表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おやすみ前の宝石箱  作者: さくらるる
6/7

お星さまと少女


 お星さまがキレイな夜。たくさんの流れ星がキラキラとふりそそいでいます。


 ボクが原っぱで空を見上げていると、木のカゲから、ガサゴソ。音がします。


 よーくみてみると、ボクと同い年くらいの女の子がいるじゃありませんか。


 白いワンピースをきたかわいらしい女の子はキラキラと音を立てて、ボクのところにかけよってきました。


「はじめまして。わたしはながれ星。あなたのねがいをかなえてあげる」


 ボクはおどろいて目をみはります。


「ながれ星? キミはお星さまなの?」


「うん。わたしはお星さま。あなたのねがいをかなえることが、わたしのお仕事なの」


 ボクは知っていました。おじいちゃんのお家のあるこのあたりには、天使の伝説があるのです。星が落ちてくるほどうつくしい夜、天使が舞いおりて、人間のねがいかなえてくれる、という伝説です。


 つまり、この女の子は伝説の天使、ということになるのでしょうか。


「それはタダでかなえてくれるの? それとも、お金がかかる?」


 ボクはしっかり者です。ママから「知らない人にやさしい言葉をかけられても、すぐに信じてはダメよ。わるい人もいるのだからね」と言われています。


 もしかしたら、この女の子は天使のフリをしたわるい子かもしれません。だから、たしかめてみたのです。


「かからないよ。あなたにはわるいことが起こることはないわ」


「あなたには? つまり、キミにはわるいことが起こるというの?」


 女の子は、うーん、とうなり、考えはじめました。


「わるいことかはわからないけれど、お星さまはヒトのねがいをかなえると、消えてしまうの。だから、わたしも消えてしまうの」


「それは、すごくかなしいことだね。じゃあボクは、キミがヒトのねがいをかなえても消えないようにねがうよ。そうすれば、キミは消えなくてすむでしょう?」


 女の子は小さく首をふります。ゆれるかみから、キラキラと光がこぼれました。


「それはできないの。お金もちになる、とか、スポーツが上手にできるようになる、とか、そういうあなた自身をかえるおねがいしかわたしはかなえられない。かんたんに言うと、あなたにかんけいのあることしかかなえられないのよ」


 ボクはウデをくんで考えます。


「キミは消えたらどうなるの?」


「またあたらしい星として生まれかわるわ。そして、時がきたら、またヒトのねがいをかなえるの」


「生まれかわったら、またキミに会える?」


「どうかしら? 生まれかわるとき、わたしはすべてを忘れるわ。あなたのことも、そして、わたしのことも」


「それは、すごくさみしいね」


 ボクのムネの中にかなしみがこみあげます。お星さまはこんなにキレイなのに、運命というのはなんてつめたいのだろう、と泣きたくなりました。


「さぁ、ねがいごとを言って」


 女の子はそんなボクの思いをよそに、ほがらかにほほえみます。


 ボクは青く光る星空を見上げ、大きくいきをすいます。そして、ムネをはり、ねがいごとをするのでした。



 *



 星が落っこちてきそうなほど、うつくしい夜の日。色とりどりの星たちがまたたいています。


「こんばんは」


 原っぱの真ん中で夜空を見上げるひとりの女の子にボクははなしかけます。


「こんばんは」


 女の子はやさしいえがおで、ボクにほほえみかけました。そして、ボクの顔をじっと見つめて、


「……あら? どこかで会ったことがあるかしら?」


 と、ふしぎそうに首をかしげました。


「うん。会ったことあるよ」


「……ごめんなさい。わたし、ぜんぜんおぼえてなくて…。でも、なんだかなつかしいようなそんな気がするのよね」


 ボクは首を横にふりました。


「だいじょうぶ。それで、いいんだ」


 ボクが女の子に伝えると、女の子は「よかった」と言い、ホッとしたような安心した顔をします。そのえがおがとてもかわいくて、ボクのムネはポカポカしました。


 ボクと女の子はならんで、星のキレイな空をながめます。


「……あのね、じつはね、わたし、お星さまなの。あなたのねがいをかなえにきたのよ」


 女の子はさみしそうな声で、つぶやきました。うつむく女の子の目には、いっぱいのきらめきがたまっています。


「……うん。わかってる」


 ボクがそうこたえると、女の子は顔を上げます。どうして知ってるの?と、問いたい顔をしているのです。


 だけど、ボクは女の子が口をひらく前に、ことばをつづけました。


「……ボクのねがいはきまってるんだ」


 ボクは女の子の手をにぎると、女の子のキラキラとかがやくヒトミを見つめました。あまりにうつくしくて、ボクのからだのすべてがすいこまれてしまいそうです。


「それは、なぁに?」


 それは、とてもやさしくあまい声でした。ボクはいつまでもきいていたいと思いました。


 だから、ボクはこんどもまた、前と同じおねがいをお星さまするのです。


「またキミに出会えますように」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ