詩「化粧」
夏の海は化粧をしている
穏やかな波という面
そうか
水の皮と書いて波
波は皮だ、海の皮膚だ
僕らは海の表層を見ているだけだ
冬の海
その荒々しいじゃじゃ馬のような海原を
海鳥はカウボーイ気分で漂っている
うねる波はめくるなんてことをしなくとも
海の姿が見え透いて
僕らは単に怯えているというのに
秋も、そして春も
風が波にちょっかいをだすから
海の本性が分かりやすい
夏は風も避暑しているらしく
海の本性が僕らには分かりにくい
たとえば
「海の血液型はABO型と判明しました」なんてつぶやいたら
「何より面の皮の厚い人間が何をほざきやがる」と
恵比寿様やポセイドン様やネプチューン様から
クレームを受けるだろう
ただ浜から眺める夏の海は
やはりそれだけで少し涼しく感じられるのだ
美しいとも思うのだ
あるいはその本性を隠しているから
美しく見えるのかもしれない