第5話
駆逐の手によってロキと黄泉以外の人々を転送するのを尻目に、ロキは怒りを抑えようともせず、黄泉に怒鳴る。
「貴様!よくも私の館を!全てを焼く炎の剣!」
「館?あぁ、この壊れた建物のこと?来なさい」
ロキは黄泉に向かって切りかかるが、どこからともなく呼び出された大鎌で防がれる。
「っち、防ぐか。それにしても、私が苦労して呪術を用い内部空間を広げていたというのに、台無しではないか!許さんぞ!」
そうロキは怒りをあらわにしながら剣を大きく振るい、炎弾を飛ばすが、黄泉の大鎌に飲まれ消える。
そのロキの言葉に思うところがあったのか、黄泉は不愉快そうな顔で宣言する。
「・・・許しを乞うつもりはない。懺悔するのは貴様の方だ。」
その発言をされる心当たりがなかったのか怪訝な顔をする
「なんだと・・・?私に原初の覚醒者との因縁など・・・」
それを聞き怒りが限界に達したのか黄泉は怒鳴る。
「とぼけるな!私はあの時以降、1度たりとも忘れたことはない!」
しかしロキはまだ気づかないようで、悩まし気な表情をしながら訪ねる
「あの時、だと・・・?」
「・・・そうか、そうか、では、思い出させてやろう。私は、ランスの生き残りだ!」
「ランス・・・あの、我らの罠にかかって呪い、見せしめとした?そうか、生き残りがいたのか。」
「あの時私は逃がされ、一人残った。そして、貴様等を殺し、呪いを解くためにダンジョンに潜り続け、世界で初めての覚醒者となった!そして今貴様を殺す!」
「っち、これは、誤魔化しようがなさそうだな。そうさ。私たちが、私たちこそがこの国のダンジョン管理社会に異を唱え、本来の正しき姿に」
ロキは戦闘を避けることはできないと判断し、ダンジョン解放連盟の表向きの目的を言おうとする。
「御託は良い。本当の目的も知っている。」
「はぁ?何を・・・」
「貴様は、ダンジョンを用い魔力の底上げをし、魔術使用者による国を作ろうとする魔力至上主義者なのだろう?見苦しい。」
ロキの言い訳を遮るように黄泉が学長から聞いたロキの本来の目的を突きつける。
「・・・そのことを知っているのは、数えるほどしかいないはずだが誰から聞いた?」
「貴様の元上司さ。アホらしいたくらみと笑いながら言っていたぞ?」
その言葉にロキは怒りに顔を染め、剣から赤いレーザーを出すが、黄泉の大鎌に飲まれる。
「っち。・・・にしても、私の至高の計画をアホらしい・・・?舐めるなよ!」
そう言い切りかかるが、剣自体が飲まれ、距離をとる。
「あぁ、そういうと思ったさ。あいつからの伝言だ。」
「あぁ?聞いてやるよ。」
ロキが苛立ちながらも、攻撃をやめたので、黄泉は話し始める。
「『我を裏切り愚かな行為に手を染めし灰原よ、貴様は人ならざるモノの力を侮っている。ゆえに、貴様の計画は失敗するであろう』だってさ?まぁ、そんな人ならざるモノが出てくる前に私が仕留めるけど」
それを聞きようやく誰が自身のことをばらしたのか理解したロキは、悪態をつく。
「・・・**か!む?なんだ?名前が・・・これは、あいつめ、名を消したのか?」
「あぁ、事故で消えたらしいよ?本人は、情報規制の必要がなくなったと笑っていたがね。」
「っち。あいつめ、秘められし事柄を他人に軽々しく伝えおって・・・」
そう言いながらも再び剣を生じさせ、今度は喰われぬように大きさを上げ、炎に黄泉が飲まれるような軌道で振り下ろす。
「この大きさはさすがに喰いきれんか。」
そう言い黄泉は飛びのこうとする。
「なっ!?」
その足にはいつの間にか黒く細い糸が絡んでいて、行動を遅らせ、炎による攻撃は直撃した。練り上げられた魔力による炎は黄泉の内部から焼き、一瞬にして満身創痍となる。
「がはっ。はぁ、はぁ・・・貴様の魔術は、傀儡ではなかったのか・・・?」
その黄泉の問いに対し、ロキは不機嫌そうな表情をしながら答える。
「っち、魔力を練った攻撃だというのに、まだ生きていたか。それにしても、そんなことまで話していたとはな。あぁそうさ。私は傀儡術の使い手だ。」
「では、なぜ・・・!」
「そもそも傀儡術は人形術からの派生でであり、人形術は操糸術からの派生だ。傀儡術の使い手である私が糸を操ることなんて、容易いに決まっているだろう?それともなんだ?その程度の話すら知らんのか?冥土の土産に教えてやろう。」
「何を・・・」
「この世界にスキルなどというものが生まれる前からある魔術、それらはすべて1000年前に存在していた魔窟、それを攻略するために生み出された技術なのだ!」
「は・・・?」
「そう、これを聞いたことがあるだろう?このダンジョンとスキル、これはこの星において、初めての出来事ではない!知的生命体が生まれた後、約1000年に1度発生し、また約1000年後には消える、それがダンジョン、過去でいう魔窟だ!その当時の名残が魔術であり、妖怪だ!この世界に1度満ちた魔力は消えることなく、されど薄まり人に宿り、魔窟の存在は人々の記憶から消えていた!そう、人々の記憶からは消えていたのだよ!」
体の内部が焼かれ、意識が朦朧としつつも、逆転の機会を狙っていた黄泉の顔には怪訝な表情が浮かぶ。
黄泉がわけがわからない、そう訴えかける表情をしているのを見て、ロキは上機嫌に話を再開する。
「さて、ではなぜ私が忘れていないのか、疑問であろう?その答えは、私には妖怪の血が流れているからなのさ!古の時代に大妖怪と交わった我が灰原家は、本来人から消える記憶を保ち口伝した。さらに、人より多くの魔力を持つ我らは力を持つ名家の1つとして数えられるようになったのさ。だが、それもお人好しであった私の両親が術すら使えぬ凡才共に財産目当てで襲撃され、死ぬまでの話であった。私は一人生き残り、親戚の家をめぐり、術を使えぬ者どもに迫害された。そして、術すら使えぬ凡才共を術を使える優れた者たちが管理すればいい、その考えへと至ったのだ!何もできない愚者は、優れた我らが管理してやるべきなのだ!」
それを聞いた黄泉は、顔を伏せ、ロキに表情を読み取らせないようにする。
「はは!貴様も理解したか?そうさ。私は正しいのだ!そして、凡才の、何もできない者であるはずの雑魚共が力を得ている今の世は間違っている!想定外ではあったが、今、貴様の死でもって間違った世界の終わりを告げてくれよう!」
そう言い、剣を黄泉にぶつけようとするその刹那
【限界突破】
という声が響くとともに黄泉から漆黒の魔力が噴き出し、ロキは吹き飛ばされる。
「むっ!?なんだ、これは!」
「では、なんだ?私たちは、術を使えないのにもかかわらず力を持っていたが故、見せしめにされた、と?」
「っち。復活したか。そうさ!調子に乗るから」
あのようなことになったのだ、そう言おうとしたロキの顔面に黄泉の拳がめり込む。
「がっ!?どうなっている!確実に、縛っているはずだ!」
「あぁ・・・縛っていた、な。圧倒的な魔力さえあれば術なんて蹴散らせる、そう学長は言っていた。それは事実であったようだ。5分で仕留めてやる。」
勢いよく噴き出した魔力を複数の鎌の形にし、飛ばしてくるがそれを切り払いながらロキは気付く。
「あぁ・・・?そうか、スキルか。しかも、時間制限があるのであろう?」
それを聞かなかったことにして黄泉は攻撃を続けるが、魔法は分解されてどこかに吸われ、自身の物理攻撃が当たる前に避けられ続けた。
そしてついに魔力が尽き、倒れる
その寸前、何もないはずの空間から一人の女性が現れる。
「ドクターストップだ、黄泉ちゃん。ここからは私の」
そう言ったのと同時に、4人の男女が現れる。
「「「「「いや、私たちが代わろう」」」」」




