プロローグ
夏
今でもよく覚えている、
10年前の夏、
公園、
この色んな遊具もあり子供がだいたいいつもいるのに今日は誰一人だっていなかった、
あの日はとってもよく晴れて暑くて暑くて、
子供も入道雲もみーんな暑くて家にいるんだろうな
そんなことを思ったことまで覚えている。
彼女がおもむろに草むらから何かを持ってきた、
投げた
近所の高校の野球部の落し物の硬球ボールだった、
私は受け止めて、また投げた、
甲子園を見たばかりでこんな重いものを投げたのかと感心した
それを受け取った彼女は思い切り投げた、
今度は何故か上に向かって、
それは思っていた私がよりもずっと、
高く高く上がり、
長い間上を、空を、見上げていたような気がする、
ボールは空で一旦、ふっと動きを緩やかにしたかと思うと、、
グングンと、
こちらに向かって、急速に近ずいて来る、
それをみるみるうちに吸い寄せられるように、物の見事に、
右上の前歯に激突した、
そして思い切り、欠けた
痛ったい、、当時はどんなリアクションをしたんたっけ、
嫌、でも、この後のこと私は
人生の中で1度も大きな怪我みたいなものをまだ味わっていない私が、10歳の私が、
前歯がかけた、という衝撃的な出来事があった事が、
全く別の思い出に変わる
そんなに出来事がこのとき既に起きていた、
そう、
見上げた空にはボールの他にもうひとつ
不思議な雲が浮かんでいた、