第3話
ギギギギ、そんな音が出ていると感じる動きで、ゆっくりと駆逐さんが後ろを向き、震えた声で少女に話しかける。
「よ、黄泉さん?いったいいつから」
黄泉さん、そう言われた少女・・・え?黄泉さん?この世界線の最強?・・・駆逐さんのご冥福をお祈り申し上げます。
黄泉さんは口は笑顔であるが、目が笑っていない。
「たった今よ?宴会をすると聞いてクランハウスにきてみれば、なにやら不穏な空気がするからこの部屋に来たのだけれど・・・どういう話をしていたら私が人間じゃないってことになるのかしら?」
「それは、あれだよ、その、言葉の綾というか、ね?」
「目が泳いでるわよ。」
そう黄泉さんが言い、腕を振るった瞬間、駆逐さんの首は飛び、物言わぬ死体となっていた。
・・・え?今まであの化け物による死体は見たことはあるが、人間によって、目の前で殺されたのは、初めてで
そんなことを考えていると、黄泉が何もない空間に話しかける。
「ま、いいわ。駆逐さん、何が起こっているのか、話してちょうだい?」
何を言っているのだろうか。たった今、首を跳ねたのに。
「いきなり首跳ねるのはひどくない?ま、話すけどさ」
あれ?駆逐さんがいる?死んだはずなのに?どうして?
「あぁ、そういえばここには知らない人もいたのだったわ。ごめんなさい。簡単に言えば、この人、死んでも死なないのよ。私にとって、駆逐さんの首切りは強めのツッコミのようなものよ。」
意味不明な状況を理解しようとしている間に、駆逐さんが黄泉さんに現在わかっていることと仮説について説明した。そして、黄泉さんが口を開く。
「それ、こーあん案件じゃね?」
「ま、だよね。」
こーあんとは誰だろう?この件を解決できるのだろうか?黄泉さんと駆逐さんの意見が一致するということは、信頼できる人物なのだろうか?
「こーあん呼ぶか・・・」
「お待ちください。」
「うん?どうしたの深海さん」
「こーあんに話すのは、明日の、逃れることのできない状況の方がよいかと」
「なんで?」
「こーあんなら対処できるかもしれませんが、時間的余裕があれば逃げそうなので。」
えっ?それは信用していいの?
「確かに、あり得そうだ。じゃ、何時話す?」
「たしか明日は午前9時から午後6時まで宴会から逃げ、もとい弟子の修行で忙しいらしいです。いつ現れるかにもよりますが。」
あ、言うのを忘れていた。
「今までの世界線では、午後7時から午後9時のどこかです。」
「ふむ。6時に終わったとしても、問題はなさそうですね。」
問題なさそうでよかった。伝え忘れで死ぬのは嫌だ。
「19時から21時、ちょうど延喜法で言うところの戌の刻だね。」
「シュブニグラスで犬っていうと、”ティンダロスの猟犬”が浮かびますが・・・もうシュブ=ニグラス確定じゃないですか?わざわざその時間に召喚したのでしょう・・・そして、これ、ディルではない何者かが真犯人の可能性ありますよ・・・確か日本人ではないはずです・・・」
「・・・ロキ、いや、灰原じゃね?」
真犯人に心当たりがあるのだろうか?
「・・・ディルを従えていましたし、西に逃げて行ったんでしたね。戌の刻という考えを知っていても不思議ではありませんし。このような無駄なダジャレのようなことをやるかやらないかで言えば、やるでしょうね」
「やっぱりこーあん案件じゃないか・・・ん?待てよ?いま灰原が日本にいないのに起こるのか?」
「もしかすると、事前に明日のその時間に召喚されるような仕掛けがあるのかもしれませんね」
「でもそうなると、最初は未来が見えてたのがおかしくね?」
そうだ、もう一つの仮説を言い忘れてていた。
「その・・・」
「うん?」「どうかしましたか?」
「私を追ってきている可能性って、ありませんかね・・・?」
「いやいや、まさか」「流石に世界を超えては・・・来るかもしれませんが、執着される心当たりがあるのですか?」
「ありませんが、私が能力を得て記憶を取り戻した後から未来が見えなくなった、というのであれば、あり得ないと一蹴して良い仮説ではないのでは、と。」
そして私は一つ息を大きく吸い、続ける。
「妖怪が集まってきていて、他の回では即死んでいた、という仮説が事実なのであれば、妖怪は私が存在していることによってシュブ=ニグラス・・・が来るとはわかっていなかったにせよ、何かしらの危機を察知して私を排除しようとしていたのではないか、と思いまして。」
「うーむ・・・よし、手がかりに会いに行こう」
「「手がかり、ですか?」」「そんなのがあったの?」
「あぁ。橙木君を攫おうとしていた忍者君だよ。」
「そういえばいましたね。今はどこに?」
「ヴィドさん達が見張ってる。」
「では、行きましょうか・・・その前に、そこのまじめな話が理解できず途中から寝ていたポンコツを寝室に運びましょうか」
そう言い、深海が腕をつかむ。
「お、そうだね」
それを見た駆逐が運ぶのを手伝おうと足に手を伸ばす。
「ダメ」
黄泉がその言葉とともに腕を切り飛ばす。
「いってぇ!ちょ、なんでさ!」
「・・・あれよ。巫女姫さんだって女性なんだから、意識ない間に男性に触られるなんて嫌でしょう?そう思うわよね?」
駆逐の抗議に、黄泉は半ば暴論のような理由で返事をする。
「口で言えばいいじゃないか!痛いものは痛いんだぞ!?」
「思わず手が出ちゃったのよ。」
「酷くね・・・?」
「女性の体に気安く触ろうとするからよ」
「気安くって・・・お姫様抱っこもしたことある相手の足掴んで運ぶくらい問題ないじゃないか・・・」
「・・・今度は肩から切り落としておこうかしら。」
そんな話をしていると、部屋の扉が開き、一人の少女が入ってくる。
「あ、あの・・・ヴィドさんが、聞きだした中に急いで伝えなければいけないことがあると言っていたので呼びに来たのですが・・・お邪魔でしたでしょうか・・・」
その声に、駆逐は笑顔を、黄泉は苦虫を嚙み潰したような顔をする。
「お、パズズちゃん。邪魔じゃないよ!むしろ助かった!」
「ちっ」
「ひぅ・・・」
「こらこら黄泉さん。パズズちゃんが怯えてるじゃないか。」
「むぅ・・・」
「あ、そうだ。ヴィドさんが急いで伝えなければいけないって言ってたってことは、ほんとに緊急事態なのかな?こんな会話してる場合じゃないじゃんか!」
「・・・そうね」
「てか、巫女姫と深海さん、すでにいなくね!?」
そう言い、駆逐と黄泉、橙木の3人はパズズと共に拷m・・・尋m・・・事情聴取部屋へと向かった。
これは余談であるが、深海さんは、というと、言い合いが始まった時点でこれはここで待っていても時間の無駄だと判断し、しれっと担いで(※荷物のように)一人で部屋まで運び、先に事情聴取部屋についており、運んでから来た自分より後に来た駆逐達に呆れの表情を抑えることができなかった。
暗い部屋の中に、2人の少女と1人の男性がいる。
部屋には鉄でできた牢や鎖など、陰湿な雰囲気が漂うものばかりがあり、中でも血にまみれた樽が明らかに異質で不穏な空気を醸し出していた。
「さて、美琴、だったか?あの少女を攫った理由を、正直に話してもらおうか。」
「ひぅ・・・」
「怯えず話した方が身のためぞ?」
「わ、私は、先ほども言った通り攫ってこいっていう依頼が来たからさらっただけです!それ以上でもそれ以下でもありません!だから・・・もう、やめて・・・」
「ほぅ・・・?強情な・・・」
「ほ、ほんとうです!何も隠してません!あっ!」
「まぁまぁ、そんなに攻めても話さないと思うよ。その辺にしておいたら?」
「・・・思いのほか反応が楽しくてな・・・そら、追加をくれてやる!」
「あふん!やぁ・・・そ、そんな・・・本当に、何も知らないんですぅ!あん!」
「ふふ・・・そうだ、これがあった。こーあんからもらったこれを使えば・・・ふふ・・・さらに太くなる。ほぉら・・・これが欲しいだろう・・・?」
「ぁ・・・ゃぁ・・・」
「あいつめ、そんなものを渡していたのか・・・」
「必要になるときがあるだろう、と渡された。実に素晴らしい・・・」
「ぁ・・・ふぅ・・・ん!」
「腰が砕けてしゃべれなくなっては尋問の意味がない気が」
「んー・・・じゃぁ、これを顔にもくれてやろう。ふふ。」
「んん!」
「おいおい、そんな風に口をふさいだらしゃべれないだろう」
そう言われ、さすがに尋問の形を保たなければならないと判断したのか、忍び装束を着ていた少女をひっくり返す。
「・・・では後ろで我慢してやろう。ほれ、ほれ」
「ぁ!・・・ゃめ・・・ん!あぁん!」
少女は痙攣し、気絶する。
「ふん。この程度で気絶するとは・・・それほどまでに気持ちよかったか。」
「はぁ・・・また気絶させて・・・あんまり情報取れてない」
「依頼主が灰原で、とある場所に運べば術が完成し、シュブ=ニグラスが招来される、それだけで十分だろう?」
「・・・で、次は何を使って攻める気?」
「ぁ・・・もぅ・・・ぃゃぁ・・・」
「目覚めたか。今度はこーあんからもらったこの感覚強化の薬を使ってやろう。ふふふ・・・」
そう言い
「いや・・・やめてぇ・・・ん!」
「やめるわけがないだろう?ふぅ・・・」
「ぁ!んん!」
「ふふ・・・息を吹きかけただけでそのようになってしまうのに、コレを使ったらどうなってしまうのかな・・・」
「ぃや・・・やめて・・・もう、勘弁して・・・」




