第2話
ステータスを見て生じた疑問が解決した紫崎は、ふと、当初の目的をまだ達成していないことに気付いた。
「その、学長様」
「うん?なんだい?ほかに疑問があるかい?」
「いえ、その、そもそも私たちは元黒が見せてくれた光闇流の技を本来の形で見せていただくために尋ねたのですが・・・」
学長は顔をゆがませ、ため息をつく。
「・・・はぁ・・・やっぱり、誤魔化せてはくれない感じ?」
「えぇと、それはどういう・・・?」
「いやね?あの技たちはね、私が高校生の時に考えた技でね、その、俗にいう中二病時代の黒歴史というやつなのさ。」
「高校生時代に?その、失礼ですが、今の年齢をお聞きしてもよろしいですの?」
「ん?あぁ、そうか。私は今19歳だよ。私はダンジョン区特殊教育法によって『学長』になっているだけであって、教員免許は持っていないし、何かを教えることはないんだ。ただ単に、中学生でダンジョンに潜って高ステータスになった者が学内でよろしくない行動をしたときに取り押さえるためだけにいるからね。」
「そういうことでしたのね。」
「そうだ、私がなぜ学長になったのかの話を」
「光闇流の技を見せてほしいです!お願いします!」
「お、おう、藍田君、随分と食い気味に・・・どうしてだい?」
「私、光魔法も闇魔法も持ってるんです!なので、自分の戦闘に役立てれないかな、と・・・」
「あー・・・そうか。だがね、うーん。そうだ、元黒君」
「なんです?」
「君の隠形術については話したのかい?」
「隠形術・・・?」
「あぁ、紫崎家に仕えるモノ達が習得している技術だよ」
「あぁ、あれですか。話しましたよ」
「では、話してもかまわないかな。実はね、この世界には、スキルが生まれるずっと前から、謎の力が存在しているんだ」
「力、ですか?」「そんなこと聞いたことすらありませんわ・・・」「うん?どこかでそんな話を・・・」
「うん、緑川君の草薙流剣術、それにももちいられているよ。太古の昔より存在し、陰にあり続け、秘匿されていた力が存在するんだ。」
学長は言うべきか躊躇い、告げる。
「そして、その力の具現化と言える存在がいる。日本では妖怪、海外では幻獣・魔物と呼ばれた存在達がね。この力はMPとは異なる力であるにも関わらず、互換性を持っているんだ。」
「互換性、ですか?」
「あぁ。この力を魔力と呼称することに最近各国の闇に生きるモノ達の首領と陰にあった存在の責任者による会議で決まったのだがね。この魔力を練るとMPに、MPを分解すると魔力になることが判明したんだ。私たち陰にあった存在は原理がよくわからないままに体内にあるエネルギーから魔力を紡ぎ、術を行使していたんだよ。」
それを聞き、ふと、紫崎が何か思い至ったのか、声を上げる。
「まってくださいまし!」
「うん?どうしたんだい、紫崎君。」
「その陰にあった存在の方々は、ダンジョンに潜りMPが増えればさらに強くなるのではありませんか!?」
「そう、人の持つエネルギー、魔力はすべての人間が一定で、不変のものであるといわれていたが、ダンジョン発生後、ただ単に全人類の初期MPが11であるだけということが判明し、皆ダンジョンに潜った。それが各国のトップと、この国の一部のトップ勢さ。この国は不思議なことに覚醒者の中にすら魔力を知らないものがいるがね。」
学長は深くため息をつく。
「そして、何よりの問題は格に2以上の差が存在していたとしても魔力を用いた技はダメージを与えれるということなのさ。」
「えっ?」「そんな・・・」「・・・そうなのか?」「そうだったのですね。道理で・・・」
「あぁ、そこの力の使い方をなんとなくとはいえ理解している二人は、悪用しないようにね?悪用すると灰原・・・いや、ロキ君のように指名手配されてしまうからね。」
「その方は、誰ですの?」
「あぁ、ダンジョン解放連盟の盟主さ。私はダンジョン出現前の彼と面識があってね。彼は、魔力、当時この国では妖力と呼ばれていたのだが、を使うことのできるものが使うことができないものを支配する妖力至上主義だったからね。その結果、その力を増すことができるダンジョンを一般に、いや、この場合は自分の支配下に置いてその主義を実現しようとしているのだろうよ。無駄なあがきだというのにね・・・」
「無駄なあがきというのは、どういうことですか?」
「ん?緑川君は家の伝承とか調べなかった口かい?」
「というと?」
「君の家にも、人間では到底かなわない、人間の発展を妨げ続け、時には人々の英知により討伐された大妖怪に関する書物があるはず、という話さ」
「大妖怪、というのは?」
「あ、そうか、これも説明しなきゃね。大妖怪っていうのは、九尾の狐だとか、天狗の頭領だとか、鬼の王だとか、大蛇だとかいう強大な力を持つ妖怪、会議後には闇に生きるモノと呼ばれることになった存在の中の強者、親なく生まれ、その時から格が10を超える化け物さ」
「格10というと、元黒と同じくらいですの!?」
「あはは、むしろ2年ほど前には、人間があの化け物と同じ力を、いや、超える力を手に入れることが!?と私たちの間では話題になったのだが、知らない者達からすれば、そうなるのか。まぁ、答えはYESでありNOだ」
学長の言葉が理解できず、緑川が訪ねる。
「それはどういうことですか?」
「身体能力が覚醒者と比べても化け物なのさ。ほぼすべてがS+と言っても過言じゃないレベルで強い。」
「・・・そんな化け物がいたのにもかかわらず、よく人間は滅びませんでしたのね・・・」
「妖怪は人間の感情から生まれ、人間の力を糧に生きている。だが、この糧に、というのは必ずしも殺さなくてはいけないわけではない。感情が動けば体内のエネルギー、魔力が体から少量飛び出し、それを食らうのだから、むしろある程度知能のある妖怪は人間を殺すことを躊躇うのさ。自身を滅ぼしに来た、とかいう場合を除いてね。」
「なるほど、そういうことでしたのね。ところで、なぜこの話をしようと思ったのです?秘匿されていることのように思われるのですが・・・」
「あぁ、それはね、藍田君以外の3人はそのうち知る内容だったからかな?そして光闇流の技にも使っている以上、本当に光闇流を学びたいという藍田君の思いを無碍にするわけにもいかないからね。これを伝えずに駄目だ、というわけにはいかないだろう?」
「俺がそのうち知る内容だった、と?美咲は従者が魔力とやらを使うから親から教わる可能性があるかもしれんが、俺は親族から縁を切られている故、知るすべなどないはずだが・・・」
「あー、うん、えーっとね。心して聞いてほしいんだけどね?」
「はい?」
「君がだーいすきなしんさん、彼もこっち側の存在だからね?好意を寄せ、恋愛関係になろうというなら、自然と知ることになっただろうよ。その時の心構えとしてね?」
「そ、そうだったのか、うむ。と、ところで、その、わたs、俺がしんさんのことを好いている、という話はどこまで・・・」
「あぁー・・・ご愁傷様?」
「ちょ、どういう!」
「しんさんね、大妖怪と人間のハーフだから、いろんな所の目があるから、その、ね?しんさんに思いを寄せ、しんさんがまんざらでもない表情をしていた、という情報が漏れた時点でいろんなところに知れ渡ってるよ。」
「そ、そんな・・・」
「君が草薙の血を引いてなければ攫われていたレベルで、しんさんの立場は複雑なのさ。」
「草薙の血?」
「あぁ、君の母方の血筋がね、妖を切る退魔の一族でね。その関係上、うかつに手を出せないのさ。君の親族が、一度縁を切った手前干渉するのは筋が通らん、しかしほかに利益を上げられるのは癪だからほかの勢力が何かしたら血縁を理由に自分たちのモノだとしてしまおう、と考えているからね・・・」
「えっ・・・」
それを聞き気が気でない緑川を落ち着かせるため、学長は宣言する。
「ま、そもそもこの区にいる間は手を出させないけどね。」
「そんなことが可能なのですか?・・・その、学長殿はどのような立ち位置で・・・?」
紫崎の、当然というべき質問を聞き、学長は少し迷いながらも、答える。
「あぁ、僕はね、とある退魔の一族の長兼日本で2番目に強い呪術師兼古い時代の力を持つ存在と覚醒者の関係を取り持つ係・・・まぁ、簡単に言えば中間管理職?」
「中間管理職とは思えないのですが・・・」
「いや、退魔の一族の長と言っても中規模の一族だからね。草薙の血筋の10分の1くらいかな?で、呪術師以外にも魔力関係の能力を持つ者がいるから、スキル関係なしの強さでも日本で10番には入らないし。関係を取り持つのなんか板挟みになってるだけだからね。中間管理職っていうのが一番しっくりくるのさ。覚醒者としての力と神器を用いれば、日本人で・・・13番目くらいかな?」
「13番目・・・妙に現実的な数字ですね・・・その、日本で1番強いと思うのはどなたですか?」
「人間であれば、黄泉さんかな?」
「断定ですか・・・」
「だってあの人、レベル700超えてるんだぜ?化け物だよ、あれは。」
「700・・・では、2番目は?」
「うーん・・・四変王の5人と粕窪さんの誰かだろうけど、そこらへんは私では測れないレベルだからねぇ・・・」
「なるほど・・・」




