方向音痴はちょっとつらい?
もう少しでズィルバニアに着くって時,私達は国境に近い町の近くに降り立っていた。飛んでいて,国境の町の遠く見える大きな壁が目に付いたのだ。それが何か見極めるためと,
「ローティとブラウは旅の夫婦,その弟夫婦がズィーゲ先生とボルフ先生。私とスコティッシュ,カッツェはどちらかの子ども・・・」
って言う,学園で決めてきた役割を見直ししようと言うことになったからだ。
・・・まさか・・・万里の長城?
それを連想させるほど大きく延々と壁が立ちはだかっている。
「いつの間にあんな物が出来たのかしら。」
「少なくとも我々が発つ頃,そんな報告は聞こえてきていませんでしたからね。」
急に忽然と姿を現したのか?
取りあえず,国境の町に入って様子を見ようと言うことで,降りたのは良いけれど・・・
「歩いてくる旅行者って,不自然じゃないの?」
この世界には車があるのに。私がそう言ったら,ズィーゲ先生が小さな車を荷物から出してきた。ワゴン?
ズィーゲ先生は車の模型?に杖を当ててなにやら詠唱を始めた・・・おおお・車だ。小さな模型はたちまち車に姿を変えた。
「先生。出す場所を考えてくれるともっといいな。」
スコティッシュが言う。私もそれには賛成だな。何しろ町の近くって言っても道路に近い訳じゃない。木々が茂り,草もぼうぼうに生えているところに忽然と現れた車だ。どうやって道路まで出すんだろう?!
「そう言えばそうね。あははは。大丈夫。きっとローティ達が道路に運んでくれるわよ。」
意外におおざっぱだったんだね。
「それはかまわぬが。今はまだ人通りがあるようだ。もう少し暗くなってからがよいだろう。」
ここら辺には電車とか汽車とかは通っていないようだ。車はあるけれど,ガソリンとかガスとかそう言う物で動く訳ではないらしい。というのは・・・
「ユウミ,車が動く訳は分かるか?」
なんかいちいちむかつくことを言うわよね。
「エンジンでしょ。」
「へえ。じゃあ動力源は何だ?」
「ガソリン」
「ガソリンってなに?ユウミさん。」
え?聞いてきたのはもちろんズィーゲ先生だ。
「石油から作るんですよ。」
そう言ったら,スコティッシュに怪訝な顔をされた。
「なんだそれ?」
「私も初めて聞きましたよ。」
ボルフ先生まで。・・・まさか・・・車も魔力で動いてるの?
「おまえの出身地はどこだよ?」
「え・・えっと・・」
って言うやりとりがあったんだよね。どうもズィーゲ先生は,薄々私がこの世界の子じゃなさそうだって気付いてるみたいな気がする。だって。
「いいじゃないの。どこでも。ユウミさんの出身地では,ガソリンって言う物を使うってことが分かったってことで。ユウミさん。ここではね,魔力が動力源なのよ。」
そう言って教えてくれたんだ。
とりあえず,車に最低限の旅支度は積んでいないとおかしい。ってことで,鞄が5つ積まれた。それぞれ,自分の荷物を少しずつ入れる。無くなっても困らない物だけにしろって・・スコティッシュの偉そうな指示・・・・まあ。確かにそうだって分かるから,反発しないけどさ・・・
それから,やおらズィーゲ先生は杖で自分の上にくるくるって渦を作った・・・渦は先生を包み・・・上に抜けていった。イリュージョン?・・あ?!
「ウサミさん?」
現れたのは寮の管理人,ウサミさんだった。
「うふふ。」
「え?まさか。」
「いいのよ。この姿の時はウサミさんでね。」
ボルフ先生は驚かない。それで私を送ってきたとき,ウサミさんと仲良く話をしていたのか。
寮の監督はお遊びでしてるんだそうだ。寮の自分の部屋と,ズィーゲ先生の部屋は魔法で重なっているんだって・・・そんなことができるんだ・・・
「あら。ユウミさんにも出来るはずよ。」
「そんな便利なことが出来るなら,是非やりたいです!!!どこに行っても,自分のベッドで眠れるなんて最高じゃないですか。」
「うまくやらないと,他の人が侵入しちゃうからね。」
あ・・・そうか・・・
「後で教えてください。」
ってお願いする。
「おまえ。自分だけ,自分の部屋でゆっくりしようなんて考えてねえよな?」
考えてますとも。悪い?
「ユウミさんは方向音痴ですから,難しいんじゃないですか?」
ボルフ先生が口を出してきたんだけど。
「方向音痴?おまえ方向音痴なのか。」
・・・弱みを握られた気分だよ。
「場所が分からなければ,移動も何も難しい。座標が定まらないととんでもないことになるからな。」
ローティまで言ってきた。
「まあ無理はせぬことだな。」
ブラウまで・・・




