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むかつくあいつは・・・・・  作者:
第1章 出会い
4/100

4 お願いです。

「もいちゃんが,あなたの姪って・・どういうことですか?」

ティガーノさんはソファに座り直した。

「不思議に思われるかもしれませんね。猫と虎ですからね。」


・・・・・


「彼女は,元々この国に住んでいたんです。でも,時々あの電車に乗ってそちらの世界に遊びに行っていました。

・・・・

 ある日凄く興奮して帰ってきた彼女は,居心地のいい空気を見つけた。しばらくそこで暮らすと言って,また出かけたきり帰ってこなかったんです。」


・・・・・


 もいちゃんは実はお嬢様で,跡取りとして,お婿さんもいたという。私が驚いたことに,息子もいたらしい。しかも,まだ赤ちゃんの息子を置いて,美優達の世界に行ってしまったということだった。

居心地のいい空気。それがユウミの家のことだったのだろうか?

 いつもごろごろと機嫌の良かったもいちゃん。おかあさんがよく言っていたことを思い出した。

『ユウミが小さい頃は,しっぽをつかんだり,毛を引っ張ったりして大変だったけれど,決して怒らなかったのよ。』


「もいちゃんがこちらの人で,猫に化けていたって言うことですよね?そして,私の家に住んでいた。

 昨年の今頃家からいなくなったのは,こちらに帰ってきたから・・・と言うことでいいのでしょうか?」

「まあ。簡単に言うとそうなるね。」

少しむっとして,私はきつめの言い方で答えた。

「それと,私が帰れないことって,関係があるんですか?」


すると,悲しそうに,にゃあ・・・ジルが

「おばちゃんはいいひとだよ。だから助けてやって欲しいんだよ。」

 と口を挟んできた。

「ぼくはね,まえ,お父さんと一緒に,おばちゃんを探しに行ったんだよ。」


・・・


「・・・ちょうど昨年の今頃のことだったよ。ぼくは,お父さんと一緒に初めてそっちの世界に行ったんだ。」



・・・・


 そして迷子になったそうだ。

 さまよっているところに,ちょうどユウミが通りかかり,助けてくれたという。

 そういえば・・確かに昨年1回,猫を拾って家に帰ってきた。

・・そうだった。その後で,もいちゃんはその猫と一緒にいなくなったんだった。どうしてこんな大切なことを忘れていたんだろう。もいちゃんがいなくなったことだけは覚えていたのに・・・




「ぼくはおばちゃんと一緒にお父さんを探して・・それで,帰ってくることが出来たんだ。ユウミちゃんのおかげだよ。

 そして,おばちゃんも一緒に連れて帰れたのも,ユウミちゃんのおかげなんだ。」


 今年は,ユウミを迎えに行くことになり,

「春から様子をうかがっていたんだ。毎日,ユウミちゃんとふれあえたから,うれしかったし。」

と言うんだ。



・・・入学してからのことを思い出す・・・

 毎日会っていた垂れ耳の子猫。あれがこの子で,この子は私に会いに来ていた。いや。私を迎えに来ていたのか。信じられない。訳が分からなかった。何で私を迎えに来たのか,何をさせたいのか。


「おばちゃんの本当の名前はヴーハイト」

「?」

「あの山の名前と同じなんだ。そして,今,おばちゃんはあの山のてっぺんにいるんだ。」



どういうことだろう・・ますます混乱してきた。

『もいちゃんの名前はヴーハイトで,駅員さんが言っていたヴーハイト山と同じ。そしてもいちゃんはこの山のてっぺんにいる?!それを助けて欲しい?どういうこと?』



・・・



 話はまだ続いていたんだけど,私の頭はもう一杯一杯だったみたい。しばらく脳が聞くことも考えることも拒否していたんだろうなあ。



・・・



「・・・と言うわけで,美優さんには,中央の学園に入学してもらいたいんです。」

気が付くと話はとんでもない方向に進んでいた。

「・・・学園に入学?」

「ええ。あなたの力を目覚めさせるために。

そして何より,姪の子どもを助けるために。」

「姪の子ども?」

「僕のいとこだよ。おばちゃんと一緒に,その子も助けてやって欲しいんだ。」




「とにかく,その二人を助けるまでは,私は家に帰れないと言うことなんですね?」

 簡単に言うと,そういうことなのに違いないわ。

「終われば帰してもらえるんですね?」

 重ねて念を押すと,ティガーノさんは重々しく頷いた。

「我ら一族の誇りをかけて,お約束いたしましょう。」

 わざわざ私になんか頼まなくても,自分たちで解決すりゃいいのに・・・でももいちゃんにはもう一度会いたいしなあ・・

・・まてよ・・・力がどうとかいってなかったっけ?まあ・・・後でもいいか・・・


その後、夕食の時間まで,学園のことやそのほかのこと,これからのことなんかを細かく打ち合わせていったんだ。

元々私は思い切りのいい子だったから。

『これ以上、出来ないことをくよくよ考えていても仕方がない。今,出来ることをとりあえず片付けていこう。』

なんて思っちゃった…お母さん・・ごめん。きっと帰るから許してね・・・




大筋には変化はありません。

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