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第5話:領主たちの目

港町ルーファが小さな奇跡を見せ始めた頃、周辺領主たちの視線が港に向けられた。

「……ルーファが勝手に交易を始めるとはな」

北方領主の副官が呟く。ルーファはこれまで荒廃し、誰も手をつけなかった辺境港だ。だが今、港は生き返りつつあった。


ユリアは書斎で航路図や交易記録、港の構造図を確認する。次の課題は外部勢力との交渉だ。

「力ではなく、制度で港を守る……」

前世で培った都市計画や政策の経験を思い出す。港町を繁栄させるには、周囲の領主たちと敵対するよりも、交渉し、認めさせる方が早い。


初めに訪れるのは南方領主。彼の領地はルーファの交易ルートにかかわる重要な地点を持つ。ユリアは港の繁栄が領主にとっても利益になることを示す計算書と提案書を持参した。


「この港の交易を認めていただければ、税収も貴領地に還元されます。海賊被害の防止も共に可能です」

ユリアの声は冷静だが、数値と制度設計が裏付けられているため説得力があった。領主は眉をひそめ、しばし沈黙する。


「……面白い。だが、条件次第だな」

交渉は厳しかった。港の税制度、荷物の検査、航路の管理――細かい条件をつけられる。しかし、ユリアは焦らず一つずつ説明し、互いにメリットを示す。


交渉は丸一日かかった。夕刻、領主はようやく頷いた。

「わかった。交易を認めよう。だが、貴港が約束を破れば、我が領地に不利益が出ることを忘れるな」


ユリアは静かに礼を述べる。口先ではない、制度で守る港町の初めての勝利だ。港に戻ると、ルカや住民たちがほっと息をついている。


「やった……!」

「まだ始まりにすぎない。でも、港を守るための第一歩だ」

ユリアは港を見渡しながら、心の中でつぶやいた。

「制度も、人も、動かせば結果は出る。次はこの成果を広く証明して、帝国内でルーファの価値を確立する……。」


港町ルーファは、少しずつだが、政治・経済・住民の三位一体で自立の道を歩み始めていた。

お読みいただきありがとうございました。

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