過ち
男は、悪の組織に雇われていた。
組織を率いているのは、ある大臣だった。
ある日、男は大臣に呼び出された。
「仕事だ」
机の上に、一枚の写真が置かれた。
政敵の顔だった。
「こいつを殺せ」
指定された場所は、政敵のオフィスが入っているビルだった。
「方法は?」
「爆破する。ビルごとだ」
大臣は続けた。
「一般人も巻き込め。無差別テロに見せる」
男は黙って聞いていた。
「犯人は別に用意してある。お前が捕まることはない」
「替え玉ですか」
「ああ」
男は命令どおり、爆弾を仕掛けた。
そして、ビルを爆破した。
99人が死んだ。
だが、政敵は死ななかった。
その日、たまたま予定を変更していたのだ。
翌日、男は大臣に呼び戻された。
「過ちを犯したな」
大臣は言った。
「はい。失敗しました。」
大臣は、しばらく男を見ていた。
「そうか」
それだけだった。
男は逮捕された。
替え玉は現れなかった。
組織は、男を切った。
裁判で、男は死刑を言い渡された。
罪名は、爆破テロ。
死者、99人。
死刑執行の日。
男が刑場へ向かう途中、記者が叫んだ。
「自業自得だ!」
男は足を止めずに言った。
「そうです。私は過ちを犯したのですから」
–––––
その国には、ワクチン担当の大臣がいた。
大臣は、闇の組織から命令を受けていた。
国民にワクチンを打たせろ。
それが命令だった。
ところが、接種は思うように進まなかった。
国民の間に、ワクチンへの疑問が広がっていたのだ。
焦った大臣は、記者会見を開いた。
「このワクチンの安全性は、科学的に証明されています」
だが、科学では、検証はできても、証明はできないことを、大臣は知っていた。
それは、大臣だけではなかった。
「科学的に証明された」
その言葉を聞くたびに、人々の疑いは深くなった。
接種率は上がらなかった。
「私は過ちを犯しました」
その言葉とともに、大臣は失脚した。
計画は、失敗した。
その夜。
大臣のもとに、一本の電話があった。
「過ちを犯したな」
大臣は黙っていた。
翌日。新聞が大臣の事故死を報じた。




