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第4話

事情聴取室に入ると、深海さんとヴィドさん、金狐、そして金狐の尻尾で悶えさせられている少女がいた。


「・・・えーっと、これはどういう状況?」


「あぁ・・・駆逐さん、聞いてください・・・」


「どうしたんだいヴィドさん?」


「こーあんが、戦闘用に、と渡した一時的に妖力を高める薬を自分に使って尻尾をもふもふにして、戦闘時に自分の感覚を強化するための薬をその少女に使ってくすぐりの効果をあげるというよくわからない尋問に、俺はなんて注意すべきなんでしょうか・・・あと、こーあんになんて文句を言えばいいのでしょうか・・・」


「む!聞き捨てならんぞ!こーあんは、こんなに面白いものをくれたのだ!文句なんてあるわけがないじゃろ!」


「あん!もうやめてぇ・・・モフモフが・・・モフモフがぁ・・・」


「うーん・・・そうだね・・・注意するとしたら、もはやそのモフモフに対しての抗議しか言わなくなって尋問の意味がないことかな?」


「む・・・それもそうじゃな・・・」


金狐はようやくくすぐるのをやめ、少女は息を整え始める。


「こーあんには?」


「んー・・・悪用されうる薬を簡単に渡すな、とか?」


「なるほど、その手がありましたね。」


「阿呆な話ばかりしていないで、急いで聞くべき話を教えて?」


「あぁ、そうでした。依頼者は灰原。どうやら他国から電話で闇クランに依頼が来て、前払いでそれなりな額を口座に振り込まれたことにより、よくわからないが少女を攫う程度どうとでもなるだろう、と行ったようです。目的はシュブ=ニグラスの召喚、特定の場所に連れて行った24時間以内に招来されるとのことです。」


「ふむ。ところでその少女の余罪は?」


「スパイの情報が正しければ今回が初仕事ですね。」


「ふむ・・・なぁ、君。どうしてこんなことを?」


「その、僕、捨てられて、孤児院で育ったんだけど、その孤児院が闇クランに子供を売り払う場所だったみたいで、売られて、技術を習得して、初仕事で失敗して・・・あぁ・・・もうだめだ私はここで死ぬんだ・・・」


「・・・なぁヴィドさん」


「嫌な予感がするので聞きたくないです」


「お世話よろしく☆」


「聞きたくないって言ったじゃないですか!?今2人の世話してるんですよ!パズズちゃんはおとなしいからまだしも、金狐はやんちゃすぎて手を焼いてるっていうのに、これ以上なんて無理ですって!」


「・・・じゃぁ、この娘は放逐ってことで・・・あーあ、ヴィドさんが面倒見てくれないからこの娘は放り出されて、闇クランに見つかって、捕まって、依頼失敗っていうことでひどい目にあわされるんだろーなーヴィドさんが面倒見てくれればなー」


「ちっくしょう!そんなことは嫌なのでお世話しますよ!すりゃぁいいんでしょう!?」


「よろしくね~」


無事に丸く収まったと満足そうにしている駆逐に、待ったをかける声が1つ。


「その人の今後が決まったのは良いですが、本題はなにも解決してませんよね?」


そう、橙木である。


「そ、その、ごめんなさい!やらなきゃ殺されてたんです!罰なら」


「いえ、私の仮説が正しければあのままでは危険だった可能性があるので責める気はありません。本題というのは貴女に対しての罰ではなく、私が決まった場所に行っていない世界線でもシュブ=ニグラスが招来された、ということです。つまり今後この世界線でも招来され、破滅をもたらす可能性があるのです。」


その言葉に、駆逐はハッと何かに気付く。


「そういえば四変王集合令だしてないや。説明複数回するよりもこーあん以外の全員集まってからの方がいいよね・・・」


「そうですね。デストロイヤー内部の覚醒者の集合は私がしておきますので、外部の協力者についてはお願いします」


「あいよー」


数時間後、本来19時から始まる予定だった宴会が15時から始まると言われて思惑通りのこのことやってきた四変王達が捕獲されていた。


「面倒ごととか聞いてないし!宴会に参加しに来たんだし!帰らせろし!」


「そうや!今日は楽しむ気満々なんだ!」


「まぁまぁ、とりあえず事情だけでも・・・」


「断る。聞いたら感化されてやらざるを得なくなる」


「まぁ、俺は聞くだけ聞いてみてもいいとおもうがなぁ・・・」


「やっぱりりゅーさんはやさしいなぁ!あのね!明日の夜に手に負えない可能性がある化け物がこの区に出るかもしれないんだよね!」


その言葉に、4人は項垂れ、声をそろえて嘆く。


「「「「・・・やっぱり厄ネタだった・・・」」」」


「じゃぁ、そういうことなんで、それまでは宴会だ!」


「仕方ないし。パーっと騒いでちゃちゃっと仕留めてまたパーっと騒ぐし・・・」


「まぁ、敵を倒せば終わり、のようですし、マシ・・・」


「仏心なんか出すんじゃなかった・・・駆逐が分裂して俺らの分戦えばいいじゃないか・・・」


「・・・せや、粕窪さんに声かけて他の奴らも巻き込んだろ。」


「あ、こーあんには内緒ね?」


「ん?なんでや?」


「あいつ、事前に知ってたらほぼ確で逃げ出すでしょ?」


駆逐の、学長本人が聞いたら否定しそうな一言に、他の面々は同意を示す。


「ありそうやな・・・」


「絶対やるし・・・」


「間違いないですね・・・」


「・・・せやな、言わんとこ。粕窪さん達にもこーあんには秘密って言っとかなきゃいけないな」


数時間後、外部の覚醒者がそろったので、橙木についてなどの前提条件を説明し、駆逐が今回の敵についてどうすべきか話し始める。


「さて、ところでクトゥルフ神話のシュブ=ニグラスについて知ってることは?」


「何も知らないし。」


「たしか、クトゥルフ神話の神々の中で最も広く、数多くの信仰を集める神で、酷い場合は惑星ごと滅ぼしてしまう外なる神々の中で比較的、安心して召喚できる存在だったはず。対話可能で人間に好意的に接してくれるとされているから、問答無用で戦闘になるとは考えづらいのだけれど・・・」


「あれやろ?ティンダロスの猟犬の親やろ?」


「クトゥルフ神話とはまた、中二的な敵が・・・」


「また灰原だよ。真っ向から戦えば勝てるのに、こういう絡めてばかり・・・全く困った・・・」


「せやな・・・この間の本部襲撃の時もあの空間には自分たち以外を弱体化する術がかかっていたらしいし・・・」


「あ、そうだったのかし?道理で黄泉ちゃんがあんなのに負けかけたわけだし。」


「気付かないレベルで隠蔽されていたのが一番の問題だね。しかも本人は外国にいて根絶が難しい。」


「んー、まぁ、今回みたいな出来事が続けば、遠距離で呪い届かせれないこともないで?」


「んじゃ、今後はあいつを仕留めるために頑張ろう・・・」


「で、シュブ=ニグラスへの対処、どうするん?」


「うーん。案1、送還。案2、対話して帰ってもらう。案3、力ずくでたたき返す。案4、招来させない。このくらいかな?」


「1はできるあてあるん?」


「しんさん」


「俺!?無理無理!」


駆逐はやっぱりか、という表情を浮かべる。


「んじゃ案1は没、と。」


「そもそも対話できる状態ならさっき聞いたような惨状にはならないんじゃないかし?」


それもそうだ、と納得した。


「案2も没、と。」


「招来の原理わからないのに阻止できるん?」


確かに1日とそこらで解析できるわけがない、と残念そうな表情を浮かべる。


「案4も没、と・・・」


「ようするに、力ずくでどうにかするっていういつも通りの結論やな?」


結局そうなるのか、そう思った駆逐はため息を1つつき、力なく宣言する。


「まぁ、そうなるね・・・今日の内に英気を養って明日仕留めるぞ・・・」


「これ、マジで俺らもやらなきゃだめ?」


「いくら戦力がいても困らないので。楽勝だったら宴会再開ですから、協力お願いしますよ粕窪さん」


「しゃーないなぁ・・・」


ため息をつきながらそういう粕窪に、白髪の老人が言う。


「前回取り逃がしていますし、今回はきちんと働かなければなりませんね。前回の移動開始時に巻き上がった砂で役所の方々が砂まみれになった始末書の借りは私も返したいですし。」


「翡さん・・・ごめんて・・・」


「あはは、そんなことがあったのー?」


「電話で頼んできたのは駆逐さんですからね・・・」


そう言われ矛先が向きそうになった駆逐は、雑にごまかすことにした。


「ひゅ、ひゅっひゅひゅっひゅひゅ~」


「全く・・・」


「やれやれ・・・」


あれから約24時間後の5月7日16時、四変王達とデストロイヤーの覚醒者、粕窪とその部下一行は、地に伏していた。


「あぁ・・・」


「うぅ・・・」


「いたい・・・」


「もはやここまでかし・・・」


「まだだ・・・まだいける・・・」


「っく、私としたことが、自分のことを理解できていなかったか・・・」


そんな死屍累々とした状況の彼らに向かって、紫髪の少女が歩いて来る。


「やれやれ。全く。私がいないとやっぱりこうなるのね・・・」


「よ、黄泉さん・・・どうしてここに・・・?」


「あら、私がいたら何か不都合なのかしら?」


「「「「「そんなことはないよ」」」」


「・・・にしても、随分とまぁ見事に全員撃沈しているわね。意識を保てているのは四変王とえーすさん、粕窪さん、翡さん、深海さんくらいかしら?全く情けない・・・」


「黄泉さんだってそのうちわかるさ・・・この恐ろしさが・・・」


「・・・いい加減にしなさい!ちくわさんは泥酔したままもう潰れてる人に追加で飲ませようとしないの!しんさんはセクハラしようとしない!りゅーさんは絡むのをやめなさい!相手はとっくに寝てるわよ!根っこさんは表情を変えずに酔っぱらって寝ている男同士を絡めようとしない!駆逐さんは並列存在で喧嘩しないの!どうやったら自分同士で喧嘩できるのよ!えーすさんはしんさんを煽るのをやめなさい!粕窪さんは酔っているのに飛ぼうとしないの!翡さんは粕窪さんに張り合って飛ぼうとしない!二人ともフラフラじゃない!深海さん、そこに巫女姫サマはいません。酔っぱらって見えないものに文句を言うのはやめてください!神名さんは・・・狐枕で寝てるのね。やわらかくて気持ちよさそう・・・じゃなくてそれ女の子でしょう!金狐ちゃんは逆らえないんだからそういうことしないの!まったく・・・朝こーあんが修行つけるために離席するまではある程度良識を持ってたっていうのに・・・あ、漁師さん、起きたんですか?差し入れのお魚ありがとうございます。未成年組も楽しめました、じゃなくって、明日も仕事でしょう!こんな時間に酔っぱらってて大丈夫ですか!?いつも魚釣りは趣味で会社員だって言ってましたよね!もう!こーあん早く帰ってこい!」


・・・そう、皆、酒の魔力に敗北し、宴会前のまじめな話のことなど忘却してしまっているのである。


「・・・これ、どうしようかしら・・・いつもこーあんは確か・・・だめね、終わったら各自の家に放り込んでたわ。今回は役に立たないわね・・・」


「うぅ・・・頭痛い・・・あ、黄泉ちゃーん。えへへ、飲む?」


「巫女姫サマ、私は未成年です。」


「むぅ・・・いいじゃん。酒気飛ばせばばれないばれない」


「・・・できるのですか?」


「できるよ~?」


「では、この酔っ払いたちにお願いします。こんな有様では戦えませんから。」


「は~い!光闇流対酔っ払い術ぅ!その2!酒気剥奪(正気に戻る)ぅ!ちなみにその1は強制送還(ダイレクト帰宅)だぞ☆」


巫女姫の術が浸透し、酒気が抜け、目を覚ました後、黄泉が号令をかける。


「今回の敵は今まで戦ったことがないほど強大な存在よ。少しの油断が命取りになると思いなさい!」


「わかってるし!・・・でももうちょっとお酒飲んでも・・・」


「ダメです」


「(´・ω・`)」


「さて、橙木さん、場所はどこだったかしら?」


「鳥野山の中腹くらいにある洞窟です。」


「じゃぁ、行きましょうか」


「ん?こーあんを待つ必要はないの?」


「招来前に潰せるならそれに越したことはないでしょう?とりあえず現地に行ってみないとね。」


「それもそうだな」



約5分後の17時5分、今回の参加者たちは洞窟の前に揃っていた。


「さて、ここから這い出て来るのだったかしら?」


「はい、そうです」


「うん?這い出る?そりゃおかしくないか・・・?」


「どうしたんです?深海さん」


「シュブ=ニグラスが這い出るっていうのに違和感があってな・・・狭いだけなら人の形になって出てくればいいだけだろうし・・・」


「ふむ・・・確かに気がかりですね・・・」



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