1 痛い・・・
全編工事中です。途中で仕事に行ったりしちゃってるので,つじつまが合わないことがあります。すみません。
ここはどこ?私は捕まれた腕を必死に引き離そうとしながら,獣の顔をした人を見た。真っ黒な毛・・・犬?絶対犬だ・・・
「放せ!!!」
怒鳴ったつもりの声がかすれている。いやだ。
何でこんなことになったのか・・・今朝はいつものように家を出て,いつものように・・・
・・・・
ち・・・ち・・・遅刻するう・・・私はいつものように走っていた・・・
「ふうふうふうふう・・・・・」
今日遅刻すると5回目だ。5回の遅刻で親への連絡になってしまう。まずい・・・。
夕べ遅くまでテレビを見なければ良かった。そんな思いも心をよぎるんだけど。
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン
わわわ・・・・がらがらがら・・・校門の扉が閉まっていく・・
滑り込みセーフ。
汗を拭き拭き教室に向かう私を・・・誰かがじっと見ていたことに,その時の私は気づかなかった。
楽しい(?)授業・・・私は眠気にいつも負けてしまうんだけど・・・隣の子もよく分かってる。時々つついて起こしてくれる。ありがとう・・・かな?大きなお世話かな?
放課後・・・
「ユウミ」
後ろのドアのところで,いつものように里香が呼んでいる。
「今行く」
私は,鞄に持ち帰る物を詰め込むと,ひょいと立ち上がる。
二人でいつものようにおしゃべりしながら部室に向かう。部室は校舎と部室棟をつなぐ渡り廊下を通ったところ・・まるで長屋のように並んだドアが目立つ,プレハブの建物の中にあるんだけど。私はここの雰囲気が何となく好きだ。
里香が鍵を出し,ドアを開ける。
「よかった。今日は1番だね。」
里香がにこにこ顔で言ったから,私もほっとして頷いた。
「いつも遅くて先輩達にしかられちゃってたからねえ。」
「でもさ。仕方ないよね。授業が終わってから遊んでる訳じゃあないんだもん。」
里香はてきぱき着替えながら
「ほら,ぐずぐずしてないで。道具をさっさと出さないと。」
と言う。そうだった。今日は2人で道具を出す当番。私も慌てて着替えだしたんだ。
「あれ?」
「何?」
「ユウミの背中に面白い形のほくろがあるね。」
「え?」
「まるで小さな星みたいだよ。」
「うそぉ知らないよぉ。」
私はそんなこと初めて言われたから,確かめようと後ろを見たんだけど,
「自分で見えるわけないじゃん。後でお風呂か何かで鏡を見なよ。」
と笑われちゃった。
・・・と,バタン。急にドアが開いた。え?・・・他の1年生がどやどやと入ってきちゃった。
「あれぇ。今日の当番でしょ?こんなところでぐずぐずしてていいの?」
しまった。
私たちは慌てて着替えを終わらせて,外に飛び出したんだ。
部室棟の脇に体育倉庫があるんだけ・・。2人でフウフウ言いながらボールやそのほかの道具を運び出し始めたよ。そこに他の1年生もわらわらとやってきてたちを手伝ってくれる。こういうところは団結していていいな。と思っているんだ。もちろん里香もそう思っているに違いないと思うけど。
道具の準備が終わる頃,2~3年生がやってくる。いいな。早く上級生になりたいな。そう思うのは,私ばかりじゃないはずだよね。
挨拶,準備運動・・・・いつもの時間が始まった。
・・・・・
19時半・・・ようやく片付けが終わり,帰る用意も出来た。
「気をつけて帰れよ。」
と言うコーチの声を聞きながら, みんな三々五々帰って行く。もちろん私たちも。
「ユウミ,寄る?」
「うん。もちろん。」
いつも集まる4人で近くのラーメン屋に・・・ここのは豚骨が美味しいんだよね。
みんな食べる食べる・・・。この後,家でも夕飯が待っているって分かっていても食べるんだ。大丈夫。ちゃんと夕飯も全部食べるよ。みんなそう。
食べ終わって,皆満足のため息をついて・・時計を見ると,もう8時だった。2人は自転車,1人はバス,私は電車だ。家に着くと8時半かな。みんなで駅前の4つ角まで一緒に行くと,それぞれの方向に分かれるのもいつも通り。
「またね。」
「また明日。」
「ユウミ,寝坊に気をつけて。」
「ははは。」
みんなと別れて電車に・・・いつもは座らないんだけど,今日は夕べの寝不足のせいか座っちゃった。後で後悔することになった選択・・・
電車の揺れは心地いいから・・・揺られてつい・・・うとうとしてしまった・・・・・
・・・・・・・・がたん・・・・
「お客さん,お客さん,」
私は誰かに揺り起こされたんだ。
「え?」
ぼんやり目を開けた私の前には制服が見える。
車掌さん?ぼんやり思った私は次の瞬間跳ね起きた。え?
「終点ですよ。」
私は時計を慌てて見たんだけど。・・・12時・・・
「うそ・・・」
「嘘ではありませんよ。」
「だって,この電車の終点は,5つ離れた駅のはず。私は3つ離れたところの駅だから,こんな時間になってるわけないわ。」
慌ててスマホを出して時間をもう一度確認したんだけど・・・
「12時・・・」
お母さんに怒られる・・慌てて電話を掛けたんけど・・通じない。・・そんな馬鹿なことって・・・私はだんだん焦り始めたんだ。
「降りてくださいよ。」
「でも・・・でも・・・ここはどこなんですか?」
もう私,泣きそう。
「ここは樹海が原。ヴーハイト山の麓ですよ。」
・・・
「知らない。いったいここはどこなの?」
「だから,ここは樹海が原。ヴーハイト山の麓です。」
私が泣き出したので,車掌さんは,私を連れて電車を降り,駅の構内に連れて行ってくれた。
駅の中は薄暗く,ますます私を悲しくさせたんだけどね。
駅員さんに私を引き渡した車掌さんは,
「じゃあよろしく頼みましたよ。」
って言って,さっさと電車とともに出て行っちゃった。
駅員さんは泣いている私を見て,どうしようかと考えてたみたいだけど,私を座らせると,どこかに電話を掛けているような感じだった。
駅員さんは電話の後,戻ってきて私にお茶を出してくれた。優しい。まだちょっとしゃくり上げながら,私はありがとうと言いながらお茶を・・・
・・・・・え・・・・
駅員さんの手・・・毛むくじゃらだったんだ。ありえない・・・はっとして駅員さんを見上げたんだけど・・
「熊?」
まさしく駅員さんの顔は熊のものだったんだよ。お面?私を怖がらせようとしているの?って思うまもなく,
「そう。俺は熊型獣人だよ。君は?見かけない感じだね?」
と言うじゃないの。
私は,声もなく,目を見張って・・熊型獣人だという駅員さんを見つめるばかりだったんだ。
・・・あまりにびっくりしたためか,いつの間にか涙も止まっていたんだ。
呆然と見上げていたと思うんだけど・・・おや。窓の外に見えるのはヘッドライト?駅の前に車が止まったみたい。
誰かが駅に入ってきた・・誰?ドアが開き,
「フントさん。いらっしゃったんですか。」
駅員さんの声がする。フントさん?
私の前にその人は立ったんだけど。
「君が迷子だね?」
迷子?私はぼんやりその人を見上げたの。
え・・・犬?
「ほう。この子は獣人の特徴が顔にないね。」
「そうですね。私もそう思いました。どこの子どもでしょうかね。」
二人でじろじろと私を見ているんだ。
私はどきどきしてたけど,勇気をふるって二人に
「すみません。ここはどこですか?
・・・
私は学校の帰りに普通に電車に乗っただけなんですが。」
と言ったんだ。
「ほう?!」
「へえ?!」
「学校か。かなり高い身分の人の子どもだな。」
私は驚いちゃった。何それ?どこの世界の話?よく出来た夢?ああそう。夢なんだね。
「父も母も,普通の人です。」
フントさんと呼ばれた人(?)はウンウンと何度も頷いたんだ。
「とにかく今夜はもう遅い。私の屋敷に来なさい。」
そう言ってくれた。
でも,私は,
「知らない人にはついて行ってはいけないと教えられています。明日の朝の始発で家に帰ります。」
って答えたんだ。
多分犬型獣人って言うのだろうな・・フントさんが,
「明日の朝は電車は出ない。次に出るのは1週間後だ。」
と言ったから私は驚いちゃった。まさか・・ありえない・・どこの田舎設定の夢なの?!
「とにかくここで夜を明かすわけにはいかないだろう。家に来るといい。」
きらりと牙が光ったような気がする。怖い。これってホラー系の夢?初めてだよ。
・・・・
そう。そう言って,その人(?)は私の腕をぎゅっとつかんだ・・・・
痛い・・・痛い・・・放して欲しい。
本当に痛い・・・