最光朝
モーフトンへ向かう3人であるがレンは内心では金色を引き剥がしたいと考えていた。
先日トウニの力を試すと言いつつ軽傷では済まないような一撃を放った。
トウニが上手く止めたから良かったものの、あれは重症になるような鋭さをもっていた。
いつ気まぐれで殺されるかわかったものではない。
現状従う他ないため同行してはいるが、自然とはぐれたように見える状況を作りたいと思案しながら過ごす日々。
頼りになるのは自分だけ。
レンの心は彼女自身が気付かない内に徐々に追い詰められていた。
「キンイロさん見ください」
「なーに?」
トウニは木の側面に張り付き能力で立っており適当に腕を広げていた。
「枝」
「ふーん。私にも出来るわよ」
「まじすか」
「ええ。見てなさい」
そういうと金色は木に近づき足をかける。
すると彼女は重力に逆らいながらスタスタと木を登っていった。
「なんすかそれ」
「すごいでしょー」
「自分の能力って大した事ないんすね」
「おほほほほー、これがキラキラ力よ」
「きらきらりょくっすか。レンさんもいつか出来たりして」
「当然よ。キラキラ力をマスターすればこのくらい当たり前に出来るわ」
「なわけないだろ!お前ら何をやっとる」
「木に擬態して追ってをやり過ごす訓練を」
「そうよ。どうかしら」
「...そうだな。いい線いってると思うぞ」
「まじか」
「だが惜しいな。金色はキラキラしすぎている。トウニはそうだな、その頭が擬態を損なっている」
「レンさん、その続きはいらんす」
「そうよレンちゃん。このキラメキを失ったら私ただの妖精になってしまうわ」
「遠慮するな。私が整えてやる」
そう言いながらレンは剣を抜き2人に襲いかかり彼らは必死に、あるいは楽し気に走り出す。
レンはこうして足を止める2人をため息混じりに都度急かしたのであった。
モーフトンまで数日の距離まで来た一行。
レンは金色をこのまま連れて行くわけにもいかないためどうにか引き離す方法がないか考えていた。
薪割りのようにトウニに興味を持っていればあれを囮にして姿をくらまし報告に行く。
だが非常に残念な事に興味を持たれたのはレンの方であり、何度か姿を隠しては見たもののそう時間をかけず見つかってしまう。
トウニが自分に見つけられた時の様子がまさに今の自分の姿のだと気付いた時には虚しくなり、レンは隠れることをやめてしまった。
そんな感じで彼女は今、大いに悩んでいた。
なぜそうも簡単に見つけられるのかを金色に聞いたことがあり、その回答は予想外ではあったが意外ではないものであった。
「おい、なぜそうも易々と私を見つけられる。これでも隠れる事には長けているつもりなんだが」
「あら簡単よ。キラキラ同士、ビビッと感じるのよ」
「つまりキラキラしてて目立つと。なるほどだなぁ。はぁ、地味になりたい...」
野宿をしている時、金色がそばにいない隙をついてレンはトウニと今後について話を進めていた。
「キンイロさん中々離れませんね」
「困ったものだ」
「いっそ自分がホウコクしに行きましょうか」
「ダメだ」
「四天王のトウニだ。用件を伝える。なんちて」
「袋叩きにされるだけだろ。お前を行かせると不安しかないからなぁー」
「自分スパイもできて薪割りキングやキンイロさんとも渡り合った実績あります。あと壁に張り付けます」
「実績の問題ではない、というか渡り合ったというほどじゃないだろ。そういうところが信用できんのだ」
「そすか。結構頑張ってるつもりだったんだけど」
「つもりで終わっているんだろう。はぁー、このキラキラさえ無くなれば金色に見つかることもないんだが」
「最近レンさんの髪、キラキラが薄くなってますよ」
「本当か!そうかようやくか...早く地味になりたい」
そうして喜びと金色を巻く打算を胸にレンは久しぶりに健やかに眠りについた。
翌朝。
「んー、いい朝だ。まるで輝いて見えるな。おうトウニおはよう。いい朝だな」
「おはよーっす。ん?レ、レンさん...その髪...」
「あん?髪がどうし...まさか、おい鏡あるか、いや待て。お前の顔が明るいのは何を反射しているんだ...うそだよな、な?」
「レンさん、自分、何も言えないっす」
「わたしは、わたしはいま...おのれ、おのれぇぇぇ、コンジキィィィー!」
「あらおはよ。なーにーそんなに興奮しちゃってもー、朝から最高潮じゃない。うふふ、キラメキが足りなくなってたから寝てる間にキラキラにしておいたわ」
「お前わかっててやってるだろう!」
「うふふ」
「おまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ...」
レンはいま、とても追い詰められていた。




