第1話
「はぁ、はぁ、撒いた?」
私は周囲を確認し、誰にも見られていないかを確認する。
私を追いかけてくるよくわからない、でもどこかで見たことのある覆面の男たちから逃げているのだ。
原因は不明。
私は一般家庭に生まれた一般人で、こんなおかしなことに巻き込まれる心当たりなんかない。
こんな一日になるだなんて、思ってもいなかった。
今日は私の誕生日で、朝起きて、家族に祝ってもらって、朝食をとって、ルーレットを回して、運よく8つもスキルをゲット出来て・・・
親が仕事に出かけるのを見送り、星数ルーレットを回し終えた後、いきなりあいつらは家の窓を割って入ってきた。
何かスキルにあいつらが目をつけるようなものがある?その場合、どうやって私のステータスが分かったのだろうか?そもそも、あいつらは何者なんだ・・・?
「あ、思い出した。TVで見たことがあるんだ。」
TVで注意喚起されていた、ダンジョン解放連盟と名乗る犯罪者集団の特徴が、あの覆面だ。確か、人を攫ったり、ダンジョンを不法占拠したり、ダンジョン内外での殺人、ダンジョン内のモンスターをほかの人に擦り付けるトレイン行為などの様々な犯罪を犯していたはず。
なぜ私がそんな犯罪者集団に追われる羽目に?心当たりは本当にない。別に何かを見てしまったわけでも、血縁者が警察やダンジョン関係の仕事をしているわけでもない。それと、今までにないほど早く動けたし・・・ステータスを見れば何かわかるかな?
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Name)Aida Chiharu
Sex)♀
number)784736890387
Lv)1
Rank)1
Party)empty
Pro)なし
HP)11
MP)11
SP)11
Atk)F
Vit)H
Tec)G
M・Atk)E+
M・Vit)E
M・Tec)E+
Agi)I
Stm)G
ECL)8
Luck)15
Skill)☆5無魔法Lv10(M・Atk,M・Tec)
☆5光魔法Lv10(M・Atk,M・Tec)
☆5闇魔法Lv10(M・Atk,M・Tec)
☆4魔力操作Lv8(M・Atk,M・Tec)
☆4身体強化Lv8(Atk,Stm)
☆3魔力視Lv6(M・Atk,M・Tec)
☆3魔力プールLv6(M・Vit,M・Tec)
☆2剣術Lv4(Atk,Tec)
【ランキング】
【マップ】
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動けるのは身体強化のおかげかな?うーん。追われる理由は全くわからない。せいぜい可能性があるとしたら、闇魔法くらいか?でも、そんな話聞いたことがないし・・・ダンジョン学の授業でなにか言ってたかな・・・?本格的に習うのは高校からだけど・・・
そういえば、春休み前にクラスのアホな男子達が騒いでいたけれど、魔法の属性には相性とかがあるとか言っていたし、光のほうを嫌った?でも攫われるようなことがあればニュースになるだろうし・・・
思い出せ、私。何かこの状況を打破する手がかりを・・・
『光と闇と無がレベル10になって熟練度最大になると虚無魔法っていう魔法が使えるらしいぜ!』
『何それかっけぇ!そんなんもってたら最強じゃん!』
『無敵というわけではないが、霧・毒・雷・鉄・樹・氷から4つの属性をレベル10にして熟練度を最大にして得ることのできる混沌魔法というものの効果を消せるのは虚無魔法だけ、だそうだ。』
『混沌?なんか、かっこいいな!』
『確かにかっこいいけど、混沌ってなんか、悪い奴らが使うイメージあるよな』
『事実、最近話題のダンジョン解放連盟って名乗ってる犯罪者たち、【這い寄る混沌】を信仰しているらしいしな。イメージどころか、本当に悪人が使っている可能性があるぞ』
・・・こ・れ・だ!
確実にこれでしょ!自らの目的の邪魔をする可能性があるやつを消しに来たとかそういう感じじゃん!
・・・つまり、捕まったら一巻の終わり?
全力で逃げる必要がある。でも、どこに逃げれば・・・
ドン!という音とともに、後ろの壁が吹き飛ぶ
「キャッ!」
「みぃつけた♡」
「ひっ!」
もう追ってきた!?確実に地元の人間しか知らないようなところを通ってきたのに!
「フフフ・・・みえる・・・見えるわ。主の邪魔となりうる虚無に至る、光と闇と無の魔力・・・」
魔力視でばれた?でも、魔力を制御なんてできない・・・怖い・・・こわい・・・
「あ、あぅ・・・」
「あら、そんなに怖がらなくっていいのよ、子猫ちゃん。別に、取って食おうってわけじゃないんだから。」
えっ?殺しに来たわけじゃないのか?では、なぜ私を追って・・・
「DEAD or SLAVE、死ぬか、私たちの奴隷として生きるかの2択よ?幹部の一人である私がわざわざ出向いているのだし、それ以外の答えなんて、存在しないわ?」
あぁ・・・どちらにしよ、私の人生は終わったんだ・・・
「あんたたちみたいな犯罪者の奴隷になるくらいなら、死んだほうがましよ!」
「犯罪者・・・そう、よーく、わかったわ。」
「じゃぁ、死になさい。死魔法Lv3,デスアロー!」
漆黒の闇でできた矢が私に向かって飛んできて、藍田は直感的に死ぬ、と、そう思った。
「聖魔法Lv10!サンクチュアリ!」
上から暖かい光が降りてきて、闇を消し去った。
「何ですって!?聖魔法!?」
「ふーはっはっはっは!大天使・ちくわ、降☆臨!私がいる限り、決して死や魔の魔法の犠牲者は出させないわ!」
「くっ!覚醒者か!」
「その通り!私こそが偉大なる大天使ちくわなり!」
「一端引くしかないか」
「ん~?逃がすとでもぉ?」
そう言い、紫色の髪のちくわさんが迫っていくと、覆面を被った幹部とやらは懐から珠を取り出し、地面に叩きつけた。
パリン!という音とともに珠は砕け散り、闇があふれ、幹部とやらはその中に消えていった。
「むむ、相性的に私が通ろうとしたら消えちゃいそうだし・・・」
「じゃ、私の出番ね」
唐突に降ってきた紫髪の少女がそうちくわさんに告げると、闇に向かって走り出す。
「あ!また勝手な行動を!後で叱られても知らないし!」
「そこはとりなしておいて」
そう少女は言い残し、闇に飛び込んだ。
「えっと、大丈夫かし?なんで追われていたのかは知らないけど、私が来たからには、もう安心だし!」
そうちくわは藍田に明るく話しかける。
そして、緊張が解けたのか藍田は、ちくわの豊満な胸の中で糸が切れるように気を失った。
「おい!いたぞ!あいつだ!」
解放連盟の構成員たちが追いかけてきたが、
「げっ!大天使!逃げるぞ!」
ちくわがなにかする前に脱兎のごとく逃げ去った。
「まったく、やれやれだし。私を見て逃げるくらいなら、最初からあんな組織に所属するべきじゃないし。あ、黄泉ちゃんのことヴィドさんに言っとかないとだし!」
そう言いちくわは藍田を抱いたまま純白の翼で飛び立ち、クランデストロイヤーのクランハウスに向かった。
Side:ダンジョン解放連盟鮮色支部
広い部屋に黒い円卓が置かれていて、大男と平均的な身長をした男、やせている身長の低い男の3人の覆面を被った男たちが座っている。
そこに、唐突に闇があふれ、同じ覆面を被った女が焦りをにじませた表情で落ちてくる。
「はぁ、はぁ、まったく、私の天敵ともいえる覚醒者に出会うなんぞ、聞いていないぞ!」
「おいおい、転移宝珠を使うとは、穏やかじゃねぇなぁ。」
「何があったのだ?」
「ふん!最弱幹部め!貴様と同じ空間にいると反吐が出る!私は帰らせてもらうぞ!」
そう言い捨て、1人の男が去る
「っく!弱い犬ほどよく吠えるとはよく言ったものだ!あいつだって同じ状況であれば逃げるしかあるまいに!大天使が、いたのだから。」
「「!?」」
「おい、それは、大丈夫なのか?この解放連盟鮮色支部が特定される心配は?」
「あぁ、闇の転移宝珠できたからな。強い光の魔力を持つ大天使が近づいただけで消え去るさ」
「そうか、ならいいのだが・・・」
「それにしても、大天使がこの付近にいるのか・・・拙いな・・・」
「あぁ、我らの天敵ともいえる存在だ。我らの中に覚醒者は闇が2人、氷が2人、炎が1人だ。相性が悪い」
「そうだな。各自の構成員たちも呼び寄せ、ここから手を引くのが望ましいだろう。ところで、主目的は達成できたのか?」
「っち、できていない。殺す寸前に大天使に邪魔されたんだ。」
「そうか、まぁ、大天使が相手では分が悪いからな・・・仕方あるまい」
「はん!俺が叩きのめして来てやんよ!」
「無謀だ。やめておけ。それに、大幹部様から撤退令が出た。命令違反は許さんぞ」
「っち!また勝手に報告しやがったな、チクリ魔が。だが、大幹部様からの指示であれば仕方があるまい。俺も部下を呼び寄せるとしよう。集合場所はどこだ?」
「ここだ。ここに本部から直通の通路を開いてくださるらしい」
ヒューイ、と大男が口笛を吹く。
「いつにもまして、大盤振る舞いじゃねぇか。何かあったのか?」
「あぁ、どうやらデストロイヤーに10名以上の覚醒者が集まっているらしい。今回の件がなくとも撤退の予定だったそうだ。」
「なら、あまり気に病まなくても大丈夫そうだな」
「あぁ、むしろ今回の件でここに大天使がいるという事実を知れたことが収穫だ、とまでおっしゃってくださった」
「じゃ、部下どもに声かけてくるぜ。」
「私も部下に声をかけねばならぬので失礼する。あの無礼な男への連絡はどうする?」
「私からしておくさ。私はここに来るよう部下に念話済みだからな」
「そうか」
そう言い、大男と女は部屋を立ち去って行き、それを確認した男は部屋の角に顔を向ける。
「そこの羽虫、いい加減に出てきたらどうだ?ほかのやつらは気付かなかったが、私は気付いたぞ。美佐が戻ってきたときに一緒にここに入り込んだことがな。だが、予想外の人数の覚醒者相手に、臆したのだろう?ひそひそと隠れるしかできない弱者だものなぁ?」
闇の中から、黄泉が出てくる。それと同時に、男は目を見開く
「私が羽虫で弱者、か。ではあなたはそれほどまでに強いのでしょうね?」
「な!原初の覚醒者!?」
「あぁ、ニーズホッグさ。本部に切り込むためにしばらく泳がしてやろうと思っていたのだけれど・・・恨むなら、なるべく小さくしていた私の気配に気付いてしまった自分を恨みなさい?」
「ま、待ってくれ!交渉をしようじゃないか!解放連盟のことを教えよう!羽虫や弱者と言ったことの謝罪もする!」
「・・・で?時間を稼ぎ念話で仲間を呼ぶつもりか?まぁ、もうこの空間は遮断されているから不可能だがな」
「なっ!ゆ、許してくれ!私だってこんなことをやりたくてやっているわけでは・・・」
「桐山・ヒュミル 霜の巨人、ヨトゥンの力を宿す覚醒者にして、快楽殺人者。解放連盟には2016年5月から所属。判明する前にいた屋敷の地下には、氷漬けにされた、ダンジョン内で行方不明となっていたはずの女性が全裸の死体で多数あった。このようなことをしでかしておいて、やりたくてやっているわけではない、などという台詞が通用するわけがないだろう?神話ではヨルムンガンドという蛇に出会い海に投げ捨てられたヒュミルの力を宿した貴様が、ユグドラシルをかじる大蛇たるニーズホッグの力を宿す私に出会い、戦い、死ぬ。これもまた運命というものだろう?」
「くっ!凍てつけ!永氷魔法Lv7 エターナルアイスジャベリン!」
「砕け、大鎌」
桐山が不意打ち気味にはなった渾身の魔法を黄泉はどこからともなく取り出した大鎌で消し去る。
「は、はは!なんだそれは!魔法として、あり得ない!」
「・・・冥土の土産だ。教えてやろう。これは、深淵、猛毒、死、溶鉄の4つの魔法の極致たる特殊魔法、大天使のサンクチュアリに相当する奥義を魔力操作で束ねたものだ。」
「な・・・格が、違うというのか・・・」
「切り裂け、大鎌」
黄泉が大鎌を振るった後には、桐山がいたという痕跡すらなくなっていた。
「さて、この空間の認識阻害を解除し、幻影を見せ、何もなかったように見せかけ、本部への道を開けてもらわなければ」
そういうと黄泉はまた闇に溶け込み、円卓に桐山が何事もなく座っているように見える。戦いの痕跡は何一つ残っていなかった。




