第3話
2017年4月9日、朝6時、目が覚めた。今日は私の15歳の誕生日。久しぶりに、あの時の夢を見た。あの後は確か、よみさん?に、「あなたが保証したのだし、引き取りなさい」と言われ、うちで引き取ることになり、半年ほど首から下が動かなくなった私の面倒を見る手伝いをさせて、メイド長から合格が出た。すでにいなかった父や母、メイドたちだけでなく、メイド長すらいなくなり、屋敷には3人だけになったのだ。そのころ、彼に、「前の名を捨てて貴女に仕える者としての名が欲しい」と言われて、怪盗をやっていたということから元黒幕、それに汰を付けて元黒 幕汰と名を付けたのだ。あの時の元黒の微妙そうな顔はいつ思い出しても笑える。
・・・私は、いつもの時間になる前にルーレットを回し、飛行スキルを得て、元黒を驚かせることにした。
よし、スキルは9個だ。7か8が出るあたりで止めたはずなのだけれど・・・まぁいいか。運がいいと思っておこう。
よし、星数決め開始。1回目・・・3。あれ?
思ってたより早く止まるのかな?2回目・・・4。いい感じだ。
話で聞く限りではラグがあるって話だったけど・・・もしかして、意識だけで止めてるから?だから、危険なタイミングでスキルを決めると良い星数になりやすいって言われてるのかな?危険なタイミングで悠長に手で回してる暇はないし。
よし、ガンガンまわしちゃおう。
3回目・・・3。あれ?
4回目・・・3。お、おかしいなぁ。
5回目・・・5。よし。これが私の実力よ!
6回目・・・2。ごめんなさい調子に乗りました。
7回目・・・2。あぅ・・・
8回目・・・4。む・・・悪くないけど、もう一回5が出てほしいわね。次でラスト・・・後がない・・・
9回目・・・5。やった!
「どんなスキルが手に入ったかしら?ステータス!」
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Name)Sizaki Misaki
Sex)♀
number)238764982733
Lv)1
Rank)1
Party)empty
Pro)なし
HP)11
MP)11
SP)11
Atk)I-
Vit)I-
Tec)I-
M・Atk)E+
M・Vit)F-
M・Tec)D-
Agi)F-
Stm)I-
ECL)9
Luck)84
Skill)☆5飛行Lv10(Tec,Agi)
☆5念動Lv10(Tec,Agi)
☆4水魔法Lv8(M・Atk,M・Tec)
☆4魔力プールLv8(M・Vit,M・Tec)
☆3魔力操作Lv6(M・Atk,M・Tec)
☆3風魔法Lv6(M・Atk,M・Tec)
☆3火魔法Lv6(M・Atk,M・Tec)
☆2魔力視Lv4(M・Atk,M・Tec)
☆2土魔法Lv4(M・Atk,M・Tec)
【ランキング】
【マップ】
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「よし、飛行も念動もあるわ。まずは、毛布を動かしてみようかしら」
ふわっと毛布が動き、美咲は自由となった。
「うまくいったわ!そうだ、SPバー見えるようにしておこうかしら。1SP消費?レベル上げないとあんまり頻発できないわね・・・」
「まぁいいわ。次はメインの飛行よ!飛行!」
美咲が浮かび上がる
「発動で1SP使うのね。あとは時間経過で消耗するかどうかだけど・・・それよりも、元黒に会いに行っちゃおうかしら。厨房にいるわよね?」
美咲は念動を使い私室のドアを開け、厨房へ向かう。
その途中食堂の扉が開き食事をしている七海が驚いているのが視界に入ったが、スルーして隣の厨房の扉を勢い良く開ける!
元黒は調理をしていて、こちらを振り向かない
「七海、お嬢様がまだ寝ていらっしゃる。扉は静かに開けろ。そして今は料理中だから厨房に入るな」
どうやら七海が明けたと勘違いしているらしい。そろりそろりと近づき、包丁を置いたタイミングを見計らい、「わっ」と声をかけ、体当たりを仕掛ける。
「うおっ!?お嬢様!?」
「えへへ。おはよう、元黒。スキルルーレット、回しちゃった♪9個もスキルが手に入ったのよ?」
「お、お嬢様・・・」
「なぁーに?動いてる私を見て感動しちゃったのかしら?」
「いえ、その・・・」
「なによ。はっきり言いなさい?わからないわよ?」
「では・・・胸が当たっています。」
「ふぇ!」
美咲は顔を赤らめ、距離をとる。
「全く・・・お嬢様、動けない時から思っていましたが、いたずらっ子ですね。そして動けるようになると、そそっかしい・・・怪我をしないか心配です」
「うぅ・・・こんなはずじゃなかったのにぃ・・・」
「全く・・・それと、飛行スキルは10分ほどで1SP消耗しますから、気を付けてくださいね?」
「えっ?そうなの?それじゃあ、扉開けたりすること考えると、1時間も飛べないじゃない・・・」
「レベルを上げれば増えますし、扉を開けるごとに使うのはもったいないので私か七海をお呼びください。」
「むぅ・・・そうするわ。なるべく早くレベルを上げて、日常生活くらいは送れるようにしないといけないわね・・・!」
「では、明日ダンジョンに行ってみましょうか。私が必ずお守りいたしますので、G級に行きましょう」
「そうするわ!」
翌日、美咲は元黒とともに最寄りのG級ダンジョンである鮮色駅付近のゴブリンダンジョンに挑んだ。
元黒はこのダンジョンに何度か行ったことがあるらしく、正しいルートを知っていた。
「最初の分かれ道ですが、どちらに行ってもつながります。ただ、左のルートは合流するのと逆の左に行くと中身があまりよくない宝箱があるだけの小部屋につながっていますので、右に行くのが無難ですね。合流後には分かれ道はありません。」
「ふぅん、そうなの。ねぇ、元黒。」
「何でしょうか、お嬢様」
「私、その宝箱見に行きたいわ」
「承りました」
元黒が先行し、宝箱のある小部屋の前に着いたが、警官が立っていた。
「すみません、この先は宝箱があるだけの小部屋だと記憶していたのですが・・・」
「あぁ、この先の宝箱部屋を利用した性犯罪が発生してな。ダンジョン入口に注意札が立つまでは立ち入り禁止になっているんだ。悪いな。」
「そんなことが起こったんですのね。宝箱を見てみたくて来たのですが・・・」
「ん?嬢ちゃん、宝箱見たことないのかい?」
「ええ。見たことありませんわ」
「んー・・・入れることはできんが、扉を開けるなとは言われてないからな。ここから見るだけでも構わないなら開けるが、どうする?」
「・・・いえ、他の宝箱を見ることにします。ここは曰くつきのようですし、縁起が良くない気がしますわ」
「あっはっは、違いない。んじゃ、気をつけろよ。まぁ、そっちの兄ちゃんはそれなりにやれるみたいだから余計なお世話かもしれんがな」
「それなり、ですか。なかなか言ってくれますね。割と戦闘能力には自信があるのですが」
「んん?まぁ、覚醒一歩手前だろう?あんた、たしか1年位前によみの嬢ちゃんが追いかけてた怪盗君だろ?」
「っ!知られていましたか。」
「そんな警戒すんなって。俺も当時すでに覚醒者だったからな。話が来ただけさ」
「なるほど。そういうことでしたか。失礼しました」
「いいさ。そっちの嬢ちゃんの護衛だろう?気を張って構わんよ」
「あの・・・覚醒者とは、なんですの?」
「ん?あぁ、レベル500を超えて、特殊スキルを得たやつのことさ」
「お強いのですね」
「おいおい、嬢ちゃんみたいなかわいい子に褒められると照れるぜ。」
「その、お名前をうかがってもよろしいですか?」
「ん?いいぞ。粕窪・韋駄天だ。韋駄天の覚醒者さ。」
「韋駄天・・・」
「あぁ、最速だ( ・´ー・`)ドヤ」
「す、すごいのですのね。では、失礼します。お仕事頑張ってくださいまし!」
「おう!長々と話に付き合ってくれてありがとうな!」
その日、BOSSを何度か討伐し、翌日にはF級の鳥野ダンジョンにてホーンラビットの第2の壁に悩まされつつもレベルを上げ、美咲のレベルは50を超えた。
4月12日、朝
「お嬢様。少々よろしいでしょうか」
「なぁに?」
「自力で動けるようになりましたし、あの時の方々にお礼を言いに行く、というのはいかがでしょう?」
「・・・そうね。そうすべきだわ」
そういうわけで、美咲と元黒はクランデストロイヤーのクランハウスに向かうこととなったのである。
「ひ、広いのね。うちより倍くらいあるんじゃないかしら?」
「そうですね。ですが、中にいる人数が違いますので」
「お?黒じゃねぇか。今日は女連れかい?」
若い男性が話しかけてきた
「あら?元黒の知り合いの方かしら?ごきげんよう。私、彼、元黒の主である紫崎 美咲と申します。よろしくお願いしますわ」
「おぉ?黒の主さん?動けるようになったのかい?」
「元黒はそんなことまで話したのですか?飛行スキルと念動スキルを得て、普通に体を動かせる人と同じような生活が送れるようになりましたわ」
「そうかい!そりゃぁよかった。あんたの親の紫崎博士たちが必死で解呪法探してたが、スキル得て動けるようになるほうが覚醒者の呪い解くよりも早いわな。そりゃそうだ。俺ら全員思いつかなかったぜ。やだねぇ、頭が固いってのは。」
「えっと・・・お父様の知り合いですの?」
「んー・・・そろそろか」
「はい?」
「失礼します。そこのお嬢様とお連れの方、クランマスターが話があると言っているのですが、ご同行願えますでしょうか?」
「ふぇ?」
「!行きましょうお嬢様」
「え、えぇ、わかりましたわ。では、ごきげんよう、ってあら?さっきの男性がいらっしゃいませんわ?」
声をかけてきた女性に案内され、クランマスターの部屋の扉の前まで案内され、「ここでお待ちください」と言われた。
こんこんっと扉を受付嬢が叩くと、「はーいどうぞー」という若い声が聞こえた。
「失礼します。先ほど呼んで来いと命じられた方を連れてまいりました」
「いらっしゃ~い。俺がデストロイヤークランマスターの駆逐だ」
「ご、ごきげんよう。紫崎 美咲と申します」
「あぁ、知ってる知ってる。神名さんと黄泉さんからあの時も話聞いたしね。そっちが黒宮 礼二、いや、今は元黒 幕汰だったかな?いつもBOSSの討伐依頼ご苦労様」
「むしろ俺こそ、あの時はご迷惑をおかけしました。」
「ん?あー、いーよいーよ。あれがきっかけで神名さんがうちに来ることになったしね。むしろ感謝したいくらいだよ」
「は、はぁ」
「ところで、呼んだ理由というのは・・・?私、直接助けていただいた二人にお礼を言いたいのですが・・・」
「あぁ、理由ね。あと、あの二人は今両方留守なんだよね。」
「あ、そうなのですね」
「で、理由だけど、二人とも、デストロイヤーに入らない?ってこと。お嬢様はレベル上げなきゃだし、そうなると黒の今まで仮入クランだった理由はなくなるでしょ?」
「私はよろこんで入らせていただきますわ!」
「ふむ、俺も入って問題があるわけではない。お嬢様が入るというのであれば、入らせてもらう」
「よしよし。あ、それと美咲さん」
「はい?」
「知ってるって言った理由ね、もう1個あるんだわ」
「えぇと?」
「「俺は同一人物なのさ」」
「あっ!先ほどの!そういうことでしたのね!」
「それと、年齢的に次中3だろ?3年からでも中学に入ったらどうだい?」
「えっと・・・その気持ちもなくはないのですが・・・もう4月ですし・・・」
「ん?あぁ、鮮色中学の校長は知り合いでね。ちょーっと無理を言うくらいはできるのさ。だから安心するといい」
「では、よろしくお願いします」
二人は退出していく。
駆逐はスマホを取り出し、鮮色中学の校長に電話をする。
「あ、もしもし、こーあん?あのさ、いまから中3に1人入れてほしいんだけど?」
「え?今何月だと思ってるんだ、って?4月だよ?」
「こーあんならいけるいける。」
「そういうことでよろしく。あ!自分で歩けないしペンも持てない娘だから、スキルで飛んで移動するしペンもスキル使うけど問題ないよね。」
ピッ
「・・・ちょろいな」