表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

山賊王に俺はなる!

作者: 藍染 迅

 俺の名はダフィー。山賊王になる男だ。

 ガキの頃に出会った山賊は、男の中の男だった。俺もあの人のようないかした山賊になる!


 おさなごころにそう決めて、今日まで体を鍛えてきた。


 そして、あの日――。偶然手にした「悪霊の実」。それを食べれば、不思議な能力を身につけることができると言い伝えられていた。

 何も知らず実を食べてしまった俺が得たのは、「ガムガム」の能力だ。


 俺は全身ガム人間となり、手足を自由に伸縮させることができるようになった。

 何だ、この能力?


「ま、いっか」


 食っちまったもんは仕方ねえ。俺はガムガムの能力を使いこなすため、体を鍛え、格闘術を磨き上げた。


「受けてみろ! ガムガムの鉄砲!」


 俺は腕を伸ばしてパンチを飛ばせる。当たれば岩を砕く威力があるんだぜ!


「当たるか、そんなもの!」


 よく考えてみると、投げた石よりも早いパンチなどあるわけがない。つまり、俺のパンチは飛んでくる石よりも簡単に避けられるのだ。


「うわっ! いてててて……」


 俺のパンチは剣や盾で叩き落とされた。酷い時には腕を斬り落とされそうになった。


「だ、ダメだ! こんな戦い方じゃ、山賊王になんかなれねえ!」


 俺は体中包帯だらけになりながら、どうしたらガムガムの能力を使いこなせるかを考え抜いた。


「心臓をポンプみたいに動かして、血を高速で流してみたらどうだろう?」


 超人的スピードで動き回れるようになるんじゃないか?


「ダメだ! ただの高血圧だった!」


 俺は次の案を考えた。


「体に空気を取り込んで、巨大なパンチで敵をなぐったら?」


 巨人のような威力を得られるのじゃないか?


「ダメだ! ただの風船だ!」


 クッションみたいに柔らかいパンチだった。


「くそうっ! ダメだ、ダメだ! はじめからやり直しだ!」


 毎日毎日、俺は「ガムガム」の能力について考え抜いた。そしてついに、俺だけの必殺技を開発したのだ。


 この技は無敵だ。明日こそ俺のライバル、タイムズ・スクエアを倒して見せる!


 ◆◆◆


「グハハハ! よく来たな、ガムくそのダフィー」

「ぐぬぬ。タイムズ・スクエア、今日こそおまえを倒す!」

「貴様のくそ能力で俺が倒せるものか!」

「馬鹿にするな! 俺の能力は無敵だ! 行くぞ、『ガムガムの鼻くそ』!」


 俺はタイムズ・スクエアと決闘していた。


「グハハハ! 何だその技は! 笑わせるつもりか!」

「何とでも言え! お前はすでに死んでいる!」

「ふざけるな! ダメージなど何も――うぅっ!」


 タイムズ・スクエアは顔をしかめると、胸を抑えて倒れ込んだ。


「親分! どうしたんですか?」

「親分たらっ! うわっ、死んでる!」


 子分どもがタイムズ・スクエアを取り囲むが、すでに手遅れだ。そいつは動かぬ死体だぜ。


「どうだ、わかったか? 俺の能力は無敵だ! 山賊王に俺はなるっ!」


 慌てふためくスクエア一味に向かって、俺は大見えを切った。


「うるせえっ! 親分が発作で倒れたのをいいことに、勝手なことをほざくな!」

「そうだ、そうだ! てめえなんかただの雑魚じゃねえか!」

「とっとと失せやがれ、葬式の邪魔だ!」


 子分たちはスクエアの死体を戸板に乗せ、アジトへ運んで行った。


「おかしい。なぜ俺を恐れない? 俺の即死能力『ガムガムの鼻くそ』が怖くないのか?」


「ガムガムの鼻くそ」とは、敵の心臓に鼻くそを送り込む能力だ。

 鼻の先っぽを糸のように細くして相手まで伸ばす。蜘蛛の糸よりも細い糸は肉眼では視認できない。


 極細の糸の先端は、気づかないうちに相手の胸に刺さり、心臓に達するのだ。

 それから俺は糸を通して、敵の心臓に鼻くそを送り込む。


 鼻くそは動脈をふさぎ、心筋梗塞を引き起こして敵を倒す。


 回避不能の必殺技、それが「ガムガムの鼻くそ」だ!


 ◆◆◆


「けっ! 鼻くそダフィーが来やがった」

「縁起が悪い! さっさとここから離れるぜ!」

「くわばら、くわばら!」


 俺は敵対する勢力を「ガムガムの鼻くそ」で倒してきた。だが、世間の連中は俺を「不運を呼ぶ死神」として扱いやがった。


「ちきしょう! 誰も俺について来てくれねえ!」


「ガムガムの鼻くそ」は仕組みを見破られたらお終いだ。心臓をガードした相手に技は効かない。


「俺の能力で倒しているのに、誰も信じてくれねえじゃないか!」


 死因(・・)を説明できない俺は、ただ嫌われて、のけ者にされるだけだった。


「こうなったら、また新能力を開発するしかないか」


 俺はまた部屋に籠って、「ガムガムの実」の新しい能力を生み出そうと考え続けた。

 そしてついに――。


「今度こそどうだ! 脳梗塞を引き起こす能力、『ガムガムの目くそ』!」



 目くそ鼻くそだった。


(完)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「ただの高血圧だった!」で笑いました。 ダフィーの山賊王への道はまだまだ険しいですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ