山の獣人と一緒に,ここで勉強することになるんだそうだ。何でこうなったのか本当はまだよく分かっていないけど,とりあえず前向きに考えることにして・・・


 家に帰るためにクリアしなければならないことは2つなんだけど,その2つを達成するためには,それ以上の課題が待っているってことか・・・


はあ・・・



私は,付いてきてくれたカッツェさんと一緒に,受付に手続きに行ったんだ・・


その時,初めて気が付いたんだけど,どうも文字や言葉が,自分の話してるのと人が話しているのでは違うようなんだ。

 というのは,門のところで守衛さんと話した言葉と,手続きの時に事務員の人が話した言葉は違っていたらしくって,カッツェさんに,

「お嬢様は,イベリア語も,グリース語も話せるんですね。今書いてる書類はティガー語ですしね。いくつ位話せるんですか?」

と聞かれてさ。

 私は,自分では日本語を書いたり話したりしているつもりでも,相手にはその人の国の言葉として聞こえていたらしいよ。うれしいと言うより,困惑しちゃう。


「私は,あなたに何語で話しているの?」

書類を事務員に返しながら美優が聞くと,

「いやですねえ。キャッツ語じゃないですか。」

と言う答えだったんだけど。



 その後で,全ての獣人は,共通語であるテア語を話しているのだと教えてもらった。あれえ・・・そういえば,言葉が通じるようにしましたよってこの前ティガーノさんが言ってたっけ・・なぜ獣人に合わせて,いろいろな言葉が話せるのか。それも不思議なことだけどさ・・・


・・・

 このままだと私は,共通語が話せないと言うことになるって気が付いちゃったんだ。

 これは困ることになりそう・・・つまり,一人一人とはコミュニケーションがとれても,大勢と一度にコミュニケーションを取ることが出来ないと言うことになってしまうんだ。

 ティガーノさんが私に施してくれた術には,穴があるみたい。もしかしたら,他にも大きな穴があるのかもしれないよね・・・


・・・


 私は,電話を掛けてどうしたらいいかを聞くことにした。事務室を出て寮に向かいながら電話で話を・・・

「・・・そいつはしまったね。今はまだいいが・・・。今夜の夕食の時とか,明日には学園で皆に紹介されるだろうからね。・・・不審に思われてはいけない。」

 それから,電話の向こうで,誰かを呼んできなさいと言う声が聞こえて・・・しばらくしてから,

「これからジルをやるから,ジルに魔法をかけ直してもらってくれ。」

そう言って通話が切れた。ジルに出来るの?いや。今までの話では,ティガーノさん直々に魔術の手ほどきを受けているというジルだから。出来るんだ・・・ろう?



・・そう。・・・この世界には魔法があったんだ。

 当然,使える者と使えない者がいるんだって。使える者はおおむね高貴な者として様々な場面で重用されていて,獣人の様相をしていない者が多いって言ってた。

 でも,ティガーノさんは虎の様相をしているよね。・・・だから,ますます凄いんだよって,ジルが話していたんだけど。


・・・・


 入寮の手続きをしに行くと,寮の管理人は兎耳をした獣人だった。

「ウサミと呼んでください・」

というその獣人は,

「寮を夜,抜け出さないでくださいね。この耳が聞きつけてすぐ分かってしまいますからね。」

 と楽しそうに言う,陽気な感じの女性だったので安心しちゃった。その人に案内されて寮に入ったんだ。




寮の部屋は広かった・・・それぞれが一部屋ずつもらえるその部屋は,私の部屋の倍以上もあったんだ。

「後で,夕食の時に,お迎えに来ますね。その時,皆さんにも紹介いたします。

そうそう。

用があったらそこにある通信機を使ってください。」

そう言ってウサミさんは戻っていった。


 カッツェさんが,かいがいしく世話をしてくれる。ここに服を・・リネン類をここに・・・・。先に送られてきた『ユウミの物』だという荷物は結構沢山あったんだ。

 学習机やクローゼット,ベッドなどは備え付けの物なんだって。


 でも,やたらと豪華な,かざりテーブルなどはユウミの物だといわれて,私はびっくり。目を見張ってあちこちながめているうちに,お客様がお見えです。と言う通信が入ったよ。

「お通ししてください。」

カッツェさんが答えている。ジルが来たようね。


 ジルは,お菓子を山のように持ってきてくれたんで,うれしくなっちゃった。

「ありがとう。」

「どういたしまして。おじいちゃんだと寮の中に入れないから,ぼくが来たんだよ。僕ならまだ子どもだから,女子寮でも大丈夫なんだ。」

 そう言ってカッツェさんの入れたお茶と,自分の持ってきたお菓子をつまんでいる。私も一緒にお菓子を食べながら,なるほどと思ったわ。


「ただね。いとこには見られたくないんだ。

まあ・・あっちは男子寮だしさ。大丈夫だと思うんだけどさ・・・」


・・・・・あのさ・・・


「いとこはね・・・

おじいちゃんが,言っちゃ駄目だって言ってたけど,どうせ学園内ですぐ会うだろうし,会わなくても評判を聞くだろうからさ。」

カッツェさんが,

「坊ちゃま!!」

と止めようしていたのかな・・でもジルは,

「ちょっとあっちに行って,片付けの続きをしていてくれるとうれしいな。」

なんて言ってカッツェさんを寝室の方に行かせちゃった。確かにあっちの部屋はまだ片付けが終わってないけどね。


「いとこは,おばちゃんがいなくなってからだんだん気むずかしくなってきたんだ。」

「気むずかしい?」

「・・・それでもちゃんと勉強していたみたいなんだけど,去年,15年ぶりに帰ってきたおばちゃんに,凄く反発してさ。早い話,ぐれてしまったようだったんだ。この学園で鼻つまみ者になっているとか・・いないとか・・・。

ぼくはまだこの学園に通える年じゃないからよく分からないけどさ。

おばちゃんが,おつとめでヴーハイト山に入らなくちゃいけなくなったら,ますますひどくなったみたいなんだ。」


・・・・・


「ママが大好きすぎて,反発してるのかな?」


・・・


「まさか。恨んでるかもしれないけどさ。」


・・・・少し空気が重くなった。


「まあいいや。とにかく,術をかけ直させてね。」


・・・・・


「どう?」

「分からないわ。まず誰かで試してみなくちゃ。」

「カッツェ,カッツェ?」

ジルが呼んだら奥からカッツェさんが出てきたわ。


「私,何語を話してる?」

「テア語ですね。覚えたんですか。すごいですね。」

「文字はどうかしら?」

文字を書いてみる。

「テア語ですね。」


私は,ほっとした。でも・・・

「他の言葉は覚えているのかしら?」

帰る支度をしながら,ジルが言ったよ。

「多分。話せるとは思うけど。今までみたいに流ちょうじゃないかもしれないよ。」

 え~それってどうなってるの?どうやったら通じてるって分かるのさ?


 時々来ますと言うカッツェさんとジルが帰った後,迎えに来た寮の管理人の兎耳をしたウサミさんに連れられて,私は寮の食堂に向かったんだ。

胸がどきどきしてきた・・・獣人達・・・どんな人たちなんだろう。




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