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第2話

その返事を聞いた巫女姫は紫崎と藍田の方を向き、学長に尋ねる。


「よろしい。ところで、魔力の紡ぎ方教えるのはこの二人でいいんだよね?」


「はい。私や元黒君からでは教えにくいので・・・」


「そうですね。私も教えろと言われたら拒否します」


「んー、まぁ、仕方ないか」


その会話の後、学長の車椅子を元黒が押しながら退出する。


「どういうことですの・・・?」「えーっと・・・?」


二人が拒否する理由がわからず、首をかしげている紫崎と藍田に、巫女姫が笑みを向ける。


「習うより慣れろ、これが魔力の練り方の伝授方なんです」


「そう言われましても、そもそもやり方がわからないのですが・・・」


巫女姫は紫崎の両手を掴む。


「まぁ、こういうことです」


「え?・・・あアぁぁあ"ァ!?」


巫女姫は不意に叫び声をあげた紫崎から手を離し、藍田に手を伸ばす。


「さて、次はあなたですよ?さ、手を出して?」


「ちょっと待ってください!」


必死の形相で停止を望む藍田に、巫女姫は首をかしげる。


「はい?」


「何をするんですか!?」


そういえば説明するのを忘れていた、そう思った巫女姫は軽く説明することにした。


「私があなたの中で魔力を紡ぐだけですよ?」


「そ、それでこんなに絶叫するんですか・・・?」


「感じれないモノを感じれるようになるので、それなりに不快感がありますからねぇ。まぁ、絶叫する人だけではないので安心してください?というか、絶叫する人よりもそうじゃない人の方が多いからあの二人は拒否したんでしょうし?」


「どういう・・・」


思考に意識を割いた藍田の手を巫女姫がさっと奪い、握る。


「ま、やればわかりますよ」


「え、ちょ、ま・・・あふぅ!あぁぁ・・・んん!?ふぇぇ・・・」


「ま、こちらの方が多いですよね。さて二人を呼びに行かなくては」


体内に感じた途方もない違和感にかき回され、魔力が生じたことにより感情が乱れた2人が気絶から目覚めた後、巫女姫は元黒と学長を呼びに行った。


「酷い目にあいましたわ・・・」


「ほんとですよ・・・もう、死んじゃうかと・・・」


他者によって魔力を紡がれた二人がそう嘆くのを聞き、学長が言う。


「ま、これで魔力を紡ぐことができるようになっていると思うよ?これ以外の習得方は・・・3つしか知らないからね。」


「学長殿?このような方法以外で習得できるのであれば、そちらのほうがよかったのですが・・・」


「そうですよ!もしかして、女装させたことを根に持ってるんですか!?」


「女装させられたことについては怒っていなくもないけれど、そんな理由でこの方法を選んだわけじゃないよ?他の習得法が、長期の修行、命の危機、他者からの継承なだけで。長期の修行は修行だけに専念すれば約1か月、他のことをしながらであれば大体半年ほどかかる。学生の君たちにそんな時間はないだろう?それに、命の危機は確実ではない。最後の他者からの継承は、魔術師が死の間際に自らの命を代償にして他者にすべての知識を継承させる魔術だからね。不可能なのさ。わかったかい?」


それを聞いた紫崎はため息をつき、藍田は少し顔を青ざめながら言う。


「不可能なのなら最初から言わないでくださいまし!」


「そーですよ!・・・って、怒ってるってマジですか?」


「マジマジ。もーね、ほんと激おこぷんぷん丸だよ激おこぷんぷん丸」


そんな中、カシャッという音が響く。恐る恐る、学長がその音がした方を向く。


「・・・巫女姫サマ?何やってるのかな?」


「ん?駆逐さんたちに写真送ろうかな、と思って?」


「ちょ、やめなさい?」


「やだ!前に四変王の人たちが悪ふざけして計画してたあん子ちゃんって、こーあん子から名前とったんでしょ?まさしくこれじゃん!いやぁ、こんな面白いことになってるとは思ってなかったよ。」


「・・・はぁ・・・これだから呼びたくなかったんだ・・・知り合いの女性で魔力紡げるのが黄泉さんとちくわさん、巫女姫サマだけだから一番忙しくない人に声かけざるを得なかったって言うのに・・・元黒君の妹ちゃんが習得してくれてればなぁ・・・」


そんな学長の嘆きに、元黒が呆れを隠そうともせずに言う。


「あぁ、あいつは修行を拒否しましたからね。それにしても、学長の交友関係狭すぎじゃありません?一族の長なのに魔力紡げる女性の知り合いが3人って・・・」


元黒の、一見まともに見える指摘に学長はため息を1つつき、言う。


「あのね、いいことを教えてあげるよ。」


「はい?」


「うちの一族、つい10年ほど前に私が長になるまで男しか術を習得することが禁止されてたんだわ。だから、だーれもいないんよねぇ。」


「10年もあれば1人くらいいるのでは・・・?」


「私が長になるまでは男は全員術師、女は次代の男を産むための存在、っていう古臭い習慣が横行してたからねぇ・・・先代が戦死して、私が10歳で長になった後も長老共はそのままにしようとしたが、私がぶっとばして変えたのさ。ま、結局男性の大半は家族と一緒に他の古臭い考えを改めれない一族に移籍してしまったし、フリーの女性は皆社会に旅立っていったさ。で、残ってるのは独身の男ばかり、ってね。ははは・・・はぁ・・・あの当時、私は思いを寄せていた女性が本人の意思にそぐわない結婚をする、という話をきいて古臭い慣習を変えたっていうのに、あの人は私の思いに気付かず」


「学長!私が悪かったですから!そんな暗い顔をして延々と昔話を始めるのはやめてください!」


元黒が話を遮ると、学長はハッと何かに気付いたかのように顔を上げ、謝罪する。


「すまんね、元黒君。ついうっかり。ま、まぁ、そんなわけで私の知り合いの魔力を紡げる女性は3人しかいないってわけだ。」


「その、先ほど3人と聞いた時も不思議に思ったのですが、四変王の中の女性のもう一人である根っこ様は魔力を紡げないので・・・?」


「ん?紡げるよ?」


「3人ではなく4人ではないですか?」


「怒らせちゃって顔合わせたらぶん殴られるから怒りが静まるまで知り合いから一時的に外れてるのさ。」


「・・・また怒らせたんですか?私と会った宴会の時も怒らせてませんでしたっけ?」


「性格的な相性がきっとよくないんだね。ついうっかりぽろっと本音を言っちゃう私の性格が嫌いなようだよ。」


「まぁ、学長はそういうところありますからね。」


「否定してくれてもよくない?」


「事実ですから。」


「10歳から長やってるからしかたないんですー。」


「あー、はいはい、そうですね」


「そうだよこーあん、わかってるんだし治そうとしましょ?」


「やです。」


「まったく・・・ま、私のやるべきことは終わったし、帰るね?術教えるの頑張ってね~」


そういうと巫女姫は空間を繋げて帰ろうとする。


「「ありがとうございました!」」


「私の代わりをお願いしてしまい、お手数おかけいたしました。」


「ありがとね~・・・って、ん?何か忘れてる気が・・・」


学長が何か要件があった、という反応をしたため、帰ろうとした巫女姫は立ち止まる。


「ん?こーあん、どうしたの?」


「あ!念動のスキルオーブ!巫女姫サマが持ってくることになってなかったっけ?」


それを聞いた巫女姫はハッとした表情をする。


「・・・あ!忘れてた!」


「まったく・・・今気づいてよか」


「そもそも持ってきてない!」


「えぇ・・・」


その時、巫女姫が開いた空間から蒼い髪の男性が出て来る。


「そうだね、忘れていったね。机の上に置きっぱなしになってたから取りに戻ってくると思って待ってたけど、随分と遅かったね?」


「あ、深海さん、お久しぶりっす。」


「こーあん君、随分と愉快なことになってるねぇ。あ、これ念動のスキルオーブね。」


「ありがとうございます。わざわざ運んでもらっちゃって・・・あと、こうなろうと思ってやってるわけじゃありませんからね?」


「気にしなくていいよ。そこのポンコツが忘れていっただけだからね」


「ポンコツ言うな!」


「あぁ、はいはい、そうですね。早く帰るよ。この後の用事もあるんだから。」


「そうだった!じゃ、またね!次会うのは、こーあんは6月の最終日曜日の集会で、かな?他の人は、天のみぞ知るってやつだね!」


そう言い二人が帰っていった直後、学長は悲鳴を上げる。


「あぁぁぁあ・・・そうだ、アレがあと2か月もしない内にあるんだ・・・めんどくせぇ・・・」


「アレとは?」「アレってなんですの?」「アレってなんですか?」


「あぁ、族長会議っていうのがあるのさ。古くから日本にある術の使い手たちの長の集会がね・・・ちなみにそれの代表がさっきの巫女姫サマだよ。本来は出歩けない立場だったのを、駆逐さんが頑張ったのさ。」


「そうなのですのね。その会議が嫌なのですか?」


「あぁ、とてつもなく面倒でね・・・む、待てよ?」


「どうしたんです?」


「いやなに、私はこのような体になってしまっただろう?」


「そうですね」


「では、一族解散させてもいいんじゃないかな・・・あのむさくるしくてしぶと、じゃなく頼もしい男どもなら在野の術師になっても生きていけるだろうし、うちの一族の術は10年前に出て行ったやつらが引き継いでくれるだろうし・・・」


「えっと、それは問題ないんですか?」


「あぁ、族長としての秘術が一子相伝であるが、それは藍田君、君に教えることにしたよ。」


「えぇ!?」


「誰かに教えなきゃいけないってなると、あの身体強化と自己暗示で殴り掛かる脳筋共には教えようがないから困ってたんだが、弟子なら教えてもかまうまい!名案じゃないか!」



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