第3話
「さて、話はおしまいだ。」
「えっ?その、光闇流の技は・・・」
「あぁ、藍田君、すまんね。また今度見せてあげるよ。今はそれより優先すべきことがある。」
「どういうことですの?」「それはどういう・・・」「どういうことだ?」
「そうですね。招かれていな客人をおもてなししなければならないですから」
「元黒君、今すぐ逃げなさい」
「え?なぜです。私も・・・」
「この部屋を空間隔絶して外との隔たりを作っているからわからなくて当然だが、相手は覚醒者だ。あれから力をつけるのをやめた君では、どうにもならんよ。」
「なっ!?」
学長は学長室の窓に向けて手から何かを放つ。
「ぐっ!?ばれていたか!だが、この私、ダンジョン解放連盟七幹部のディル・バンパイア様が貴様らを屠ってやる!七幹部となって初めての仕事の場にあのときの贄とクロがいるとは、因果なものよ!」
それを見た学長が手で九字を切る。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前、塞げ。」
学長が展開した結界によりディルのいる方向の壁が塞がれる。
「む、これはよろしくないな。元黒、3人を連れて逃げろ!私では勝てるかわからん!」
「っく、仕方ありません、行きますよ!」
「は、はい」「わかり、ましたわ」「お、おう」
それを聞き、逃がすまいとディルが結界を殴って壊そうとするが、破れない。それに怒ったのか、魔法を発動する。
「ふん!なかなか固い結界ではないか!だが、物理結界では魔法は防げまい!業火魔法Lv3、フレイムアロー!」
ディルが放った矢が学長が張った結界にあたるが、まったく傷つかない。
「ど、どうなっている!?」
「ま、この結界は、黄泉さんにすら破れない結界だ。君ごときに破れるはずがないだろう?おとなしく引いた方がいいと思うよ?」
「くそ!なめるな!」
怒り心頭のディルだったが、とあることに気付く。
「この結界は、1面にしかないではないか!ふふ、どうやらこれは1枚しか張れないようだな。それに、形も変えれぬのか?はん!回り込めばいい話ではないか!」
「っち、気付かれたか。だが、まぁいい。逃げる時間は稼げただろ。」
「な!?しまった!覚醒者共が出払っている今が絶好のチャンスだというのに!貴様、許さんぞ!」
「許してもらう必要はないさ。それに、他の覚醒者が出払っている間の防衛を一任されているのだから、こうなることは必然だったのさ。」
結界を回り込んだディルが、学長に怒りをぶつける。
「ふん!このロキ様から授かりし神器で今すぐに貴様を殺し、任務を遂行してくれるわ!いでよ!神器・吸血の剣!」
そう言い、剣を振りかぶり、学長に切りかかる。
「魔術のことをかけらも知らされていない、ロキの阿呆の部下如きが、私に勝つ?笑わせるな!防げ、神器・絶対なる盾!」
ディルの剣が学長に迫るその瞬間、光り輝く盾が出現し、ガキンッ!という音を立てて弾く。
「っく!貴様も神器使いか!」
「あ?当然だろう。私を誰だと思っているんだ?」
「貴様のことなど知らぬわ!」
それを聞き、すこし落ち込みながら学長は言う。
「っく・・・この我に精神攻撃を仕掛けるとは、なかなかやるではないか!我こそは!在りし日に聖光大帝と呼ばれし強者にして過去にロキを従えし者なり!ロキ以下の貴様に負ける筋合いはない!」
それを聞き、ディルは驚き、思わず言葉をこぼす。
「なっ!?では貴様が、方針が合わずにロキ様が抜けたという、ダンジョンを民間に開放しようとした聖光教団のトップだったというのか!」
「うっ・・・聞いてるのかよ。私の黒歴史を聞いてるなら生かしちゃ置けないな!」
「なっ!?今貴様、名乗ったではないか!」
「あ?そんなん、カマかけに決まってんだろ。あいつめ、私を裏切るどころか、黒歴史を拡散するとは・・・やはり仕留めておくべきだったか。」
「ふん!ロキ様から伝えられた要注意人物の中に貴様はいなかった。それに、私の気配察知によるレベル差の把握で格下であることが分かっているのだ!そのような口先でどうにかなると思うな!」
そう言い、ディルは学長に手を向ける。
「食らうがいい!我が奥義を!」
「はっ!てめぇ如きの奥義なんぞ効くかよ!」
「くそっ!なめるな!魔力操作:業火魔法Lv7 フレイムジャベリン+濃霧魔法Lv1 ハイフォグ+溶鉄魔法Lv1 アイアン=フレイム・ハイフォグ・アイアン・ジャベリン、改め血魔法ブラッドジャベリン!いけっ!」
その紅い鉄の霧を纏った槍が学長に向かって飛ぶ。
「なかなかに練度が高い、だが無意味だ。私に魔法は効かん。虚無魔法Lv4 ヌラシールド」
槍が学長の前30㎝ほどに近づいたその時、何か見えない盾でもあるかのように当たり、吸い込まれるように消えていった。
「なっ!?虚無魔法だと!?」
「あぁそうさ。私は虚無魔法の使い手ゆえ、魔法は効果を成さない。そして、神器による攻撃は絶対なる盾で防げる。さぁ、どうする?今帰るというのなら見逃すぞ?」
「っく・・・待てよ。はは!危うく騙されるところであったわ!貴様、攻撃手段がないのであろう!であればどうとでもなるわ!」
そういうとディルは剣を再び呼び出し、切りかかる。学長は苦い顔をし、悪態をつく。
「っち。仕方あるまい。その通り、私には貴様に効果がある攻撃手段はない。しかし、盾で防いでいては私のSP切れの方が早いな。こい、不壊の剣!」
「なっ!?デュランダルだと?攻撃手段が・・・」
「ねぇよ畜生!切れ味の方の伝承ではなく岩に叩きつけても壊れなかった部分から生じたデュランダルだからな!」
「は、ははは!そのまま勘違いさせておけば、我は逃げたかもしれんぞ?」
「はん!よく考えれば私はこの町の防衛をしなければならないことを思い出したのでな!貴様を野放しになどするものか!あいつらが帰ってくるまで戦い続けてやるさ!」
「ふはは!その心意気やよし!必ず殺して任務も遂行してくれるわ!」
その瞬間、「ポッポー ポッポー」という音で学長室にある鳩時計が12時を告げる
「ん?なんだ?」
「鳩時計だ、気にするな!」
そう言い学長は切りかかる。
「ぬっ!?小癪な!」
「はっ!よそ見をする方が悪いんだよ!俺との戦いに集中すれば他は何も気にかからないし、時間なんて気にならないだろう!」
「その通りだ!行くぞ!」
そう言い切りかかってくるディルを見て、学長はほくそ笑みながら、「無事催眠にかかった」とつぶやいた。
ディルの槍を学長が弾き、その体のブレという隙を見逃さずディルが遅延させていた魔法を放つ。そして学長が素早く詠唱し生じた盾により防ぐ。2人は、これを幾度も繰り返し続けていた。
このままではやがて自身の魔力が先に尽き押し負ける、そう俺は現状を理解し、打開策を考える。
誘導の影響でディルが俺を無視してあいつらを殺しに行くことはないが、俺が死んだらその効果も切れ、あいつらも死ぬだろう。救援が間に合う確率は低い。
魔術関連の技法ではレベルが上回られている以上、総エネルギー量に劣っていることは明らかなため、攻撃したとしても勝ちきれない。
早く殲滅が終わったとしてもここに来るまでにはあと1時間はかかるだろうが、想定以上に消耗が多く、計画していた半分の10分ほど持てば御の字である。
このことを悟られては、誘導に気付かれる恐れがある以上、余裕がある雰囲気を出す必要がある。
で、あるのであれば、魔力が残っているうちに切り札を切るほかないだろう。
そう考えた学長はディルの気のゆるみを見逃さず魔法を放つ。
「光魔法Lv7 ライトジャベリン!」
「ぬっ!?」
やれやれ、我としたことが、守り一辺倒であったために自身の防御のことを一切考えていなかったわ。
慢心は隙となり、命取りであるとロキ様に何度も中位されている以上、この場でこの者をしっかり殺して、任務を・・・ん?なぜこの者を殺す必要が?この者を放置し任務を遂行することに何ら問題は
その思考にとらわれ攻撃の手を数瞬止めたディルに学長は手を触れ、呪術を発動する。
「隙あり、光闇流呪術・奪音・・・ここはどこの 細道じゃ」
前半の部分を強調して言い、後半の部分はディルには聞こえない大きさで呟く。
「しまっ!?」
その瞬間、ディルは自らが発する声すらも聞こえなくなってしまった。
「ちっと、通して 下しゃんせ」
そうつぶやき、これで少しは楽になるな、と考えた後、速やかに距離を取ろうとする学長の腕をディルが掴む。
学長は驚き、声が出そうになるが、堪え、キッとディルをにらみつける。幸い、ディルに学長がかけた音を奪う呪術は効果を成しているようで、何ら不自然に思わずディルは誇る。
「我から音を奪うか!だが、我にはロキ様より賜りし呪いがあるのだ!」
そうディルは言うと学長の腕を引く。
ステータスの差により倒れこむ学長の首をディルが両手で掴む。
その手から禍々しい黒い帯が学長の首に移動し、縛り、消える。そして、ディルが手を離すと、学長は倒れてしまった。
「この子の七つの お祝いに!」
まるでディルに対して悪態をつくような口の動かし方と表情で、学長はまた何かを唱える。
「ははは!これで貴様もあの小娘のように動かずの呪いの影響下に入った!この戦い、我の勝ちだ!」
学長が自身を罵っているのかと考え、自分の勝利を確信したのかディルはその呪いについて話し始める。
「これは我が覚醒者となり、ロキ様の配下となったその時に我のために用意してくださった呪いなり!これこそが我が他の者より気にかけてくださっている証拠であり」
そういうディルに対して学長は嘲るような表情で
「お札を納めに まいります。」
という。いまだディルは音が聞こえない故に表情から読み取った嘲りの感情に怒りを覚え、学長を蹴る。
「貴様!我を愚弄するか!」
それに対し、学長は、気が狂ったかのように笑い始める。




