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第1話:港は、まだ生きていた
港は、亡くなった祖父の写真よりも醜く崩れていた。
木製の桟橋は朽ち、岸壁には波の跡がくっきりと残る。海風は冷たく、塩の匂いと腐った魚の匂いが混ざった。船はほとんど停泊しておらず、岸にはほこりをかぶった樽や破れた網が散乱していた。
「……まずは水はけの図を描き直すか」
ユリア・ローレンは、淡々と手元の図面にペンを走らせる。目の前の光景に呆然とする必要はない。彼女には前世の経験と知識がある。街を変えるための方法が、頭の中で静かに整理されていく。
住民たちは不信と諦観に包まれていた。小さな港町の再建など、夢物語だと思っている者も多い。しかし、ユリアは知っている。都市計画は魔法ではない。人の手と制度で、港も街も確実に動かせる。
「漁場の整備からだわ……」
まずは港の機能を取り戻す。安全な船着き場、効率的な荷揚げ場、水はけと排水の改善――順序立てて一つずつ片付けていけば、結果は必ず見える。
港の向こうに、荒れた海の先に希望を描きながら、ユリアはそっと地図を指でなぞった。
「ルーファ――あなたを、必ず生き返らせてみせる。」




