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むかつくあいつは・・・・・  作者:
第1章 出会い
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2 猫耳のメイドさん

 あれ・・・明るい光が窓の外に見える・・もう1台の車のヘッドライトが見えてきたんだ。

「ちっ。いくぞ。」

フントというその犬型獣人は,私の両方の腕をつかんで引きずっていこうとする。

「い・・痛い!!痛い!!」

うそ。夢なのにこんなに痛いなんて。


・・


 ばたん・・・部屋のドアが開いた音がした。

「何をしているんですかな?」

「ちっ」

っと,舌打ちの音と一緒に腕が楽になった。・・助かった。私はぺたんと座り込んで,腕をさすりながら,入ってきた人を見上げたんだけど・・・

虎?今度は虎???


 さらに怖い・・・側に落とされたベンチバックをしっかり抱き込んで座り込んでいる私の前にしゃがみ込んだ虎?は静かに言った。

「そこの男が君を怖がらせたようだね。すまなかった。迎えが遅くなって。

私はティガーノ。ようこそ。この世界に。

私が君をこの世界に招いたんだ。」


「・・・・」

迎えに?どういうこと?招いたって?


「とにかく一緒に来てくれないか,そこで君の疑問に何でも答えるよ。」

「ふん。どこまで本当なんだか。」

 フントが吐き捨てるように言ったから,私はびくっとしちゃった。

 ティガーノって名乗った人は冷ややかにフントを見たんだ。うわ・・・怖い。


「私はこの子の名前を知っている。君はどうかね?」

 黙り込んで・・・お互い探るように見つめ合っていたわ。見ている方が怖くなってしまったけど,フントが先に目をそらしたみたいだった。


「さあ。行こうか? 竹尾 ユウミさん。」

 え?本当に私の名前知ってるの?

 ティガーノさんはにっこり笑って言い,私の手を取って引っ張り上げて立たせてくれたんだ。


 私はとりあえず,夢でも何でも,この獣人について行くことにした。

 確かに自分の名前を知っているみたいだし,何より,引っ張り上げた手が犬よりずっと優しかったからなんだけど。


・・・・


「お世話になります。」

私は頭を下げたんだ。それから,どうなることかとはらはら見ていたらしい駅員さんにも頭を下げたんだ。

「お世話になりました。」


 駅員さんは慌てて

「いいえ。どういたしまして。また帰る気になりましたら,いつでもいらしてください。」

と言ったんだけど,虎型獣人の人はじろりと駅員さんを見て言ったよ。

「この子は当分ここにいることになるよ。」

・・・え・・・私はどきっとした。

「困ります。もうすぐテストがあるし,テスト明けには試合があるんです。」

・・・・夢ながらテストのことを言うなんて・・・ちらっと考えたんだけど・・


「そんなことを言っているうちに,夜明けになってしまうよ。」

虎型獣人の人は,私を即して車の方に歩き出したんだ。さりげなく,ベンチバックを持って行こうとするので,慌てて私はバックを抱きかかえたんだ。優しさからなのか,私をにがさないためなのか分からなかったからね。

「いいえ。私が持って行きますから。」


 車は,私が今まで乗ったこともないようなものだった。

後ろの席に冷蔵庫も付いている。座席にはそれこそ虎の皮のような物が敷かれていた。虎なのに虎の敷物?おかしくない?


 おそるおそる座ると,隣にティガーノと名乗った人も乗ってきたから,私は出来るだけ端によって座った。やっぱり怖い。虎なんだもん・・


 よく見たら運転手さんも乗っているたから,少なくともこの怖い人とは二人だけじゃあないわ・・少し私は安心・・・

 車は滑るように走り出したんだ。ちらっと見たらフントが駅の入り口の所に仁王立ちしてた。多分怖い顔してこっちを見ているんだろうな。駅がだんだん遠くなる。やはり心細い。


 緊張していたので,何か話しかけられたようだけど,気が付かなかった。というのは,不意に目の前に湯気の立つ飲み物が出されたから。

「すまないね。聞いたんだが,返事がなかったので勝手に入れさせてもらったよ。飲みなさい。落ち着くから。」

・・・・・

「大丈夫さ。毒なんて入っていないよ。」

ティガーノさんはそう言って,もう一つコップを出し,私に出したコップから半分を注いで飲んで見せた。

「ありがとうございます。」

 受け取って少し迷ってから,一口飲んだんだけど・・・美味しい・・・さわやかな柑橘系の味だ。


「ここはどこなんですか?私を呼んだっておっしゃってましたけど,どういうことですか?」


「君は,毎朝,猫と挨拶していたよね?」

「猫・・・ええ。スコティッシュの血が入ってるんだろうって感じの子猫ですね?」

「その猫が,近頃見えなくなっていたのには・・気が付いていたかね?」

「ええ。そう言えば。」

でもそれは,私が寝坊して遅刻していたから・・そう思ったんだけど,話はまだ続いているようだった。

「その猫に会わせてあげようと思ってね。」


・・・・・


 車は1軒の大きな館に入っていった。入り口の車止めのところで私たちは降りたんだ。

 両開きの大きな扉がキィっと開き,中の光が漏れ出てくる。どきどきしながら中に入ったら,

「お帰りなさいませ。旦那様。」

 一人の黒服の男が立っていた。どう見ても・・・羊?羊の執事だ・・・冗談?・・やっぱりよく出来た夢だわ。ちょっと安心しちゃった。

きょろきょろ阿智事を見回してしまう。お行儀悪いかな。でも。夢だ。


「こちらのお嬢様が,お客人ですね。ようこそ。万物斉同(ばんぶつせいどう)の館へ。」

「はあ。あの・・・お世話になります。」

何?。万物斉同(ばんぶつせいどう)の館って?

ぱたぱたと足音が近づいてきた。

「すみません。」

「またあなたですか,もうお客様がお見えです。客間へご案内しなさい。」

って羊がその人に言ってる。

 足音の主が,メイドの格好をしていたので二度びっくり。

「お帰りなさいませ,ご主人様。いらっしゃいませ。お客様。」

え・・私は思わず2度見してしまった。猫だ・・・猫の耳が付いている。顔は人間なのに・・・。私ってメイド喫茶に興味があったんだろうか・・・いやだ・・


「おまえか。まあいい。お客人を客間へご案内して。ご不自由なきよう,よく世話をして差し上げなさい。」

 ティガーノさんはメイドさんに向かってそう言うと,私に

「ユウミさん,詳しくは明日の朝食の席で。では,もう遅いですから,お休みなさい。」

って言ったんだ。

 私は腕時計を見た・・・え?もう2時を指している。


・・明日の朝と言っても何時に朝食なのだろう。

「そうそう。明日は,いつまでも寝ていてもらって結構ですよ。このメイドのカッツェが,ユウミさんが起きましたら,食事の間にご案内差し上げます。

 このカッツェは今夜からユウミさん付きのメイドになりましたから,お世話をさせてやってください。」


・・・・・


 カッツェと言われたメイドさんはてきぱきと私を部屋に案内し,風呂やトイレなどの使い方を教えてくれたんだ。まあ夢だし・・・でも・・

「もう遅いので悪いんですが。・・・部活帰りで汚れているので,お風呂には入りたいと思うんですけど,着替えがないんです。」

そう言うと,

「こちらをご覧ください。」

 寝室の片方のドアを開けると,そこには服が沢山掛かっていた。


「これは,お嬢様のために,旦那様と坊ちゃまが用意された物です。どうぞご自由にお使いください。」

 そう言いながら,カッツェは,タオルやら下着やらを選んで,私をお風呂にせかしたんだ。

 お風呂はもうお湯が入っていたのでびっくり。さっき案内されたときは入っていなかったよ絶対。いつの間に・・・?


 ゆっくり入って出てくると,もう3時近かった。


 眠る・・・眠れない・・・眠らなければ・・・眠れない。

 いいえ・・・目を覚まさなければ・・・眠れば目が覚める?・・・・


・・・・・・



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