出会い。
何事も、無関心が良かった。
恋や遊びなんて次の次のそのまた次。私に関係なんて無かった。
勉強さえあれば、なんだってできる。そう教えられて来た私には遊びなんて、ましてや恋愛なんて考えられなかった。
あの人に会うまでは……………。
春。
私は高校生になった。未だに初恋はしていない。
高校は県トップの高校に入学した。
そのせいかチャラチャラした格好の人たちは少なく、真面目ちゃん真面目君ばかりだ。
「ねぇ。君って新入生だよね?入学式始まっちゃうよ?」
後ろから声をかけられた。振り向くとそこにはいかにもモテそうな男の人がいた。
「君。名前は?………。あ!そっか!僕から自己紹介しなきゃね。僕は二年の藤田大樹。大樹先輩って呼んでね!よろしく。」
「私は斉藤 雪菜。」
「雪菜ちゃんかよろしくね!」
差し伸べられた手を私は無視してスタスタ歩き出した。
「気を付けてね〜」
無視したのに気付いていないのか、ただの能天気な人なのか知らないけれど、陽気に言った。
入学式が終わって、クラスに移動して、少しするとグループができ始めていた。
「よいしょ。」
隙間時間に勉強ができるように持ってきた問題集を広げて、私は問題を解き始めた。
10分ぐらい経っただろうか。女子が騒ぎはじめたのが気になり、顔を上げた。すると、なぜか私の前にあの、朝会った先輩がいた。
「雪菜ちゃん!こんな問題集やってないで、僕と校内探検しに行こうよ!」
そう言うと、私の返事も聞かずに、軽く私を持ち上げて教室を出ていった。
「あの。下ろしてください!」
「……..」
「先輩?」
「どう呼んでねって言った?」
「…….藤田先輩。」
すると先輩はニコッと笑い
「違うよ?」
と言った。
「下の名前で呼んでって言ったでしょ?」
「…..大樹先輩。下ろしてください...」
「よくできました〜」
そう言いながら、先輩は私の事を下ろしてくれた。その後、私の髪をワシャワシャしながら、先輩はこう続けた。
「名前を下で呼んだだけで顔赤くしちゃって。可愛いね〜雪菜ちゃんは。……あ!もしかして、男の人と免疫ないでしょ?」
図星だった。当てられたのに腹がたったのか、何にイラついたのか分からないけど、
「……私はどうせ男の人になんか免疫がない人です。先輩と違って人と接する事だってうまくないし…それに、」
子供がすねたような言葉を吐き捨て、私は廊下を全速力で駆け抜けた。
いったい私は先輩に何を言いたかったのだろう。何に気づいて欲しかったのだろう。それさえもわからなくなっていた。
「今日が、入学式だけでよかった。今のままじゃ、勉強しても頭に入らないし…」
勢いで屋上まできてしまった私。なぜか鍵は開いていた。時々吹く風が肌に当たって、とても心地よい。
ガタン‼
「へ⁈」
驚いて入り口の方を見ると、そこには先輩が立っていた。走って来たのか、少し汗をかいていて、肩で息をしている。
「…先輩⁈」
「やっと見つけた。雪菜ちゃん足速いね。」
そういうと、私の方へ歩いて来た。
「ごめんね。雪菜ちゃん。…少しからかい過ぎた。 本当にごめんね!」
『からかい過ぎた。』
なぜか私は、先輩のこの言葉に、今までとは違う変な悲しみを覚えた。
『私。からかわれてたんだ。』
なんでこんなに悲しいんだろう。なんでこんなに苦しいんだろう。なんでこんなに自分が嫌になるんだろう。
私は分からなかった。今、こんなに頭の中が先輩いっぱいなのか…