23 早朝
次の朝早く,窓をたたく音で目が覚めた。
カーテンを開けてびっくり。スコティッシュ。慌ててカーテンを閉めた。
「来いよ・・待ってる・・・」
そんな声が聞こえたような気がする。慌ててそっとまたカーテンを開けて見たら,もう向こうへ飛んでいくところだった。
カーテンを開けたのが分かったのかな・・こっちをちらりと見て,くいって手招きして・・・また飛んでいった。
慌てて着替えたよ。動きやすい服装がいいよね。
窓を開けて・・・おっと。鍵を忘れちゃだめだわ。首からぶら下げる。靴・・靴っと。
飛び出す。一瞬の後,バランスを保ちながら,飛んでいった方向に向かう。昨日の所だろうな・・・
向こうに2人分のシルエット。近づいたらやっぱりボルフ先生と,スコティッシュだった。もう二人で訓練してる。ボルフ先生の持っているのは剣だ。スコティッシュは今日は素手だった。危なくない?
黙ってしばらく見ていた。
ボルフ先生が斬りかかる・・・スコティッシュが横飛びで逃げる・・そこを上から一閃・・転がる・・突き刺す・・ほんとに突き刺さってる・・・うわ・・・一瞬で空に・・ボルフ先生も飛び上がる・・ボルフ先生のはジャンプだね。飛んでるわけじゃない・・・
しばらくして,ボルフ先生が剣を納めた。
スコティッシュはフウフウ言って膝をついている・・・
「まだ甘いな。特に左から来るのに弱いぞ。」
「・・・ああ。左はな・・・」
「まだ・・駄目なのか。」
・・・ああ・・・
左が駄目って?どういう意味だろうね?
「ユウミさん。」
ボルフ先生が呼ぶので側に行ったよ。
「あなたは棒とか剣とかを振ったことはありますか?」
そんなこと聞く?剣道部とか,フェンシングやってる人ならいざ知らず,平和な日本では,そんなもの必要ないよ。
「ありません。持ったこともありません・・」
そう答えてから,気が付いたよ。やってるじゃない。あれ・・・
「あ・・・棒はあります。バットも振れます。」
そうだよ。素振りならお手の物。
「バット?」
はあ・・バットを知らないんだ。あたりまえか。
「どんな物ですか?」
あれ?興味あるの?
「えっと・・・でも武器じゃあありませんよ。」
地面に図を書いて見せたら,
「へえ・・面白い形ですねえ。何で出来てるんですか?」
ってさらに聞いてくるんだよね。
「えっと金属です。木の物もありますけれど,私たちが使っていたのは金属でした。」
「どんな金属ですか?」
そこ聞くの?
「え・・・え・・・。」
考えるけど。
・・・・
「カーボンとか・・・グラスファイバー ですね・・・」
「どの辺がカーボンですか?」
「そもそもカーボンって何だよ?」
二人に同時に言われたけど・・・
「反発力がある素材なのかなあ・・・うんとねえ・・多分だけど形全体をカーボンで作るんだよ。それを薄い・・・別の物で全体を覆うんだと思うんだ。それがグラスファイバーなのかなあ???
私も良く分かんないけど・・ジュラルミン製のもあるそうだし・・・ 」
「よく分かりませんが,この棒を振ってみてくれませんか?」
うん・・・振り方なんて分かんないから,バット振るみたいにスイングしたけど・・・・
「これ・・・しなりませんね。」
私が言ったら,
「しなる?」
そう聞くんだよね。
「ええ。ちょっと反発力がない感じ。」
ほう・・・しなるって・・・
「ユウミの振り方,変な形だな。」
五月蠅い奴。
「すみませんねえ。これしか知らないもんだから。」
そう言ったら,
「そんなんじゃ対抗できねえぞ。」
って言うんだ・
対抗って・・・
「ああ。すっかり日が昇りましたね。二人とももう帰りなさい。朝食の時間ですよ。」
おっ。
私は慌てて
「はい。また後で。」
って言って飛び上がった。
「待てよ。」
って何?
「まだ何か?」
側に近づいてきて声を潜めて聞いてきた。
「紅の魔法使い・・・分かったか?」
私は飛びながら,
「まだよ。誰も教えてくれないもん。」
っと言った。
「ふうん。」
寮だ。
「じゃあね。」
ふいっとスコティッシュは向こうの方に飛んでった。
礼儀知らずの奴。
私が窓から入るのと,目覚ましが鳴るのは,一緒だった。うん。




