第5話
最後の授業が終わった15時過ぎ、3人はダンジョンに向かうことにした。
「さて、行こうぜ」
「そうですわね」
「いこーいこー」
「ところで、お二人は部活に入っていたりはしませんの?」
「あー・・・俺は元は剣道部に入っていたんだが、去年辞めてな」
「私は最初っから帰宅部!」
「そうでしたの・・・」
「ま、ダンジョンができて、ステータスなんてものが出るようになってからはスポーツなんてのは15歳未満しかまともな試合ができなくって衰退してるからな。」
「そういえば中2が始まる前に呪われて体動かせなくなったって言ってたけど、美咲ちゃんって、中1のころはどこにいたの?うちの中学じゃなかったよね?」
「私は、元は県外の幼稚園から短大まであるところに通っていましたわ。」
「いわゆるお嬢様学校ってやつ?」
「まぁ、そうなるのでしょうか」
「マジモノのお嬢様じゃんか」
「逆に偽物のお嬢様を私は知りませんわ」
「・・・それもそうだな」
ダンジョンの目の前まで移動した3人だったが、藍田がとあることに気が付いた。
「そういえば、私が美咲ちゃんの家にいる理由って、元黒さんが守れるから、だけど、元黒さんなしでダンジョンに挑んでも大丈夫なのかな?」
「そういや、そんなこと言ってたな」
紫崎は少し不思議そうな顔をして、パンパン、と手をたたく。
「元黒」
「はい、ここに」
どこからともなく元黒が現れる。
「うわ!」
「うお!?全く気付かなかったぜ」
「主の傍にいるのが執事ですので」
「うーん、なんか違う気が・・・」
「あら、執事というものはこういうものではありませんの?」
「できるわけないでしょ!感覚が麻痺してるんだよ!ダンジョンができる前を思い出して!」
「・・・できましたわよ?多分。こう、手をパンパン、とやれば来ましたし・・・」
「えぇ、この技術はメイド長に教わったものでして、スキルは使っておりませんよ。執事の基本とのことでしたが・・・」
「え、えぇ?私が間違ってるのかな?」
「いや、そんなわけがないぞ。うちにも去年までは執事がいたが、こんな超人ではなかった。ただ単に紫崎家が特殊なだけだろう」
「だ、だよね!」
「そうでしたの・・・驚きですわ」
「私もです。こういうものだとばかり・・・」
「ま、まぁ、特殊にしても、それで困ることはないしいいんじゃないかな?どういう原理なのかは気になるけど」
「そうですね・・・こう、気配を薄くして空間に溶け込んで意識を向けさせない、という感じでしょうか?“影が薄い”ことの発展形みたいなものです」
「うーん。よくわからないけど、目立たないってことかな?マネできそうにはないや・・・」
「千春、考えるだけ無駄だ。このような謎技術からは目をそらすことが大事だぞ。」
「そ、そうなの?」
「あぁ。スキル由来ではない謎の技術と言い張る特殊能力を持つ者たちは一定数いるからな。」
「そ、そうなんだ。知らなかったよ」
「まぁ、とりあえずダンジョンに行きましょう?」
「そうだな」「そうだね!」「そうですね」
4人はダンジョンに入る。
が、ホーンラビットに遭遇すると
「何このかわいい生物!え?これ攻撃するの?」
「こ、これは・・・妹に肉を・・・いやしかし・・・」
「きゅぅ~ん?」ウルウル
「「うっ・・・」」
「まぁ、かわいらしいですから気持ちはわかりますが・・・」
「第2の壁は伊達じゃありませんからね。しかもすべてのF級の1~3層には存在しているため先に進むには戦闘は避けられないという・・・」
「精神体になることを目標に、などと言っていましたし、精神面も鍛えさせようとしているのかしらね?」
「お嬢様、あのよくわからない存在に関しては考えるだけ無駄、という結論が出ていますので、意図を考え始めると結論が出ず悩み続けることになりますよ」
「うわっ!」
「ぬぉ!?」
「あら、いつの間にか囲まれていますわね」
「おそらく、手を出してこないために勝てると判断して集まってきたのでしょう。あの二人が手を出せないようなら私が始末いたしますが・・・」
「・・・きっも!1匹ならかわいいけどこんなにうじゃっといたら気持ち悪いよ!魔力操作:光魔法Lv7 ライトジャベリン+光魔法Lv8 ライトストーム 威力増大=ライト・ジャベリン・ストーム!もう一発!魔力操作:闇魔法Lv7 ダークジャベリン+闇魔法Lv8 ダークストーム 威力増大=ダーク・ジャベリン・ストーム!」
藍田の魔法により生じた巨大な2つの槍が中で渦巻いている嵐がホーンラビットたちを飲み込み、ドロップアイテムに変貌させていく。
「はぁ、はぁ・・・」
「オーバーキル、ですわね」
「いやぁ・・・実は集合体恐怖症でして・・・あのうじゃって感じがちょっと・・・」
「あぁ、なるほど」
「兎さん・・・いっぱい・・・嵐・・・兎さん消える・・・」
「こっちはこっちでショック受けてますわね」
「・・・もう大丈夫だ。あれはモンスターで、狩るべき相手。うん。もう戦える」
「そうですの?では、行きましょうか」
「あぁ。」「はーい」「かしこまりました」
「きゅきゅ!」
「兎、敵、狩る・・・草薙流剣術 五 梅花!」
ホーンラビットが草むらから顔を出した瞬間、緑川が何か言ったかと思うと、5つに切り裂かれ、ドロップアイテムと魔石に変化した。
「わっ!はや・・・」
「・・・武術系スキル特有の光が出ていないのですが、もしかして自前ですの?」
「ん?あぁ、自前だ。割と長く続く武術だぞ。」
「・・・紫崎家執事の謎技術のことを言えないレベルの謎技術だと思うよ。」
「そうか?」
「うん」
「そんな自覚はなかったんだがなぁ。教わればだれでもできるし」
「ほんとに?じゃぁ、さっきの技はどういう原理で?」
「突き、上、右斜め上から振り下ろして中心で1度止めて少し角度を変えて左斜め下に抜けて鏡写しのように反対側からも同じことをやるだけだが?」
「うーん・・・それをあの速度で?」
「あぁ。」
「謎技術だね」
「そ、そうなのか・・・」
「常識的に考えて、そんなのが誰にでもできるわけないでしょう!」
「だ、だが、うちの道場に来たものなら誰だってこのくらいできるように・・・」
「えぇ?それ、来る人を制限してたりしてたんじゃないの・・・?」
「いや、誰かの紹介状さえあれば誰でも・・・」
「じゃあ、その紹介状を得る条件がきっと厳しいんだよ・・・」
「そんな馬鹿な・・・」
「・・・私も、謎技術認定してもいいと思いますよ。私に向けて放たれれば危険を察知して避けれるかもしれませんが、見えませんでしたし。」
「ほら!高ステータス者が見えないならやっぱり謎技術だよ!」
「そ、そんなばかな・・・」
「はいはい、おしゃべりはその辺にして、行きますわよ」
「あっ、うん。」「そう、だな」「かしこまりました」
無事ホーンラビットを攻撃できるようになり、順調に攻略を進めた4人は、4層の入り口にまでたどり着いた。
「さて、次は4層ですわね」
「そうだな。」
「確か、ゴブリンの集落だっけ?ゴブリンくらい楽勝でしょ。」
「油断は禁物ですよ。1つの集落でも20~30匹、音を立てすぎると複数の集落を刺激して100を超えることもあり得ますから。対多数攻撃は連発できるようなものではありませんからね。それに、森の中なので不意打ちを食らう可能性もありますから。」
「それは間違いないな。」
「うっ・・・確かに、1匹1匹なら楽だけど、まとめていっぱい出てきたら大変だね・・・」
「まぁ、多数と言ってもせいぜい100匹程度です。200や300と1度に戦うことになるのは、よほど大きな音を立てた場合のみですよ」
「うん、気を付けるよ」
「では、行きますわよ!」
4人は4層を進む。
「何箇所かの集落をつぶしたが、1か所ならなんということはないな」
「そうだねぇ。ゴブリンよりも、移動のほうが大変だよ・・・木で視界が遮られるし、根に引っかかって転びかけるし・・・」
「焼き払ってしまいたくなりますが、そうすると複数の集落を刺激してしまうのですわよね?」
「そうですね。1度階層自体を焼き払ってみるという試みが行われましたが、変遷まで木は復活せず、しかしゴブリンは復活し続けるので常にゴブリンが襲い掛かってくる悪夢のような状態になったそうです。」
「ずーっと戦闘しながら次の階層に行くのは大変そうだね・・・」
「実際その月が終わるまでの期間は閉鎖されていたそうですよ」
「では、火魔法は使わない方がいいのかしら?」
「いえ、木が少しでも残っていれば1晩で修復されるそうなので、気にする必要はないかと」
結局複数の集落と戦うこともなく5層の入り口にまでたどり着いた。
「確か次の階層からは集落に職業持ちが混ざるし、ホーンラビットも出るんだっけ?」
「そうですね。どちらかと戦っているときに不意打ちで乱入してくることがあるので注意が必要です。特にゴブリンと戦闘しているときは足元がおろそかになりがちですから、気付かないうちにすぐ近くにまで来ていて、グサリ、なんていうことも・・・」
「ひぇ・・・」
「まぁ今回は私がいますのでそのようなことはありませんが、今後一人で来るときやほかの人と来る時は気を付けてくださいね?」
「はい!」
「ホーンラビットの肉を狩りに一人で来ようかと思っていたが、1~3層だけにしておいた方がよさげだな」
「そろそろ行きますわよ~?」
「・・・まぁ、お嬢様は飛んでいるのでホーンラビットを気にする必要はありませんが・・・」
「あはは、それもそうだね」




