第五話 英雄は誰よりも速く…
深野
「母は、いつも厳しかった…。
父は、まず俺に
感心もないようだった…。」
ー十年前ー
ノハラは戦争とは程遠い、
のどかな町並みが広がっていた
母さん
「閃!またこれこぼしたでしょ
しっかりしなさい!」
深野閃
「お母さんがしてよ!!」
父さん
「…。」
母さんとはいつも喧嘩していた。
でも母さんは厳しいけど誰よりも優しい人だ!
深野閃
「うんこ!くそ!」
母さん
「くそとか言わないの!
だっむ!とかカブロン!にしなさい!」
深野閃
「それはいいんや!!じゃあおかあちゃん
旅行いってくるね!」
母さん
「気を付けていってくるのよ!!
これ持ちなさい!」
母さんが俺にぼろぼろな
カラスのストラップを渡す…。
母さん
「あなた光ったもの好きなところがカラスと
そっくり!閃は、私がカラスの歌
歌いながらじゃないと眠れないでしょ!」
深野閃
「いけるわ!いらんわ!こんなん!
それよりスニーカーかってよ!
はやーく走れるやつ!」
といいながら俺は嬉しそうに
ストラップをかばんにつけて旅行へ向かった…。
これが最後の会話だった。
俺が帰ったときには
そこは跡形もなかった…。
第一次ノハラ空襲により
父も母も失った…。
そこにあったのは、
俺の欲しいといっていた
スニーカーだった…。
深野閃
「な、なんだ…この紙…。」
そこには紙が挟まっていた…
"閃!欲しいって言ってたスニーカー
買っといたよ!はやーく走れるやつよ!
これで誰よりも早く
駆けつけてかっこいいヒーローになってね!
お母さんより"
俺は涙を流しっぱなしで二枚目をめくった…。
"無邪気で馬鹿なお前が…まあ…好きだ。
また、笑顔見せてくれよ…。
父より"
深野閃
「父さんらしいな…ありがとう…ありがとう…」
うずくまってしばらく動けなかった…。
母さんはいつも言っていた…
"ヒーローは、かっこよさも捨てて
人を守れる貪欲な人を言うの"って…。
母さんも父さんも死ぬことは
理解していたのだろう。
旅行の明朝に
空襲の予告が来ていたらしい…
俺が帰ってきて、家がなければ
住む場所もないから…必死に守ってくれたんだ…
そんな憧れる
人たちみたいになりたくて…
深野閃は立ち上がる…。
ー"閃光"英雄ー
両親のように…
人を守れる英雄へ…。
技をいなし、
ボイルの喉元を突き刺す…!
ボイル
「まだ動けるのか…!化け物が…!ガハァ」
赤木
「深野さん…。もう動かなくても…」
深野
「現状、林少年にはまだ早いし、岡本も赤木も十分
戦った…。お前らは俺が守る!!」
赤木
「また、馬鹿なことを…笑
任せますよ!深野さん!」
深野
「おう!まかしとけ!」
深野閃は笑った…。
ー足"閃光"ー
ー灼"熱"ー…!
赤木
「互角か…。」
ボイル
「俺とここまで張り合うやつがいるとは…
末恐ろしいなノハラ…。お前の名を聞いておこう!」
深野
「俺は深野閃!深野愛と深野宗平の間に
生まれしもの!!俺は強いぞ!!」
赤木
「深野さん…。」
ボイル
「虚勢を張っている用にしか見えんがな!!」
ーアルミ"熱"ー…!
深野は雄叫びをあげる…!
ー"閃光"英雄ー
海が揺れるほどの衝撃破が響き渡る…。
赤木
「深野さん…。」
ボイルの脚が…
深野閃の頭を貫通している…。
林
「深野さん…?」
ボイル
「…。強かったぞ深野閃。」
海軍
「ボイル陸軍隊長!!
この船に乗ってください!」
岡本
「させるか!!」
ー攻撃"range"ー
船から何か飛んでくる…。
ー"虫"酸ー…!
林
「岡本さんの技が
相殺された…。」
岡本
「来てたのか…海軍も!」
赤木
「深野さん!深野さん!
なにしてんすか!起きてくださいよ!」
深野
「あぁ…赤木か…。
そんな顔すんなよ…」
赤木
「だって…だって…!」
深野
「弐番隊はお前に託した…。
死ぬときくらい…笑顔で見送ってくれや…。」
赤木
「だって深野さん!こんなのないっすよ!
死んだら…元も子もないじゃん!俺と一緒にこの島を正義の島にしようって!約束したじゃんか…。」
深野
「正義に向かってるさ…そこの少年も強いな…。
あとは経験だぞ!馬鹿になれ!
悩んだら赤木に相談しろ!
こいつはいいやつだからなぁ…」
赤木
「深野さん…!」
深野
「あぁ…もう意識が危うくなってきちまった…。」
目の前にモヤがかかる…。
母さん
「立派に守ったね!閃!
正義のヒーローだよ!よく…頑張ったね!」
スニーカーのひもが緩む…。
ゆっくりと深野閃の身体が…。
母さん
「かーらーすー♪
なぜ泣くのー♪カラスは…。
あら、閃!もう寝ちゃったの…
お疲れだね…。おやすみ…閃。」
身体はもう動かない…。
後輩たちを守りつづけた
その姿はまさに英雄だった…。
深野閃
「母さん…父さん…今いくよ。」
弐番隊隊長…深野閃…。
英雄としてこの世を去る…。