第3話
ただ平らな床と空気だけがある空間に、2人の男性が現れた。
「・・・貴様は空間魔法を使う非戦闘員ではなかったのか?」
「うん?どうしてそうおもったんだい?」
「いやなに、我ら幹部だけで6か所、他のものも含めれば13か所の空間を維持しているのだ。それ相応のMPを消費しているはず。にもかかわらず、幹部たる私と1対1で戦うという選択をとったことが不思議でな。」
「あぁ、そういうことね。簡単な話さ。あの程度の消耗ごときで君との戦闘に支障をきたさない、ただそれだけの事。」
「ほう。そこまで自信があるのであれば、受けてみるがいい、我が槍を!神器・分裂する槍!」
スレイプニルが右手を斜め右下に振ると、その手に煌めく槍が現れる。
「おや?神器持ちか・・・なるほど、では、俺も相応の対応をしなければならないな。神器・絶対なる剣」
駆逐が呼ぶと、腰に煌びやかな装飾がされた鞘に収まっている剣が現れる。
「・・・エクスカリバー、実在したのか。」
「うん?あぁ、そっか。所持者に勝利をもたらすとされているエクスカリバーはすべてのものが探し求めている秘宝の一つである、その話を信じているのかい?」
「そうだ。もし、その話が本当であれば私に勝ち目がないことになるからな。」
「安心したまえ。鑑定によれば、残念ながら、この剣はただ光るだけの堅い剣さ。まぁ、俺はこの剣を使って負けたことはないがね。」
「なるほど。では、私が初の敗北を刻み、噂は噂であると証明してやろう。」
スレイブニルはそういうと槍を構えながら駆逐に向かって駆ける。
「ふっ!」
スレイブニルは勢いよく駆逐を突き刺そうとするが、駆逐が鞘から剣を抜く動作で左上にはじかれる。
「ぬん!」
その勢いを生かし、弧を描くような軌道で左下から駆逐を切り捨てようとするも、駆逐が剣を振り下ろすだけで防がれ、槍は地と剣に挟まれ、封じられる。
そのままでは危険だと判断したのか、スレイブニルは距離を取るべく槍を手放し、後ろに飛ぶ。
「こい、神器・分裂する槍!」
スレイブニルが槍を呼ぶと地と駆逐の剣に挟まれていた槍は消失し、再びスレイブニルの手に収まる。
「どうしたんだい?敗北を刻むんじゃなかったっけ?」
「・・・これはあまり使いたくなかったが、仕方あるまい。穿て、神器・分裂する槍!」
そういうとスレイブニルは槍を駆逐に向けて投げる。槍は空中で分裂し、すべてが駆逐に向かって降り注ぐ。
「な!?」
駆逐は何本かの槍を剣で弾くも、防ぎきれず串刺しになり、息絶えた。
「・・・伝承に基づく〈必殺〉を用いるのは少々卑怯だが、負けるわけにはいかんのだ。ロキ様への恩を返すまではな。」
駆逐を滅ぼしたスレイブニルであったが、現在、空間内を彷徨っていた。
「むぅ、これは、どういうことだ?術者が死んだのにもかかわらず、この空間は維持されているし、出ることすらかなわない。」
スレイブニルはあたりを見渡し、真っ白な空間しかないことを確認し、ため息をつく。
「まったく、早くここを出てロキ様の手伝いをしなければならないというのに・・・それにしても、どういう原理だ?空間が維持されていることは自身が敗北した際のほかの戦闘のことを考えてかもしれんが、自身が敗北する可能性を考慮したのであれば、内側からどうにかして出る方法があるはずだが・・・それに、出る方法が一切ないのであれば、敵のみを放り込んで終わりのはず・・・」
スレイブニルは考えを口に出し、結論が出たのか、槍を構える。
「まぁいい、これがスキルによる産物というのであれば、槍で貫くことができるだろう。はぁぁぁあ!」
スレイブニルは勢いよく床に槍を叩きつけるが、微塵も傷つかない。
「か、硬いな。どうなっているのだこれは・・・ふむ、もしかすると時間経過で解除されるのやもしれん。待ってみるとするか。」
スレイブニルはそういうと床に座り込み、今回の襲撃に関して考え始める。
「しかし、此度の襲撃は何故起こったのだろうか?我らを拾ってくださった際にロキ様は『あまり人に受け入れられるようなことをするわけではないが、これは人々のためだ』とおっしゃっていたが、襲撃されるほど受け入れられないということなのか?」
そこに不意に人影が現れ、スレイブニルに話しかける。
「おや、君は知らないとでも言うのかい?彼らがやっていることは残虐非道な悪事であり法にも道徳にも反することなんだよ」
「な、何やつ・・・!?貴様、なぜ生きている!確実に殺したはずだ!」
そう、つい先ほどスレイブニルが殺したはずの駆逐が話しかけてきたのだ。
「あぁ、痛かったよ。まぁ、私は並列存在持ちだから1度や2度殺されたって死なないけどね」
「そういうことか。だが、ロキ様が行っているのが犯罪行為だと?そんなはずはない!あのお方は親を亡くした我やパズズを引き取り、育ててくださっている優しきお方だ!」
「あー・・・君から見ればそう見えるかもだけどさ。うーん、これ、言って大丈夫かな?あのね、君たちの親を殺したのはほかでもないロキとその一味なんだよね」
「な!?そんなはずはない!我らの親が死んだのはダンジョン災害のせいだ!」
「そのダンジョン災害、普通にダンジョンが運営されていれば起こることはなかったんだ。」
「そんな馬鹿な!ではなぜ!」
「ロキとその一味がダンジョンの外で冒険者の突入を妨害した結果、2016年1月14日にダンジョン氾濫が発生、死者が多数出る大事件となった。当時管理していた者たちは皆マーラの魅了で操られ、自意識を失っていたそうだ。そして、その件について動いた付近の県のトップクラン、ランスを壊滅させた。これが、この国で唯一発生したダンジョン氾濫であり、再発させないために俺らはダンジョン解放連盟を襲撃したのさ」
「では、我らは、仇と言うべき存在に仕え、命すらかけていたというのか!」
「その通り。さて、どうする?うちのクランに来るんであれば、歓迎するよ?」
スレイブニルはショックだったのか、俯き、何かぶつぶつと小さな声で呟きだす。
「うん?どうしたんだい?」
「・・・な、わけない。」
「んーと?」
「そんな、わけないだろう!あのお方は、我らの恩人であり、我が仕えるべきお方だ!死ぬがいい!我を惑わす悪しきものよ!穿て、神器・分裂する槍!」
スレイブニルは受け入れることができなかったのか、槍を呼び出し、駆逐に向けて放つ。
「はぁ、そうかい。それが君の選択か。落とせ、神器・無限の剣」
そう言い駆逐が呼び出した黒き剣が伸び、空中で分裂した無数の槍をすべて地に落とす。
「ど、どういうことだ!貴様の神器はエクスカリバーのはず!」
「うん?別に、1人で複数の神器を持てないって決まっているわけでもないし、何らおかしくなくないかな?僕は複数の剣型神器を持っているというだけの話さ。」
「ばかな!神器を手に入れることも、神器に選ばれるということもそうそうないのにもかかわらず、複数の神器など、ありえん!」
「うん?現にここに存在してるんだからさ。現実は受け入れないとだめだと思うよ?さて、切り裂け、神器・鬼を切る刀、抜刀術Lv10、複飛翔斬」
駆逐は腰に出現した日本刀を抜刀、複数の斬撃が飛び、スレイブニルを切り裂く。
「ぐはっ!」
「さて、最後の勧告だ。うちのクランに来る気は?」
「あるわけ、ないだろう!」
「・・・残念だよ。これで終わらせてあげるよ。神器・全てを薙ぎ払う剣」
駆逐が呼び出した剣を振るうと、その直線上には何もなくなっていた。
「さて、黄泉さんのお手伝いでもしに行きますかね。並列で見てるとはいえ、この状況はちょっと不味いな・・・あれ?そういえば、並列存在を鮮色区に残しておけばわざわざ粕窪さん呼ぶ必要なかったんじゃ・・・それに一時的にこーあん1人体制になることも・・・ま、まぁ、あれだ、本気で戦闘をするためのリソース確保だよ。うん。」




