表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神頼まれる身にも成ってみろッ!  作者: 藤次郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/18

第三話「権力」

<――おみくじで大凶を引いたかれ

全知全能の力を以て、大凶を大吉へと変化させたのだった。


そして……今日も今日とて、悩める者達の願いを

優しき眼とその耳で等しく聞き届けて居た――>


………


……



「俺を……この国で一番偉い存在にして下さいッ!! 」


………


……



「来たよ……マジで自己中心的な奴の言う願い一位じゃないっけ? これ。


人の何倍も勉強し、地域や人々の事を考え、粉骨砕身の覚悟を以て

それでようやく政治家と成る権利が与えられると言うのに……


……とは言え。


現世を見ている限り、どの世界でも政治家と呼ばれる者には

一定数、愚かしい考えを持つ者が居る事も確かではあるが……


兎に角、政治家に成るだけでも狭き門だと言うのに

君は“一番”を望んだ……つまりは、大統領や国王と呼ばれる立場だ。


そんな大それた事をおいそれと叶えていては、神としての……」


<――今回の“願い人”に限らず

今日まで、数多くの私利私欲にまみれた願いを耳にし続けていたかれ

今回の神頼みも他と変わらぬ私利私欲が故の願いだと考えていた。


だが――>


………


……



「この国を……救う為にッ!!! 」


………


……



「……ん?


国を救うとは一体どう言う事だ?


一応詳しく聞く必要がある様だ……人工知能よ。


該当する世界の情勢と、彼の生い立ちを表示してくれ――」


<――青年の表情

そして、願いの“異質さ”を受け、神は眼前のモニターに向けそう言った。


瞬間――>


………


……



《《――命令を承認しました。


……該当する世界の情勢、及び

対象の生い立ちを詳細に表示します――》》


………


……



「……成程、これは酷い。


圧政を強いるだけに飽き足らず、民を民とも思わぬ悪政振り

ましてや……君は為政者らに兄を奪われて居たのか。


どうやら、君の住む世界には“愚かしい考えを持つ”政治家が多過ぎる様だ


……宜しい。


全知全能の神たる私の力を以て、君に

世界を導く為の力を与えよう――」


―――


――



「……この国も豊かに成った物だ。


そうは思わぬかね、侍女よ……」


「ええ……全ては国王様の手腕が故で御座います」


「ありがとう……だが、それは違うのだ侍女よ。


私はただ、この国の繁栄を願い幸せな民草の姿を……いや。


何よりも……もう二度と

兄の様な不遇の人生を送る者が出ない国を作る為

それだけを目標に動いて居ただけなのだ。


……遠き昔、まだ若く力の無い私が発した言葉に耳を傾け

私の発する言葉の全てを受け入れ、私に力を与えてくれた民達こそが……


……それこそが、現在の我が国が享受している平和のいしずえなのだ。


故に、私一人の力では無いのだ侍女よ。


此処まで来られたのは……」


<――天を仰ぎ

神に救いをうて居た頃より、幾許いくばくかの年を取り

白髪とシワの増えた彼は、城のバルコニーから城下を眺めつつそう話していた。


そんな中……これまで大人しく彼の背後に控えていた侍女は

突如として国王に“寄り掛かり”――>


………


……



「ええ……そうでございますね国王様。


ですが、その所為で失われる事と成った既得権益に対する――


“恨みは”


――決して貴方を許さないでしょう。


では……“永久に”おやすみなさいませ、国王様」


<――そう告げ

“国王の背に向け突き指した”ダガーを投げ捨てると

煙の様に、何処かへと立ち去った――>



――


―――


「何と言う事を……侍女かのじょは何故、彼ほどの聖人君子を……いや。


成程、政敵に雇われていたのか……しかし

彼の純粋なる願いを、高きこころざし

侍女きみが今日まで潜伏していた間、君に対し

あれ程目を掛けていた国王かれ

何故それ程まで冷酷に……無慈悲に裏切る事が出来たのか。


……無論、君だけの問題では無いのだろう

この国の深淵でうごめく、愚かしい政敵達ものたちの私利私欲にまみれた考えこそが

本当の原因であると私は良く理解しているつもりだ……だが。


物事には全て……大海へと通ずる川の様に“流れ”があり

物事には全て……責任と結果が付き纏うのだ。


……君や、君を雇った政敵達ものたち

“因果応報”と言う言葉の“恐ろしさ”を……良く、知る事と成るだろう」


<――全知全能、唯一絶対の神と崇められ

溢れんばかりの慈愛に満ち溢れて居る筈のかれ

この日、珍しくもあらわにした怒りの感情。


その怒りが故か……それとも、因果応報で有ったのか

何れにせよ……民を思い、そして凶刃に倒れた“願い人”の死後

“因果”は、この国の“新たな為政者”達へと降り注いだ――>


―――


――



「……ようやくだッ!

目の上のたんこぶであった前国王は、文字通り“永き眠り”についたッ!!

これで我々は再び!! ……ん?


……おい、給仕ッ! 酒が切れているではないかッ!!

早く注がぬかッ! 馬鹿者がッ!! ……」


「は、はいっ只今ッ!! ……」


「……全く。


さて……皆の者!

今日と言う新たな門出を祝し、改めて乾杯と行こうではないかっ!!


では、新たな門出を祝し! ――」


<――“乾杯ッ!! ”


直後、王の間に響き渡った新たな為政者達の声。


だが――>


………


……



「……うぐっ!?

がはっ!! ……何だッ……喉が……焼ける様に……熱……い……」


<――喉を押さえる者


激しく咳き込む者……苦悶の表情を浮かべ苦しみに藻掻もがく為政者達。


……やがて次々とその場に倒れ

新たな国王さえも今際の際を迎えていた頃――>


「……ようやくよ。


ようやく、かたきを討てた。


貴方は今、天国で……この場所を見ていますか?

少しでも気が晴れましたか? ……


……ほんの少しでもこの瞬間を見ていますか?


いいえ……見て無くても良い。


だから、せめて……成仏して居て下さいね。


私の……私の大切な“お兄様”……」


<――給仕服を脱ぎ捨て


一筋の涙を流しながらそう言ったのは


志半ばで凶刃に倒れた前国王の“妹”であった――>



――


―――


「……安心して良い。


彼は……彼の魂は、既に天国で次の人生への準備を進めている。


……だが。


“君”は……本当にそれで幸せなのだろうか?


全知全能とあがめられ、祈りを捧げられている私は

果たして本当に……君達人間を幸せに出来ているのだろうか?


それを知る為にも……私は、もっと多くの願いを聞き届けなければ成らない」


===第三話・終===

次回は4月30日に掲載予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ