観測者
面白いプレイヤーを見つけた。
職業『救世主』。間違いなくレアジョブだ。
「追跡・・・。」
《斎藤ショウタを追跡対象に登録しました》
アバターはセンスが無い、というよりは普通だ。
レベルは28。ゲームをはじめて1ヶ月といったところだろうか。
『救世主』とは一体どういったジョブなのか?
それだけが気がかりで私は彼の追跡を開始した。
それから丸一日、
彼を追跡した。彼は剣を使うようだ。
『救世主』というのは武器に制限の無い職業なのだろう。
彼がモンスターと戦う姿は実にみごとで、なんと美しいことか。律動的で力強い剣の振り方、スキル発動のタイミング。見ているこっちは既に疲れてきているのに、まるで疲れなど無いかのようなその身のこなし。そして瞬く間に上がっていくレベル。
気がつけば辺は夜になり、彼のレベルは36まで上がっていた。先ほどはゲームスタートから1ヶ月ほどだろうと推測したが、このペースでレベルを上げていたとなると、まだゲームスタートから一週間ほどなのではないか。とすると、彼は原石だ。磨けば輝きを増すダイヤモンドの原石なのではないだろうか。
いいや、私が手を加える余地など無いに違いない。
彼のような人間は、彼自身の意志により自らを鍛えあげる時が一番輝きを増す。人が道を勧めることなどしなくても自ら道を切り開いてしまうのだ。
そんな人間を私はかつて一人だけ見たことがある。おそらく斎藤ショウタとは相対する存在であろう彼もまた、そういう性質を持つ者だった。
彼らのような者には助言をする意味がない。いや、しても無駄なのだ。なぜなら彼らのような才気ある者は他人から押し付けられた意見をなかなかに認めない。その場では「はいはい」と受け流してしまう事もあるだろうが、彼らはそれを良しとは全く思ってないのだ。よほど納得しない限りは。
それは彼らの思慮深さを意味する。他人の言葉を鵜呑みにしないのだ。自ら考えて、その上で合理的な判断を下すのだろう。私などは威光を感じる相手の意見であると、しばしば鵜呑みにしてしまう。彼らには威光などという得体の知れぬものに振り回されない強靭な意志があるのかもしれない。