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むかつくあいつは・・・・・  作者:
第1章 出会い
3/100

3 垂れ耳の少年

 いつの間にか眠ってしまった・・・私が目を開けるとあたりはすっかり明るくなっていた。目が覚めた私は,よく出来た夢だったなと思いながらのびをしたんだ。

・・しまった。また遅刻だ。慌てて飛び起きたんだけど・・うそ・・・

 夢じゃなかった。

 私は豪華な部屋の大きなベッドで目が覚めたんだ。慌ててほっぺたをつねる・・・痛い・・・


「お嬢様,お目覚めですか?」

声に慌ててそちらを見ると,立っていたのは,カッツェと呼ばれていた猫耳のメイドさんだった。

カッツェさんの手は服らしき物を持っている。

「申し訳ございません。こちらで勝手に服を選ばせていただきました。」

私は黙って出された服を着たんだけど


・・・


「あの・・・私が今まで着ていた服は?」

よく見ると,ベンチバックも見当たらない。少し焦っちゃった・・

「私の荷物もどこですか?」

続けて聞いたら,

「洗濯をさせていただきました。バックの方も大変失礼かとは思ったのですが,汗の臭いがいたしましたので,中を開けさせていただき,洗濯をさせていただきました。」

と答えるんだもん・・思わず赤面だよ。


「まさか・・・昨日脱いだ服も? 」

おそるおそる聞くと,

「もちろんです。」

胸を張って答えてきたから,私はがっくりきた。下着まで洗ってもらうとは・・・

「後ほど乾きましたら,アイロンを掛けさせていただき,持って参ります。

それよりも,お嬢様,お支度を。お食事の間にご案内いたします。」


 私は慌てて洗面所に行き,用を足し,身だしなみを整えた。鏡のところには様々な化粧水やら見たこともないような物と一緒に,銀のブラシもあった。

「・・・銀?まさか本物?初めて見た・・・」


 短い髪をとかして,顔を洗い,化粧水はよく分からないのでスルーして,ドアを開けると,カッツェさんが待っていた。

「お嬢様。化粧水をおつけください。

 見たところ,お肌が荒れているご様子。」

 そう言って1つの瓶を示した。

・・・毎日外で部活しているんだもん,肌も荒れているのは当然。私はおとなしく瓶の化粧水を付けた。何の匂いもしない化粧水だ。


「私たちは鼻が敏感なので,薄い香りなんです。」

薄い?何も香りなんてしていないよ。私は一瞬不思議に思ったんだけど,ここは多分獣人の国なんだ・・・きっと獣人は匂いに敏感なのに違いない。

・・・あれ・・・私なじんでる?それともまだ夢の続きを見てるんだろうか・・


食事の間に案内される前に,時計を確認したんだけど,12時・・・もうお昼じゃないの。夕べ時計を確認してから12時間も経っていたんだ。夢じゃないとしたら・・・

・・・私はお母さんの顔を思い浮かべた。怒ってるんだろうなあ・・・心配もしてるに違いないよ・・・どうしよう・・


食事の間に着くと,ティガーノさんともう一人、10歳位の子どもが待っていたんだ。

「おはようございます。」

 挨拶すると,子どもがうれしそうに

「ユウミちゃん,久しぶりだねえ」

と言ったんだけど・・・誰?

「ユウミさん,おはようございます。この子は私の孫のジルです。」

「ジルさん?」

「いやだなあ。僕,にゃあですよ。」

・・・・・にゃあ?

 にゃあ。それは,毎朝呼びかけていた猫に付けた名前だ。


 家で15年ほども飼っていた猫が去年急にいなくなった後,入学した高校への道の途中で見つけた可愛い子猫。どこかの飼い猫なのか,捨て猫にしては綺麗な猫だったから,拾って帰りはしなかったんだけど・・・。


 まじまじと少年を見た美優は,目と耳に気が付いた。オッドアイ・・・頭の上の方に?・・・?垂れ耳?・・・。

「思い出してくれた?僕,あなたのおかげで,ここに帰って来れたんだ。」


 そう言えば,オッドアイや垂れ耳の猫は病弱。そう聞いていたので,偶にえさをやったり遊んでやったりもしたことがあったっけ・・・でも帰るきっかけになったとは・・・何のことだろう?


「まあ。その話は後でいいじゃないか。時間はたっぷりあるんだから。

さあ,座って,朝食にしましょう。いや・・・昼食かな。ははははは」

にゃあがいるなら,危害を加えられることもあるまい。そう判断した私は食事を堪能することにしたんだ。


 魚介のサラダ,とろりとした黄色っぽいソースのかかった白いアスパラガス,ふわふわのパン,何の肉だろう,茶色いソースのかかった大きめの肉。わきに添えられているのはにんじんか。

私は黙々と食べた。お腹が空いているんだから仕方ない。元々沢山食べる方だし,夕べはいつもの半分しか食事をしていなかったし・・・いつものラーメンの後に,家に帰ってからとる本当の夕食を取り損ねているんだもん。


 お皿に残っているお肉のソースをパンで綺麗にぬぐって食べた後,出された果物の甘煮添えのケーキもぺろりと平らげ,最後に出されたお茶も飲む。

「これは素晴らしい食べっぷりだ。足りましたかな?」

そう言われてはっとしちゃった。

「はい。ごちそうさまでした。」


・・・・・


お茶を飲み終え・・・,

「それで,お話をお聞きしたいのですが。」

と切り出したんだけど。

「まず,場所を変えましょうか。多分,給仕の者がここを片付けたいと思いますのでね。」

その通りだね。片付けの時,人がいてはやりづらい・・・

 

 3人で食堂から書斎のようなところへ移動することになったんだ。ティガーノさんはメイドの一人に

「お茶と茶菓子を持ってきてくれ。」

って言ってた。まだ食べるの?


 書斎は広く,重厚なテーブルや椅子が置いてあったんだ。

その前に応接セットが置かれ,来客に対応出来るようにもなっていて,ドラマで見た重役室みたいだった。

 椅子の1つを薦められて座ったんだけど,その隣にジルも座ったわ。


 しばらく3人とも無言で座っていたら,ノックの音がして,メイドさんが茶器ののったワゴンを押して入ってきたんだ。

・・・こぽこぽと茶を入れる音だけが響き渡って・・・3人の前にお茶と茶菓子を置いたメイドさんが立ち去ったので,

「それで,私は家に帰りたいんですが。」

私は切り出したんだ。


「ふうむ。気持ちは分かります。しかし,今は帰してあげることは出来ません。」

 ティガーノさんは,立ち上がって机のところに行った。しばらくごそごそしていて戻ってくると私に

「これをご覧ください。」

出してきたのは写真?

「もいちゃん・・・・。」


 写っていたのは昨年の今頃,どこかにいなくなってしまった,ユウミの姉妹と言ってもいいくらい・・一緒に育ってきた三毛猫。

「どうしてここに?」

 写真をしまいながらティガーノさんが言った。

「この子は私の姪なんです。」


・・・


「ええ?!」


思わずまじまじとティガーノさんを見つめる私だった。


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