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おやすみ前の宝石箱  作者: さくらるる
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カラスネコのだいぼうけん

 

 ある町のはずれに、カラスの家族が住んでいます。

 パパカラス、ママカラス、お姉ちゃんカラス、お兄ちゃんカラス、妹カラスに弟カラス……。


 おや?


 1羽だけ、まったく見た目の違うカラスがいるぞ?

 よくみると、カラスたちに囲まれている1匹の真っ黒なネコ!

 黒ネコはカラスたちと楽しそうに話しています。


 どうやら、この黒ネコ、カラスたちの家族みたい。

 黒ネコがかわいいこえで、パパカラスとママカラスに話しかけます。


「パパ、ママ、お腹がすいたよ」

「そうね、そしたら、ごはんをたべにいきましょうか」

「うんっ!」


 黒ネコは大きな声でお返事しました。


「さぁ、みんな、そろそろ飛べるようになったかな?飛ぶ準備をして?」


 パパカラスは、クワッと大きな声で鳴き、大きな翼を、ばさっとはためかせました。

 ママも兄弟たちも、ばさっと翼をパタパタさせます。


 だけど、黒ネコはカラスじゃありません。

 必死に手足をバタバタさせますが、飛べません。

 そうしているうちに黒ネコの家族のカラスたちは、黒ネコをおいて空の向こうへ、飛んで行ってしまいました。


「えーん、まってよー!」

 黒ネコは必死で飛んでいく家族を追いかけます。


 だけど、家族の影は遠くなっていくばかり。

 ネコはとうとう疲れ果てて、泣き出してしまいました。


 こわいよ。


 さみしいよ。


 かなしいよ。


 ネコは1匹、お膝を抱えて泣きじゃくります。


 そんなとき、


「どうしたの?」


 物陰に隠れていたたくさんのネコがでてきて、声をかけてくれました。


「家族と離れちゃったんだ」


「家族?」


「どんな見た目をしているの?」


「ボクみたいに真っ黒で、目がきりっとしていて、大きくてカッコいい翼があるんだ」


「なにそれ。そんなネコはいないよ」


「ネコじゃなくてカラスだよ」


 黒ネコがそう伝えると、他のたくさんのネコが飛び上がりました。


「カラス!」

「カラスが家族なんて変だよ!」

「カラスが家族なんてなんておそろしいんだ!」


 口々にそう言いながら、ネコたちは離れて行ってしまいました。


 そして、黒ネコはまた1匹になってしまったのです。



「カラスでもボクの家族なのに」


 黒ネコは悲しくなりました。


 でも、泣いてばかりじゃいられません。

 黒ネコは立ち上がり、家族を探すことにしました。



 黒ネコは歩きます。


 森の中。

 毛づくろいをしているキツネさんにごあいさつ。


「よぉ、黒ネコの少年。一匹でお散歩かい?」


「お散歩じゃなくて、カラスのパパとママを探してるの」


「へぇ、キミの家族はカラスなのかい。おかしなことがあるもんだ」


 キツネが目を細めていいます。


「おかしくても、ボクの家族なんだ」


 黒ネコは胸を張って答えます。今度は怖がられたくありません。


「そうかそうか。カラスを探しているなら、町に行くといい。そこにはたくさんのカラスがいるぞ」


「ありがとう!」


 黒ネコはキツネさんにおれいをいうと、元気よく町へとむかいました。



 町の中。

 黒ネコをじっと見つめる、人間さんにもごあいさつ。

 あいさつをした女の子が黒ネコに向かって、小さな手を伸ばします。


「キミ、かわいいね。1匹なら、わたしの家族にならない?」


 黒ネコは首を振りました。


「ごめんなさい。ボクにはカラスの家族がいるんだ」


「そっかぁ。それは残念ね」


 女の子は黒ネコを優しくなでると、


「カラスさんたちなら、向こうの原っぱへとんでいったわ」


 と、教えてくれました。


 黒ネコはお礼を言って、原っぱまで走ります。



 原っぱの上。

 そこにはたくさんのカラスさんがいました。

 黒ネコはたくさんのカラスさんにごあいさつ。


「こんにちは!ボクのパパカラスとママカラスを見なかった?」


「残念だけど、見てないなぁ」


「そっかぁ…」


 黒ネコは悲しくて小さなため息を吐きました。


「よかったら、パパカラスとママカラスが来るまでうちでご飯を食べないかい?」


 優ご飯を持って誘ってくれました持って誘ってくれました。

 みんないいカラスたちです。


「ありがとう。でも、もう少し、探したいんだ」


 黒ネコは感謝の気持ちを伝えると、家のある方へ、ゆっくりと歩今まで見たことのない景色をたくさん見たことのない景色をたくさんみました。


 たくさんのネコ、キツネ、人間、そし家族以外以外のカラス。

 みんなすてきな子たちばかり。


「だけど、やっぱりボクは、パパカラスとママカラス、兄弟たちに会いたいよ」


 黒ネコはあきらめないで歩きます。

 みんなを探して歩きます。



 空の上から声が聞こえました上から声が聞こえました。


「いた!」


 黒ネコの家族のカラスたちです。


 家族カラスたちは黒ネコを囲んで、ギュッと抱きしめあいます。


「置いて行ってしまってごめんね」


「あなたがネコだってことを、飛べないってことを、ついつい忘れてしまっていたの」


「ずっとずっと探してたんだよ」


「会いたかった!」


 みんなで、強く強く抱きしめあいます。



 その日の夜。

 黒ネコは今日あったことを家族に話します。


「すごい。1匹でいろんなところに行ったんだね!大冒険だ!」


「さすが、お兄ちゃん、かっこいい!」


「あきらめず、粘り強いあなたは、立派なカラスネコね」


「そうだ!立派なカラスネコ!」


「すてきなカラスネコ!」


「かっこいいカラスネコ!」


 家族がたくさんほめてくれます。


 黒ネコは誇らしい気持ちになりました。


 黒ネコは今日から、カラスネコです。

 気高くかっこいいカラスであり、立派なネコなのです。



 次の日の朝。

 カラスネコは陸を走り、カラスたちは空を飛び、町へ行きます。

 今度は離れないように、みんなで目を合わせながら、楽しく、笑いながら、今日もお出かけするのでした。



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